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&dead.  作者: 猫蓮
58/143

&49.惚れ惚れ

 なんて事だ……。

 最悪な展開が頭の中を過ぎる。


 シズクちゃんと瓜二つの少女がいた。燃える。骨になる。ピカッと光ってドクロになった。そしてシズクちゃんが居なくなった。


 私の天才的な頭脳が導き出してしまった。この一連の流れ、その結末を。シズクちゃんが、成仏した……!


 う、ウソだろー!!??

 こんな、こんな事って!?


「イヤだ。イヤだイヤだよ……っ、シズクちゃん!」


 ドクロを拾って抱きしめる。


 ようやく出会えた可愛い人。ずっと一緒に居ると約束した。幸せにすると誓った。


 それなのに!

 まだ何もしてあげてない。全然足りない。もっと欲を出して。こんなの……こんなのあんまりだっ。


「シズクちゃんっ……」


「なあに?」


「……………………へ」


 顔を上げる。目の前にシズクちゃんの姿がある。きょとんと首を傾げてる。可愛い。


「シズクちゃん」


「うん」


「シズクちゃん」


「えへへ」


「シズクちゃん!」


「さめじぃ」


 あぁ、シズクちゃんだ。良かった。まだここに居る。居てくれる。離れてない。居なくなってない。まだ、独りじゃない。


「なみだ。さめじぃ、うれしい?」


 目から大量の涙が溢れてる。それを見て、シズクちゃんが笑ってる。可愛い。とても可愛い。

 それと、覚えててくれたんだ。それも嬉しい。


「うん。嬉しい!」


 涙を拭わずに手を伸ばし、シズクちゃんの頬にそえる。けれど触れた感覚はしなかった。

 シズクちゃんが目を閉じて私の手に擦り寄る。そして手を重ねる。触られてる!? ……温かい。体温を感じる。


「ありがとう、シズクちゃん」


 目を開けたシズクちゃんと目が合う。記憶の中のシズクちゃんじゃない。空虚な瞳じゃない。目尻を下げて柔らかく笑う。嬉しいって目が物語っている。


 ぐぅ……可愛い。もう片方の手で胸を握りしめる。

 可愛い可愛い可愛いっ!

 胸が痛い。心臓がバクバクなってる。幸せでツライとか矛盾してる。これが嬉しい悲鳴ってやつなのか。


 何これ抱きしめていい? いいよね? ダメな理由が見つからない。相思相愛でラブラブだよ。


 前のめりになる。微笑むシズクちゃんに胸を押さえていた方の手も伸ばす。


 抱きしめる前に、シズクちゃんが消えた。


「フギュッ!?」


 バランスを持ち直せなくて顔から突っ込む。痛い。いや痛くない。ケツだけ上げた無様な格好だ。恥ずっ。


 上体を起こして辺りを見渡す。いないいないいない。ばあしてシズクちゃん。出てきて。ビックリしちゃった? ごめんね大丈夫だよ。私は何があってもシズクちゃんを傷付けたりしないから。


「……ん?」


 ドクロが転がってる。私が動いた時に落ちたのか。

 ……………………まさか。いやいやいや。イヤイヤイヤ。


 ………………。

 ま、まさか……ね。


 そーっと手を伸ばしてドクロに触れる。するとシズクちゃんが現れた。

 手を離す。消える。触る。見える。離す。見えない。触る。いる。


 う、うぅ…………なんだそれー!?

 触ったら見えるようになるってなんだよ。バカなの。バカじゃないか。ふざけんな。


 私知ってる。知ってるよ。

 付喪神。どんなモノでも真心込めて大事に大切に扱うと心が宿る。大まかに言えば妖怪的なヤツ。

 ね、つくもがみ……。皮肉かな。皮肉だよね。はぁーヤダヤダ。私こういうノリが一番嫌い。全然笑えないし、気分悪い。


「さめじぃ?」


 そうは言っても、だよね。何がどうしてこうなったかは知らないけど、なってしまったものをとやかく言っても仕方ない。そう、分かっていても……気持ちはすぐには切り替えれない。


「どうやら、私はコレに触れていないとシズクちゃんを見れないみたいなんだ。だから、離れないように持っておくね」


「うん!」


 とは言ったものの、どうしようか。ヒーンみたいには、いかないよなぁ。あれも原理分からない。

 首につけるにも紐とかがない。かといってずっと手に持っているのも、落とす可能性を考えるとあんまりだ。被る……には大きさが足りない。

 …………あっ、いい事思い付いた。


 ヒーンを出して頭を斜めに斬る。断面にドクロをくっつける。上手くいくかなー?

 頭が再生していく。押し出されないように押さえつける。あっ、なんかいい感じになりそう。


 頭が戻って、左右に傾ける。うん。ドクロをめり込ませたけど、特におかしな感じはしない。……違和感がないのも問題だよね。


「オッケーオッケー」


 頭は死守だから、これならシズクちゃんと離れる事はないだろう。投げても一緒だし、落とす心配もない。あれ私天才じゃね。いやー我ながら惚れ惚れしちゃう。


「それじゃあシズクちゃん、行こうか」


 手を差し出す。さっきの感じから、手は触れるとみた。ようやく手を繋げるんだ。やったね。


 私の手を見て、シズクちゃんが嬉しそうに表情を明るくする。重ねるように手を伸ばして、触れる前に止まった。

 え、えっ!? なになになんで!? どうしてっ、泣きそうな顔をしてるの。


「つくもしずくは、しらふだった」


 う、うん。それは聞いたよ?

 シズクちゃんが手を引っ込めて、胸の前で握りしめる。後ちょっとだったのに。とっても残念だけど、一先ずはシズクちゃんだ。切り替えろー私ー。


「ずっとひと、ころしてた」


「それは違う!」


 思わず叫んだ。そうか。だから、躊躇いがあるんだ。


 違和感があった。ドクロになってから、シズクちゃんは少し変わった気がした。別人になったとかじゃなくて、こう……知識を得たみたいな。赤子から小学生ぐらいに成長した感じ。何も知らないではなくなった。


 それは多分ドクロと……じゃなくて、あの少女と合わさったから。少女の記憶や知識が共有されたと考えれば納得がいく。

 余計な事をって思うし、説明する手間が省けたとも思う。私自身、どうするか決めかねていた。内容が内容なだけに、慎重になるしかなった。


 大事な事だけど、負担にさせたくない。最終的にはって思っているけど、後回しでもいいんじゃないかって考えてる。

 これは逃げだ。単純に先延ばしにしてるだけだ。でもこれは、話してはい終わりになるような簡単な問題じゃない。


 頭を働かせろ。考えろ。私は天才なんだから、言葉を選べるはずだ。悪い方向にはいかない。大丈夫。


「シズクちゃんは悪くない。悪いのは全部、アイツらだ。……て言っても、心は晴れないよね」


 シズクちゃんは被害者だから気に病む必要はない。そうは言っても、きっかけを与えてしまったという事実がある。ホントに不可抗力だけどね。腹立たしい事この上ないな。


「どれだけ言い訳をしたところで過去は変えられない。シズクちゃんがシラフ様だったという過去はなくならない。見たものを、体験した事を、なかった事にはならない。出来ない」


 どんなに言葉を重ねても事実を変える事は出来ない。気休めの言葉だけを言って、現実から目を背けさせるのは救いじゃない。


 甘い言葉に酔いしれるのもいいだろう。優しい世界に入り浸る方が幸せかもしれない。でもそれは毒だ。一時の感情を優先しても、ふとした時に思い返す。それはツラく苦しくて、また毒に縋る。依存してしまう。

 それは果たして、幸せと言えるのか。


「シズクちゃんは可愛い」


「――……ふぇ?」


 あぁ、驚いた顔も可愛い。ちょっと頬が赤くなってるのも可愛い。


「白い肌も白い髪も、目も耳も鼻も口も声も、全部全部っ、可愛い。でも、それはシズクちゃんだから。シラフ様だからとか白いからとかじゃない。ツクモシズクという人間だから、私の心は惹かれるんだ。たとえみんなと同じ髪色でも、目でも、性別が違ったとしても、私はシズクちゃんを可愛いと思っただろう。どんな姿でも、シズクちゃんは可愛いよ」


「う、うん?」


 よく分かってなくても照れてるのか顔が赤い。ホントに可愛い。


「関係ないよ。シズクちゃんの過去がどうとか、関係ない。私の心は、想いは、そんな簡単に変わったりしない。特別なんだ。特別なんだよ」


 記憶を見た時に一番最初に感じたのは悲しい気持ち。でもそれは理不尽な殺人だとか不幸な境遇にとかじゃない。シズクちゃんを見つけてあげれなかった事に対してだ。


「たとえ世間がシズクちゃんを非難しても、私が盾になって守ろう。たとえ世界を敵に回しても、私が剣となって立ち向かおう。たとえシズクちゃん自身が自分を否定しても、私が傍に居て肯定しよう」


 過去は受け入れるしかない。それがどんなにツラくて苦しい事でも。もしかしたら過去の責に押しつぶされてしまうかもしれない。いくらもがき苦しんでも、過去という現実はずっと重く巻きついて、やがて身動きが取れなくなるかもしれない。

 それなら私も一緒に責を負おう。それならツラさ半減苦しさ半減だ。立ち止まっていい。振り返ってもいい。いつまでだって待つし、必要なら前に進めるように手を引こう。


「だから、どうか私の手を取って欲しい。私とずっと一緒に居て欲しい。私は何があっても、シズクちゃんの味方だと信じて欲しい」


 裏切る事はない。嫌いになる事もない。未来が分からなくてもこれだけは断然出来る。

 だってシズクちゃんは、私の可愛い人だから。


「うん……っ、うん!」


 透明な雫が頬を伝う。グッと堪えるような表情の後に、シズクちゃんはそれはそれはきれいに笑った。


 重ねられた手をギュッと握る。その手は少し震えていた。安心させるように強く、でも痛くないように包み込むように。大丈夫だよ、離さないよって、言外に伝える。


 うん。良かった。これで一件落着、かな。

 でも、どうしよう。手……これ、握手なんだけど。






頭蓋骨とかドクロとか呼び方は色々あるけどさ、骨頭でコットウだって気付いた今日この頃。だからなんだという話でした。

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