&41.のんびり
どうしようかね〜。
亀の上に胡座をかいて頬杖をつく。ぼーっとしていると、前方から波がきて上下する。そして、ぷかぷかと後ろに流される。
「はぁー……」
大きなため息をつく。
のんびりとした時間が流れる中、私の心中は穏やかでいられなかった。焦りを感じている。けれど行動には移さず、ただ内心焦っているだけだけど。
「どうしようか……」
コツコツと甲羅を指で叩く。リズムに合わせてシズクちゃんが「ふんふん」言ってるのが可愛い。そしてやめ時を失った。
ここにきて行き場をなくした。行き場と言うと語弊があるか。とにかく、次の行動に困った。
まず、私の体が問題か、海の性質がそうなのかは分からないけど、水中に潜る事が出来ない。どんだけ頑張ってもすぐに浮き上がってしまった。
一回だけ、試しに海を斬ってみたけどそれもダメだった。昔の人は海を真っ二つに出来るって聞いたけど、どうやったんだろ。詳しく聞いとけば良かった。ただヒーンが濡れただけで終わった。
次に、空に浮かぶ島に乗ろうとした。だけど高さがあって、助走をつけて飛び上がっても届かなかった。触れもしない。全然距離が足らない。
元の脚力もそうだし、後水面が微妙な弾力というか、抵抗力があってジャンプがしずらい。そうじゃなくても届かないだろうけど。やっぱり空を飛べないとダメだ。アイキャンフライ出来る高台もない。
そう、大地と呼べるちゃんとした地面を探して水面を歩いたけど、水平線には何もなかった。見事に何もない。全部空に浮かんでしまったんだ。
で、諦めかけたその時に見つけたのがこの亀だ。ウミガメみたいな平らな甲羅の亀。浦島太郎を真似て乗ってみたけど、全然動かない。竜宮城に連れてってくれてもいいんだぞ。
多分、というか確実にこの亀はエキストラなんだろう。だって敵はイルカだし。
そのイルカは空を飛んで海に潜るを繰り返してる。うん。イルカは飛べるのに、どうして私は空を飛べないんだろうか。ズルい。
そういうわけで、途方に暮れてる。
むーん。どうしよう。
……あっ、そうだ。
「ねえ、シズクちゃん。前に会ったのって、結局誰だったの?」
甲羅を叩くのを止めると、少しズレてシズクちゃんも止まる。ワンテンポじゃなくて数秒かかったの、可愛い。
「?」
「ほら、真っ暗な場所で会った、あのゼロとかイチとか言ってたアイツ」
結局あれは誰だったのか。今になって気になってきた。あの時はなんかごちゃっとしてたし、勝手に決めつけてたけど実際敵かどうかもよく分からん。
よくよく思い出せば、多分味方だと思う。完全に味方かはまだ分からないけど、少なくとも敵対してはないだろう。
シズクちゃんが言った、私の教えるって言葉。あれは多分だけど私の場所を教えてくれた人って言いたかったんだと思う。そのお陰で、私はシズクちゃんに会えたわけだし。礼ぐらいはするべきだったのかもしれない。
いや、知らんな。んなもんすぐには分からんわ。ムリムリ。頭が良いわけでもなければ察しも良くない。高度な頭脳力を私に求める方が悪い。何よりあの場面でそこまで頭は働かん。
ゆっくり考えれる今になって、こうして深く考えてようやく見え始める。対峙してた時には絶対ムリだ。これは断言出来る。
「あいつ?」
あ、あれ? 覚えてない?
もしかして、全て幻覚だったとか……? ヒェッ。
「私の居場所を教えてくれた……人?」
人でいいんだろうか。人っぽさは感じられなかったけど。まあ、人じゃないならなんですか? ってややこしいから、とりあえずはいいか。
「……っ、うん!」
あっ、思い出したみたい。静かにして待つ。
……。
…………。
……………………。
あ、あれ? し、シズクちゃん?
おーい。もしもーし。起きてるー?
むーん。どうしよう。
催促した方がいいのか?
もしかして、さっきの「うん」で会話終了?
……ありえる。シズクちゃんの事だし、全然ありえる。いや悪口じゃないよ? というか、シズクちゃんじゃないにしても、よく分からないモノの説明ってとても難しい。私も「なんか……アレ」とかで終わらせるもん。
よし。この話終わり!
結論、アレは……邪魔虫で。
ふぅー、スッキリした。一仕事終えたような達成感。まあ、何もしてないけど。
はぁ。
「平和だな〜」
カポーンって、ししおどしの音が聞こえてきそうな、まったりした時間が流れる。
ホント、これからどうしよ。イルカをヤるにしても、ペリカンより厄介かも。だって、海中か空中かだもん。水平線を超える瞬間を狙うにしても、なかなか結構厳しい。移動スピードだって早いし、通り過ぎるからホントに一瞬だ。
「へいわ?」
シズクちゃんがたどたどしく復唱する。うん。可愛い。
このままお勉強会するのもいいかな。教えれる事何もないけど。むーん。言葉を教えるのって、何をどう教えればいいんだろ?
「うん……」
どこかから流れてきたのか亀がどんぶらこしてる。割ったら桃太郎……いや、亀太郎が出てこないかなーなんてしょうもない事を思いつく。
試しに割ってみようかと立ち上がろうとした時、海が揺れた。亀から落ちないように身を屈めて、視界の端に何かが映った。気になって顔を上げると、亀が居たところからイルカが出てきた。口を開けたイルカは亀を食って、そのまま空に昇る。
イルカって歯があるんだ。てか亀を食べるんだ。硬い甲羅があるけど食べれるんだ。いやまあ、ここのはちょっと違うし大丈夫か。亀はエキストラだし、イルカは敵だし。うん。何もおかしくないね。
……喉詰まらせないかな。
「うん。平和だ」
平和って事にしておこう。それがいい。何事も平和が一番。
……平和ってなんだっけ?




