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&dead.  作者: 猫蓮
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&79.やしろ

 レズレズの家から四阿がある運動場に移動する。運動場ではコベル、フェイが元気に楽しそうに遊んでいた。


 滑り台、ブランコ、ジャングルジム。シーソーに雲梯、ターザンロープと公園遊具がたくさんある。中には向こうでは見た事のない遊具もある。でもルービックキューブのお陰で名前が分かる。


 高速で回り続ける回旋塔。掴むと遠心力で体が浮いて、手を離すと勢い良く飛んでいく。

 手だけで掴んで上下する空中シーソー。止まらずぐるぐる回転して離して飛んだ飛距離で競っている。

 三回高速で回転して急停止する箱型ブランコ。遠心力に体がついていけずに挟まったり投げ出されたりしている。


 何この危険な回転遊具。遊び方はそれで合ってるのか?

 まあ、楽しければなんでもいいのか。……楽しそう。やってみたい。

 あっ、スプリング遊具……!? 追いかけっこしてるけど、あれって動くっけ?


 レズレズを中心に盛り上がっている女子会を横目に運動場を眺める。シズクちゃんも忙しなく視線を移している。遊んでる光景に興味津々なようだ。


「ねえねえさめじぃ」


 そこへ視界を遮ってポンが話しかけてきた。いきなり顔が目の前に現れたからビビった。声は出さなかったからセーフだ。


「アンがさめじぃに言いたい事があるんだって」


 私に言いたい事? アンが? ……罵詈雑言か?


 アンは私が気に入らないらしい。それはそうだろう。オーク種は純鬼族以外を同族と見ていない。シュドンドゥーシを筆頭にっていうか、シュドンドゥーシの意思イコールオーク種の総意だから仕方がない。シュドンドゥーシは秩序を最重要視している。純鬼族以外の種族、魔族だけでなく成鬼族も小鬼族もヤツにとっては秩序を乱す邪魔な存在でしかない。邪険にしてくるオーク種を良く思わないのは至極真っ当な考えだ。

 逆に、アン以外のコイツらが私に普通に接してる方がフシギなぐらいだ。


「ほら、アン」


「あっ、いや……さめっ、そのっ、うぅ〜……」


 目が合わないし、俯いてしまった。顔を見るのも嫌らしい。というか、さっきまでの威勢の良さはどこへ? ……まさか、同じ空気を吸うのも嫌だったりする?

 そうだとしたら悪いな。ポンとタンが応援してるけど、ムリして関わる必要はない。とりあえずドクロを被って、顔を見えないようにする。


「あっ……」


 反射的に顔を上げて寂しそうな声を上げた。どうした? ドクロが欲しいのか? 悪いけどこのドクロだけは渡せない。シズクちゃんだから、誰であろうと渡したくない。


「もうっ、言葉にしないと伝わらないのよ!」


 アンの様子にポンが耐え切れないと怒りだす。ポンの説教を大人しく受けるアンは確かに今までとどこか様子がおかしい。しょんぼりと落ち込んでる。


「ごめんねさめじぃ。アンはさめじぃに謝りたいの。あの時のこと、悔いてるから」


 あの時とは初めて会った時の事か。問答無用で殺して、感情のままに当たり散らかして鬼力で遠くに飛ばした酷い仕打ち。改めて思えば随分な扱いだ。


「気にしてないよ」


 今の今まで忘れていたほどだ。あの時だってわけも分からずだったけど、アンに対する怒りの感情はなかった。それに、アンのお陰で記憶を思い出せたようなものだ。直接感謝を伝える事はしないけど、謝られたら許すし、何もなくても責めたりはしない。


「ムリに謝らなくていい。悪気がないのは知っているし、なんともなかったから」


「ありがとう。でもこれはアンのケジメでもあるからもう少し付き合って?」


 それなら仕方ない。気の済むまでやるといい。アンの意思って言うなら無下にするつもりはない。説教されているアンを見る。落ち込んでいるのか元気がない。顔も赤いし、熱でもあるのだろうか。それなら今ムリに謝る必要はない。体調が戻って元気になってからでも遅くはないのだから。


「さめじぃ?」


 アンとポンに近づく。ポンが私に気付いて、ジェスチャーの意図を察して場所を開けてくれた。俯いているからかアンは気付いてない。

 アンの前に膝をついて目線を合わせる。


「アン」


 名前を呼んでも反応しない。手を伸ばしてアンの額に触れる。前髪を上げるのと同時に顔を上げさせる。


「アン、大丈夫か?」


 額と額を合わせて目を見る。お父さんがよくやってくれた元気の確認。ん……ちょっと熱い?


「あ、あぅ……はひゅっ」


 大変だ。額が熱い。熱があるじゃないか。

 謝罪は今度でいいからすぐに休ませないと。


「きゅ〜……」


「アン? アン!?」


 顔を離した瞬間、アンが倒れた。そんなにムリしていたのか!? もっと早く気付いてやれれば良かった。


「あーあ、刺激が強かったみたいね」


「カッコイイ〜」


 ポンとタンがやってきてそのままで大丈夫って言うから、とりあえずアンをイスの上に横たわらせた。二人は呆れた顔をしてるけど甲斐甲斐しくアンの看病をしているから、なんだかんだいってやっぱり仲良しなんだな。


「おーい! ……てなんだ、さめじぃもいるのか。それじゃあオレがドベかよ〜」


 遠くから手を振ってものすごいスピードで向かって来る人陰は下が人ではない異形の形をしていた。


「レムレム遅い! どこほっつき歩いていたのよ」


 それはバッタに乗ったレムレムだった。これで飛ばされた全員集合した。アンの心配は一つなくなったかな。当人は目覚めてないけど。


 レズレズに叱られて、頭を搔いて眉尻を下げる。申し訳なさそうな顔……ではなく困惑した表情をしている。


「それが……よく分かんねーとこに飛ばされたんだよ。みんなは?」


「アタシたちはエストファの中だったよ」


「すぐに家に帰れたよ」


 ポンとタンはそう離れていない領地内。だから当然、一番にアンの元に姿を現した。


「アタシはノスターの丸に飛ばされたわ。そこで運命の出会いを果たしたの」


 レズレズはノスターにあるノロイスト種の住処。少しゴタゴタはあったもののフープで帰ってきた。


「ぼくは家だったよ」


 レフレフは自分の家の中に飛んだらしい。だからそのままレズレズが来るまで籠っていた。


「私はサスマー。レムレムは?」


 よく分からない場所ってなんだ。


「それがさ〜、エストファの中だったんだけど、知らない場所で宝がありそうで……そうだ! みんなもちょっと来てくれよ! 謎かけもあったんだけど全然分からなくてさ。こんだけ数がいりゃあ誰かは分かるだろ」


「なにそれおもしろそー」


「なにそれ楽しそー」


 こっちこっちと先導しようとするレムレムの肩をレズレズが掴んで止める。


「待ちなさい」


「イッ、なんだよレズレズ。痛いって離せよ」


「なんで……なんでそんなに普通なのよ!?」


「……はあ?」


 レズレズの悲痛な叫びに、レムレムを含む全員が理解出来ずにポカンとする。


「もっとちゃんと見なさいよ。なんで分からないの。さめじぃちゃんが天地がひっくり返るほどの変貌を遂げているっていうのに、いつも通りに接するとか神経どうなってるの? レムレムのくせにその目は節穴なの?」


 レズレズが私を指し示す。レムレムと目が合って、私は瞬きレムレムは首を傾げた。


「さめじぃはさめじぃだろ?」


 何がおかしいんだと言わんばかりの態度だ。それに逆上したのはやっぱりレズレズだった。いや、なんで?


「全然、全く、違うじゃない! おっさんが美少女になったのよ? これに驚かないで何に関心を寄せるって言うのよ。アンタおかしいわよ?」


「オレを異常者扱いするな。さめじぃの外見は変わっても本質は変わってないから同一人物じゃないか。化けたオーガ種じゃないって分かってるから普通に接してるのに、何がおかしいんだ!」


 レズレズとレムレムが言い争う。口ゲンカの内容が不毛。


「ナギサ人気者じゃーん」


 内容が私の事だからか、ヨイチがからかってくる。うるさいと言えばニヤニヤと気持ち悪い笑みを向けてくる。完全におもしろがってやがる。


「ねーレムレム〜、まだぁー?」


「お宝行かないのー?」


 ポンとタンに催促されて口論は収まった。レズレズはまだ何か言いたそうにしていたけど、アンを抱えさせた事で意識を逸らせた。アイツら策士だな。


「……? シズクちゃんどうしたの?」


 どこか遠くを見つめてるシズクちゃんに声をかける。ここではない遠い場所。同じ方向を見ても特に気になる様なものは見当たらない。私には見えないナニカがシズクちゃんには見えてるのか。それは少し、とっても、だいぶ……寂しいな。


 私の声に気付いたシズクちゃんが振り向く。なあにと言うように首を傾げて私を見る。これ、見覚えがある。初めて外に出た時、陸地に上がった時もこんな感じだった。


「行こうシズクちゃん。遅いって怒られちゃうよ」


 少し離れたところで名前を呼んで待っている。私は最後尾というか、まだ一歩も歩いていない。


「うん」


 シズクちゃんと一緒にみんなの元まで追いかける。



「――ココだよココ! ほら、こんなの見た事あるか?」


 レムレムが指差したものを見て、順に視線を隣に向けていく。途中で目を覚ましたアンが最後になって、驚いたように視線を彷徨わせる。


「あ、アタシも知らないわよ。誰かが発見すればアタシかアンタのどっちかには連絡が行くでしょ」


「そうだよなぁ」


 アンの言葉を受けたレムレムが同意するように深く頷く。王である二人が知らない事を他の鬼族が知るわけがない。

 レムレムの案内で辿り着いた先にあったのは、森の中に隠れたように佇む小さな木造の建物だった。家と言うには小さく、人一人入れるかという大きさだった。


 エストファにある家は二種類。ノーム種の住処である地中の穴ぐらか、ファータ種の住処である樹上のログハウス。ここはまだエストファの領地内だから目の前のコレが家ではないのは確かだ。だったらなんだ、という話なのだが……。


「やしろ」


 シズクちゃんが呟く。


「やしろ? シズクちゃん、コレ知ってるの?」


 シズクちゃんの姿が見えている五人が振り返る。ルービックキューブにもコレの情報はなかった。

 でも、首を横に振る様子から名前だけしか知らないようだ。


 やしろって神社の事? 言われてみれば外見はそれっぽい。それに、やしろの中から何か力を感じる。けど、それがなんなのかまでは分からない。神が居る? ……はありえないか。

 扉の上にある額には剣の模様が描かれているけど、何か関係があるのか?


「中に何かあるはずなんだけど、扉は開かないし、どうやっても壊れなかったんだよ」


 格子の扉になっているのに、隙間から覗いても暗闇が続くだけで何も見えない。試しに扉を前後左右に揺すったけど、ビクともしなかった。

 拳を強く握って思いっきり殴る。岩をも砕くオークの腕力を持ってしてもキズどころか汚れ一つ付かなかった。


「ね、言ったでしょ?」


 レムレムの言った通り、やしろの扉は開かないし、壊そうにもビクともしない。だけどやっぱり力は感じていて、気になって仕方ない。


「開けるのにカギがいるとか?」


「錠前がないわ」


 ポンの疑問にレズレズが答える。


「どこかから繋がってるとか?」


「それはないね」


 タンの疑問を否定する。オーク種の鬼力の一つ、地中出没の能力で地上からは見えない大地の状態を探れる。どうやらやしろは少しだけ宙に浮いているようで地面と接していなかった。だからどっかの入口と繋がっているのはなさそうだ。


「レムレム、さっき言ってた謎かけってなんのこと?」


 ヨイチがレムレムに尋ねる。なんの事か首を傾げて、思い出したように手を叩いた。忘れてたのかコイツ。

 レムレムは懐から四角い箱を取り出した。


「やしろの扉の前にこの箱が置いてあってさ、カラクリ箱を解くまでは出来たんだけど……」


「それを先に言いなさいよ」


 レムレムの後出しにレズレズが突っ込む。


「悪かったよ。で、箱の中に紙が入ってたんだけど、そのなぞなぞが分からなくてさ」


「今までのムダな時間返して」


「悪かったって謝っただろ」


 みんなでやしろの周りをぐるぐるして、何か手がかりらしきものがないか探してた。手がかりなんてあるはずなかった。だって最初に来たレムレムが持ち去っていたのだから。レムレム有罪。






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