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学年トップの俺を捨てた元カノが、追試で留年の危機らしい。俺は不登校だった美少女の家庭教師を頼まれて忙しいので、復縁は不可能です。  作者: こうと


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第15話 天国と地獄

 期末テストの結果発表日。

 朝のホームルーム、担任の冴島先生が入ってくると、教室の空気がピリッと張り詰めた。


「おはよう。テストの個票は後で配るが、今回は学年全員の順位表を廊下に貼り出しておいた」


 先生の言葉に、教室中から「うげぇ……」「マジかよ全員公開かよ」と悲鳴が上がる。

 だが、先生はどこか楽しげに口角を上げた。


「今回の結果は……面白いぞ。努力した者は報われ、慢心した者は地に堕ちた。まさに『天国と地獄』がハッキリ分かれたな」


 先生の視線が、一瞬だけ俺たちの席に向けられ、次に愛川リナの席へと流れた。

 リナがビクリと肩を震わせる。


「各自、休み時間に現実を確認してくること。……以上だ」


 意味深な言葉だけを残し、先生は教室を出て行った。

 その瞬間、ドッと生徒たちが廊下へ雪崩れ込んだ。





 ***





 廊下の掲示板前は、既に人だかりができていた。

 壁一面に張り出された長大なリスト。一学年300名分の残酷な格付けだ。


「うわ、柏木は相変わらずバケモンだな。300人中のトップ独走かよ」

「それより見ろよ、この名前。……不登校だった如月さんじゃね?」

「マジだ、上位に入ってるぞ!?」


 ざわめきが波紋のように広がっている。

 俺と如月は、人波の後ろに立った。


「……行くぞ、如月」

「うん、先生」


 俺が歩き出すと、生徒たちが自然と道を開けた。

 掲示板の最上段。そこには、燦然と輝く俺の名前があった。


 1位 柏木 湊 


 ここまではいつも通りだ。

 俺は視線を少し下へと滑らせていく。

 10位……ここにもない。

 15位……まだない。

 そして。


「……あった」


 俺が指差した先に、その名前はあった。


 18位 如月 ことね


 学年300人の中での18位。


 上位6%以内に入る快挙だ。しかも、数ヶ月のブランクを経ての復帰戦であることを考えれば、奇跡的な数字と言っていい。


「18位……」


 如月がその数字を見つめ、少しだけ悔しそうに唇を尖らせた。


「先生の名前、もっと上だね。……遠いなぁ」

「当たり前だ。300人の頂点(俺)を抜くにはまだ100年早い」

「むぅ……でも、同じ『1枚目』の紙には載れた」


ここで喜ばずに悔しがるあたり彼女は本物だろう。そう悟った。


 彼女はスマホを取り出し、掲示板の写真を撮った。

 1位から30位までが載っている1枚目のリスト。そこに俺たちの名前が収まっている写真だ。


「へへ……見て、先生。ちゃんと『証明』できたよ」

「ああ。十分すぎる結果だ。よく頑張ったな」


 俺が素直に褒めると、彼女は嬉しそうに頬を緩ませた。

 その時だった。


「どいてよ……!」


 人混みを乱暴に掻き分けて、リナがやってきた。

 彼女の表情には、焦りと、根拠のないプライドが混在していた。


(大丈夫……勉強はしてないけど、私はバカじゃないもん。いつも100位くらいだったし、下がっても150位くらいでしょ)


 そんな心の声が聞こえてきそうだ。

 確かに、俺と付き合っていた頃まで彼女は100位〜120位前後の中間層をキープしていた。

一年の時は普通に勉強をやっており、それくらいをキープしていた。

しかし二年になって俺と付き合うとサボることを覚え、テスト前の俺の秘伝ノートに頼るようになった。


前の中間テストはそれで順位をキープできていたが……。


 だから彼女は勘違いしたのだろう。「自分はそこそこ出来る」と。

 俺が基礎から叩き込み、テスト範囲を要約して渡していたからこその順位だったことに気づかず、「勉強なんてしなくても平気」と慢心しきっていた。


 リナは、いつもの自分の定位置である『真ん中の掲示板』に食いついた。


 100位……名前はない。

 120位……ない。

 150位……まだ、ない。


「え……?」


 リナの顔から血の気が引いていく。

 彼女は慌てて、さらに右側の掲示板――下位層のリストへと視線を移した。


 200位……ない。

 220位……ない。


「嘘……嘘でしょ、なんで……!」


 彼女の指先が震え、視線が一番端の掲示板の、さらに下の方へ落ちていく。

 そして、その指が止まった。


 268位 愛川 リナ


 300人中の268位。

 下から数えた方が圧倒的に早い、紛れもない「底辺」の順位。

 赤点どころの騒ぎではない。留年予備軍の筆頭だ。


「い、嫌ぁぁぁぁっ!」


 リナが悲鳴を上げた。

 周囲の生徒たちが冷ややかな視線を向ける。


「うわ、愛川260位台だって」「落ちぶれすぎだろ」「今まで100位くらいだったよな?」「全部柏木のおかげだったってことかよ、ダッサ」


 容赦ない陰口が、リナの耳に突き刺さる。

 「そこそこ出来るカースト上位女子」という彼女のブランドは、この瞬間、完全に崩壊した。


「なんでよ……! 私、こんなにバカじゃないもん……!」


 リナが涙目で俺たちを睨みつけた。

 だが、1位と18位の俺たちと、268位の彼女。

 その間に横たわる「格差」は、もはや言葉で埋められるものではなかった。


「簡単な理屈だ」


 俺は静かに告げた。


「お前が『そこそこ』でいられたのは、俺が下駄を履かせていたからだ。それを自分の実力だと勘違いして、あぐらをかいた結果がこれだ」

「っ……」

「如月は、お前が遊んでいる間も、俺の隣で必死にペンを動かしていた。……それだけの話だよ」


 リナは何も言い返せず、唇を噛み締めた。

 悔しさか、後悔か。


 いたたまれなくなったのか、リナは顔を覆ってその場から走り去っていった。


 シン、と静まり返る廊下。

 勝負はついた。数字という残酷なまでの事実によって。


「……行こうか、如月」

「うん、先生!」


 俺たちはその場を後にした。

 俺の隣には今、俺の指導を吸収し、結果で応えてくれる自慢のパートナーがいる。


「先生、ご褒美!」

「ん? 18位でご褒美か?」

「だって頑張ったもん! ……今日は、帰り道もずっと手、繋いでて?」

「……まあ、復帰祝いだ。今回だけだぞ」


 俺がそっと手を握り返すと、如月は「やったぁ!」と無邪気に笑った。

 そして、俺の耳元で小さく囁いた。


「次は、もっと上に行くから。……先生の隣(1位の横)に並べるまで、ちゃんと見ててね?」


 その瞳には、向上心という名の独占欲が燃えていた。

 

 こうして、期末テスト編は俺たちの完全勝利で幕を閉じた。

 だが、物語はまだ終わらない。

 夏休みという、学生にとって最大のイベントが待ち受けているのだから。

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― 新着の感想 ―
先生の言動から推察するにいろいろと思うところがあったんでしょうけど、本当に教師か疑わしい。 新ヤンデレヒロインが怖い。 友達からも離れさせるとはただただ怖い。 スラムダンクの曲にあなただけみつめてる?…
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