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&dead.  作者: 猫蓮
37/143

&31.都合のいい話

「いいな。ここ」


 道が円上に囲ってあるデカイ池みたいな場所があった。その中にはありがたい事に足場が点在していた。

 一つ一つの足場の大きさはバラバラだけど、遠くない距離感にある。


 今の私なら飛び移れそうだ。ただミスる可能性も全然あるのが難点だ。これが地味に恐れている部分だったりする。


 でも今まで見てきた中ではダントツで良さげな合戦場だ。おあつらえ向きの場所って感じがするのが少し癪だけど。


 ホントはマグマに落ちる心配がない安全な大地で戦いたい。でもそれは高望みだって分かってる。理想は高くっていうけど、吟味出来るだけの余裕はない。


 だけどまあ、肝心のペリカンがここに来てくれなきゃ話は始まらない。そんな都合のいい話があるわけもなく。


「あかご!」


「うん?」


 赤子?

 どうしたの突然……あった。都合のいい話があったわ。


 いやいやいや。運良すぎだろ。仕組まれてるって勘ぐっちゃうわ。ペリカンが来るタイミングどうなってんだ。

 しかも滑空してるって事はこの近辺のマグマに入るわけだろ。マジで罠疑うレベル。


 だけど私にとってちょうどいいのも確かだ。

 もう地獄から出たい。早急に迅速に。

 熱さが焼き付けてくる。今はサウナにいるような感じだ。長居するような場所じゃない。


 いや最初っから長いするような場所ではないんだけど。そういうのじゃなくて。

 ここに来た時よりも温度感知レベルが上がってるから辛いの。そう強く感じちゃってる。


 だからこそ、ここで終わらせたい。

 シズクちゃんの体とか他の武器とかもう言ってられない。それは次の、もっと探索しやすいフィールドで探すから。


 ペリカンが急降下する。着水したのは嬉しい事にマグマ池の中だった。よし。ここからが正念場だ。


 ペリカンが再び飛び立つまでに多少の時間がかかる。その間にもう少し足場をマシにしよう。


 どういう風に戦うべきか、想像出来てないってのが正直な心境だ。モグラ戦で得た経験則から言って、必殺技は絶対あるだろう。それは多分、マグマの雨ではない。


 それに荒野みたいに好き勝手に動けるようなフィールドではないのも懸念の一つ。油断出来ない敵と戦うのに、気にしなければいけない事があるってのは大きな欠点だ。それだけで力は十分に発揮出来ないのだから。これが結構な痛手になる事間違いなし。


 でもまあ、やるしかないよね。

 行くぞペリカン。最後に勝つのは私だ。


 マグマから顔を出したペリカンが羽ばたく動作に入る。それを見てすぐに進行方向をペリカンに切り替えた。警戒していたからすぐに反応する事が出来た。


 まだ足場は心許ないけど、そんな悠長な事は言ってられない。

 ペリカンが飛び立つのと同時に、足場を大きく踏み込んで飛び上がる。


「行かせるか!」


 クチバシの先端を掴んで上がる。間に合った事への安心感もつかの間で、すぐに走り出す。

 胴体に向かいながらヒーンを出すと短い刃を取る。


「空に逃げる反則行為は止めていただこう」


 片翼の付け根部分に短い刃を突き刺して端を足蹴にする。手を離してもう片方の足を一歩前に踏み出して、目の前の羽を滅多斬りにする。


「うおっと」


 ペリカンがバランスを崩してグラッと傾く。旋回しながらマグマに引き寄せられているみたいに落ちていく。着水するまでの僅かな時間で、一つでも多くの傷を刻んでいく。


 もう少しで着水する。攻撃をやめて、左手で羽毛を掴み衝撃に備える。


 僅かな水飛沫を上げてペリカンがマグマに落ちた。

 落ちた衝撃でマグマが雨のように降り注ぐと思ったけど、全然だった。粘り気のあるマグマだから?

 まあ、いい。私にとって好都合な事ならなんだっていい。


 手と足で羽毛を強く握りしめて、深く刺さった刃に触れている足を後ろに引く。力任せに引き抜いた刃が遠心力に従って足裏を滑る。

 左手に持ち直してヒーンにくっつける。一度ヒーンをしまってペリカンの上を登り上る。


 首の付け根部分に着くと再びヒーンを出す。


「悪いけど、急いでるんでね。一発で終われよ」


 無防備な首を斬った。


 はずだった。


「!?」


 目の前にあるのは、刃を受け止めているのは、首ではなくクチバシだった。


 首ってそんなに曲がるのか!?

 ねじれてるが!?


 ペリカンがクチバシを開けると中から滝のようにマグマが噴き出てきた。掛け湯みたいに背中を伝って尾の方まで流れて落ちる。


 その光景を上から眺める。

 いやー危なかった。あのままあそこにいたら流されてた。そのままマグマの海まで出荷待ったなしだった。

 今は上クチバシにヒーンを引っ掛けてぶら下がっている。


 にしても出るわ出るわ。口の中からどんどんマグマが出てくる。どんだけマグマを飲み溜めていたんだよ。袋の許容量超えてない?


 ……お。ようやくマグマがなくなっ……イ゛ェッ?!

 なにあの突起!?

 えっ、キモ。

 ベロ?

 のどちんこ……は上側だから違うか。


 膜を押し上げてるような……破裂して中から何か飛び出てきたりしない?

 実はそっちが本体ですとかない?

 やめてねそういうの。ホントにダルいから。


 よし。背中のマグマも全部流れた。それじゃあペリカンの上に戻って……うん?

 は、外れない!?

 キレイに挟まって抜けなくなった!?


 おいおいおい。やめろよ勘弁してくれ。

 これで頭振り回されてスポッて抜けてマグマにドポンはシャレにならないって。笑えねーよ。


 くっ…………そうだ。片方取って、よし。

 ペリカンの背中に乗って前を向くと、開いた口が迫ってきていた。


「うわぁっちょ!?」


 スライディングして滑り落ちる。頭上近くでクチバシが閉じる大きな音が響く。危ねっ。


 近くの足場に飛び乗って避難する。一旦体勢を立て直そう。

 が、すぐに影がかかる。上を見上げると開いた口が迫ってきてる。また!?


 わわっ!?

 別の足場に飛び移る。

 ふぅー。あっぶねー。


 うわー、さっきの足場が食われてなくなってる。なにあのクチバシ。歯がないから大した事ないって思ってたけど、これは脅威だ。いやもう力で解決してない?


 にしても、あの首が厄介だな。可動域が広いから全方位噛みつきオーケーになってる。しかも長いから距離があっても届く。


 さて、どうしようか。

 出来ればさっきので決めたかった。長引けば不利なのは私の方だからね。近付こうにも足場は多くないし、食われて減る。


 地面を上に伸ばす。手のひらぐらいの高さで止めて切り離す。それを持ち上げてペリカンに向かってぶん投げる。

 回り込むように足場を飛び移り、時間差で二つ三つと投げる。


 投げた土塊が食べられる。いやマシュマロキャッチかよ。三つ全部食べるとか器用だな。


 あー、目が私を見てる。警戒してる。目くらましにもならないや。


 別の足場に飛び移る。私が跳躍したのと同時にペリカンが動き出した。猛スピードでこっちに向かってくる。って、速っ!?


 何そのスピード、聞いてないぞ。

 前見た時はもっとゆっくりだったじゃん。

 ジェットでもついてんのか!?


 あっ、ヤバい。追いつく。次の足場に乗る前に捕まる。空中じゃ身動き取れない。鳥の癖に賢いとかふざけんな。


 ペリカンがクチバシを開ける。下がマグマに浸ってる。


 おいおいおい。ウソだろオイ。口の中から斬ってやろうとか出来なくなったじゃん。賢過ぎないか!?

 これは……マズイな。何も出来ない。






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