表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
&dead.  作者: 猫蓮
68/143

&58.簡単なお仕事

 輪っかをくぐると森から自然フィールドに変わった。そんなに大きな変化はない。けど違う。空気が変わった。

瞬間移動でもしたみたいだ。みたい、ではなくて実際にしたのか……?


「ここは……?」


「エストファだよ。……え? こんなことも忘れちゃったの?」


 カチン。今バカにしたよね。バカにしてるよね。

 てかさっき私の事じーさん呼ばわりしたよね。そんなに老いてねーよ。


「まあいっかぁ」


 私から距離を取ってホイッスルを鳴らす。うるさーい。

てか忘れてたけどコイツが乗ってるそのバッタはなんだ。乗り物か? にしてはリアルだけど。本物にしてはデカい……って、あぁ。


 この世界は人以外がビックリするほどデカイのだろう。それなら地下の敵のデカさも納得がいく。ホントにデカかったもんな。モグラもペリカンもイルカも。暗闇のとこは見てないから知らないけど、きっとデカいだろう。……あれ? なにか忘れてる気が……気のせいか。


 むーん。笛のせいかガキどもがわらわらと集まってきた。嫌な予感がするな。


「みんな一つずつ持ったね? それじゃあ順番に行ってみよー!」


「「「はーい!」」」


 ノーム種がレッツゴーと拳を振り上げると、集まってきたガキが手をあげて元気よく返事をした。そして、全員が私を見る。


「ドッジボール!」


 地面に円形の枠が浮かび上がって私とボールを持ったガキだけを囲む。間に線が引かれてコートのようになった。一体一のドッジボールってどうなの?

 投げられたボールを軽々と避ける。そういえば、外野っていなくね? どうするの? と疑問に思って後ろを振り返る。直後、背中にボールが当たった。爆発したみたいに体が砕け散った。


「さいの目切り!」


 大きなサイコロを振る。ゴロンゴロンと転がって、出た目は三。ポンッと煙が上がってサイコロが三つの包丁になって浮かぶ。それ夜だけの話じゃねえのか。犯人お前か!?

どの切先も私に向かっている。滑らかなカーブを描いて包丁が飛んでくる。避けても弾いても勢いは衰えず向かってくる。見事な連携? で体を切り刻んだ。


「クラッカー!」


 発射口を私に向けて紐を引く。パンっと音が鳴って内の物が飛び出す。直線上から離れようとして、体が動かなかった。そのまま紙ふぶきがスパスパと体を切り裂いていった。


「ねずみ花火!」


「風船!」


 そして殺される事十回。集まったガキ十人にそれぞれ殺された。なにあの物騒な道具の数々。どれも殺傷能力高過ぎだろ。まあ、痛くも痒くもないけど。


「い……生きてるー!!!」


 スゴーイスゴーイとノーム種が興奮する。集まったヤツらも真似て喜ぶ。


「……オイ」


「十回……いや十一回だね。本当に死なないんだ〜。どうなってるの? 頭が壊れても全身バラバラになっても跡形もなくなっても元通り!」


「オイ!」


「どうして動いてるの!? どうして死なないの!? 何をやったの何があったのなんでなんでなんでー!?」


「聞けっ!!」


 グイグイと聞き迫るノーム種の頭に拳骨を落とす。


「イッッッたーい……」


 鼻息吐いて腕を組む。全く、好奇心が旺盛過ぎる。暴走列車か。いやコイツの場合は暴走バッタか。……まあ、それはどうでもいいんだ。


「で? まさか、自分だけ満足してはい終わり……なんて、考えてねーよなぁ?」


 ヒュっと息が詰まる音が聞こえた。ガタガタと震え出したガキどもを見下ろす。急に大人しくなったな。気圧されたのか、状況を理解出来たのか……まあどっちでもいいけど。


「どうだったよ。アア”!? 随分愉しそうだったなぁ。ほらなんか言ってみろ。さっきまでの威勢はどうした」


「ひ、あ……」


 青ざめて身を寄せあって震えて、なんだ私が弱い者イジメをしてるみたいじゃないか。違うよな。

今更怯えて、ちゃんちゃらおかしい。おかしすぎて思わず笑いが零れた。


ゆっくりと瞼を開けて見下す。

笑みを消して、感情を消して、それらを見下ろす。

少しの希望もないと分からせるために、冷酷に映るように立ち塞がる。


「落とし前、つけるよな?」


 泣きそうな顔して、高速で顔を縦に振る。あ、いや、泣いてるわ。ボロボロと涙流してる。泣くぐらいなら最初からやるなよ。


「うれしい」


 シズクちゃんがノーム種を見つめて呟く。うれしい?

 ………………っ。思わず吹き出した。


 嬉しい……嬉しいって。アッハッハ。ひーっ腹痛い。ふ、ふふ……ダメだ。笑いが込み上げてくる。顔を押さえて堪えてるけど、ヤバイっ。決壊しそう。


 ………………ふぅ。堪えた。危なかったぜ。体裁は保たれた。

……あん? 泣き止むの早っ。てかなに間抜けな顔してんだ。


 そういえばかおの下はどうなってんだろ。手を伸ばすと避けるように仰け反る。ムダな抵抗は気に留めず、そのままペラリと紙をめくる。


「っ……」


 そっと下ろした。見なかった事にしよう。そうしよう。私は何も見ていない。見てないぞ。


「あ、あの……?」


 ノーム種がおずおずと声を出す。ビクビク怯えて、随分へっぴり腰になったもんだ。だけどさっきよりは和らいでいる。むーん。もう一回威厳を見せるか。上下(うえした)は最初にハッキリさせないと。


()が高い」


「はっ、ハイ!」


 バッタから降りて正座する。背筋を伸ばしたら高いままじゃん。まあいいか。


「お前はこれから私の下で働け。拒否権はない」


「ひ、ひゃい! 」


 よしよし。完全に服従したな。これで情報源ゲットだぜ。

 ただ、露骨に怯え過ぎだろ。なんか悪い気が…….しないな。うん。全然しない。むしろ清々しい。だって殺されそうになったし。あ、実際殺されたわ。


「安心するといい。何も恐れる事はない。ただ私に従う。それだけの簡単なお仕事さ」


「ひ、ヒェ……」


 む、安心させるように笑ってやったのに余計に怯えやがった。なぜだ。


「こ、殺さないでぇ……」


 頭を抱えて蹲る。酷い言い草だ。先に殺してきたのはそっちじゃないか。

 それに、貴重な情報源を無下に殺すわけないじゃないか。しっかり役に立ってもらうんだから。


 ため息をついて、ノーム種の頭を軽く叩く。ビクッと体が跳ねたけど気にしない気にしない。


「なに、取って食いやしないさ。湾に沈めたり、小指を切る事もしない。安全で簡単でお前みたいなガキでも出来るお仕事だ」


「ひぎゃあああああ!?!?」


 ノーム種の悲痛な叫びが空に木霊する。うるさい。

 反射的に力がこもって、頭を地面に押し付けた。少しめり込んだけど静かになったので良し。


 気を取り直して。

 別の世界うんぬんはややこしいから飛ばして、仕事内容を簡潔に伝える。この世界の事知らないから教えろ。

そしたら物忘れが激しいじーさんのレッテルを貼り付けやがった。ムカついたから殴ってやった。


「あ、そういえば名乗ってなかったな。さめじぃだ。種族はオーク種。よろしく」


「オレはレムレム。ノーム種で……聞いて驚け! オレが悪鬼王だ!」


 フフンと得意げに胸を張る。あっきおう……王!?

 え、コイツが……? 王……? こんなのが?

 マジかノーム種。大丈夫か世界。


「つくもしずくは、のろいすとしゅ!」


 ハーイと手を上げてシズクちゃんが名乗る。可愛い。


反応してない視線も向けない。レムレムにはシズクちゃんが見えてないっぽいな。だとしたら、やっぱりノーフォが特別なのか。それとも、同じ種族じゃなければ見えないとか?


「でもさめじぃって本当にオーク種なのか?」


聞かれても知らんけど。ノーフォがそう言ったんだから。ウソをついてる雰囲気はなかったし、わざわざウソをつく必要もないだろう。


「どういう意味?」


「名前がしっくりこないんだよ。種族毎に特徴があるのは知ってるだろ?」


それは知ってる。


「外見だろ」


 おい、なにコイツやべぇみたいな顔してるんだ。目頭を押さえるな。手を合わせるな。ナムってなんだ。バカにしてるだろ。






オーク種の観察記録2

悪鬼王と接触後、エストファに転移した模様。その際、一度殺されたのに蘇った。怖かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ