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&dead.  作者: 猫蓮
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&4.泣きたくなる

 くっそー!


 私は行き場のない怒りを発散させるように地団駄を踏む……ような気持ちで体を揺らす。どうせ揺れるしか出来ないよ!


 うがー!

 うおー!

 ムッキー!!


 奇声を発しようも声には出ない。だからこそ、奇声を発する。聞かれなければ恥ずかしくなんてない。ないったらない。


 驚いた。

 ツンツンさんらしき人の声が聞こえた。聴覚はないと思ってたから、余計にビックリが大きい。


 嬉しかった。

 誰かが居るという事が寂しい気持ちを払拭させた。退屈だ飽きただなんて、ツンツンさん相手に思った事はない。


 悔しかった。

 プチッと潰されてから、ツンツンさんが居なくなってしまった。プチッがなけりゃ、また一人になる事はなかっただろうに。


 なんだよプチッてぇええ!

 ふざけんなぁーーーーー!!!!



 はあ、はあ……叫んだら怒りが収まってきた。実際に叫んでないけどね。口ないし。

 そういう気持ちって事。気持ち大事。いつまでも溜め込んじゃ体に悪いからね。どこかで爆発させないと。


 それと同時に、頭も冷静になっていく。

 感情任せに行動したっていい事一つもないからね。取れる行動ないけど。落ち着けー私ー。ふう。


 ちょっと整理しようか。

 私は触覚以外の感覚がなかった。けれど、何故かツンツンさんの声が聞こえた。今、耳を澄ましても音は聞こえない。


 ……てことはツンツンさん限定? きゃっ、もしかして運命の人? ツンツンさん、ボールは恋愛対象に入りますか?


 まあ、そのツンツンさんも今はどこかに行ってしまったけどね。……はっ、もしかしてツンツンさんもプチッとやられた?


 あーるー。とってもありえーるだ。

 近くにいたもんね。その可能性は大いにあるよ。プチッの瞬間までツンツンさんが触れていた感覚があった。


 …………え? じゃあツンツンさんはもう……っ、いやぁあああああ。

 せっかく会話出来る人が出来そうだったのにー! そんな事ってないよぉーーー!


 かーなーしーいー。

 ツンツンさんカムバーッむぎゅ。


 ……。

 …………。

 ……………………。


 だぁあああれだ踏んだ奴ー!

 踏んだり蹴ったりだよ全く!

 どっちもやられる側だけどな!

 しかも物理的に。嬉しくねー。


 うわーんもぉーいつまで続くのこの謎状態。変化来いよ。なんか起これ。


 お、おお?

 いや蹴ってくれとは言ってない。その変化は求めてない。違うぞー。


 そうそう転がってねー。コロコロ転がってねー。んでプチッと潰されてねー。


 …………おいーーーー!!

 プチッ、っじゃねぇーーーー!!


 なにもう一回潰しておこうとか考えてるわけ!?

 そんなサービスいらんが!?


 なにここ交通量多い場所? 私道路に飛び出しちゃった? それならごめん。不可抗力です。怒るなら私を蹴った奴に言ってくれ。なんなら一緒に文句言いに行こうぜ。


 あーでも私、誰かに文句言いに行くの初めてだから慣れてないわ。ごめんね。

 え〜、こういう時の第一声って何て言えばいいんだろう。悩むわー。

 ヤイヤイおいコラてめぇ、とか?

 それとも、おうおらちょっとツラ貸せや、とかかな?

 むーん、正解が分からんなー。まあ実際に言いに行くわけじゃないけどね。そもそも喋れんし。


 はあー、せめて目が見えてたら色々分かるのになぁ。私を蹴った奴とか踏んだ奴とか潰した奴とか。

 やられたらやり返すのは当たり前だよね。やられた以上のお返しが礼儀だもんね。やられっぱなしとかなめてる。


 ふう、誰だか知らんが命拾いしたな。私が元の状態だったら今頃お前らはボッコボコのギッタギタだ。全員まとめて病院送りにしてやんよ。


 シュッシュッ、とシャドーボクシングをする。まあ手、ないんだけどね。気持ちの問題ですよ。気持ち大事。


 開眼! とか言ったら目が見えたりしないかな〜。……とか思っていた時期がありました。


 暗闇の中に突然、灰色の横線が上から下にビュって流れた。えっ!? て驚いたのも束の間、またまたプチッとされた。三回目!!


 お前マジ! ……マジ!!

 許さん。絶対に許さんぞ。首洗って待っとけよ。私が動けるようになったら、もう日の目を浴びる事は出来ないからな。せいぜいその時まで、悠々と過ごしているといい。


 決意を固める。

 さて、それじゃあ行動を始めようか。


 ……え? 動けないんじゃないのかって?

 ふっふっふー、そうでもないんだよな〜これが。


 いやね、確かに動けなかったさ。これは嘘じゃない。そして今は動けるってのもホント。何故かは分からない。分からないけど、今確かに分かっている事は二つある。


 一つ。私は視覚と体の自由を得た。

 完全にってわけじゃないけどね。モノクロって言うんだっけ。白黒の風景。それが見えているの。鮮明にじゃないけど、ぼんやりと輪郭は分かるって感じ。

 体もさ、自分でゆっくりーとだけど転がれるんだよね。


 で、まあまあ結構不思議なんだけど、転がってるのに視界がブレないんだよね。どこに目があるのって思わない?

 回転してるなら、視界も動きに合わせて回るだろうし、でもそれがないんだよね。ホント、不思議だわー。私としてはありがたいんだけどね。


 んでもう一つ。どうやら私は傷付くと強くなるらしい。

 これはまだ仮定の段階だけど、割と確証があったりする。というか、それしか説明がつかないってのが本音。


 だって、そうでしょう?

 きっかけってプチッぐらいしか思い付かないわけよ。残念ながら。

 だから、そう考えると私が元に戻るには何度もプチッされないといけないのかもしれない。


 …………え、嫌だ。腹立たしい事この上ないな。


 もっとなんか、他の方法とかないんか。

 金が欲しいがために嫌いな奴の靴でも舐めるぐらいにはとても屈辱的だ。


 うぅー、いーやーだー。めっちゃやだ。すっごくやだ。とぉってもやだ。やだやだやだ!

 あー、赤ん坊とかこんな気持ちだったのかな。自分のケツ見せたくないけど糞がキモイから処理して欲しいって。そりゃ泣きたくなるわな。私も泣きてーよ。グスン。






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