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&dead.  作者: 猫蓮
36/143

&30.自業自得

 目を閉じて手を前に出す。

 深呼吸スッハッ! してゆっくり瞼を開く。


「伸びろ、道!」


 力むと足先の地面が伸びていく。


 おぉ、本当に出来た……!


 瞬いて自分の手を見る。いや半信半疑だったからさ。なんなら2:8ぐらいの心持ちだったよ。疑いが八ね。


 しかしこれは、特典というやつか?

 第一ステージをクリアした報酬。いいな、それ。上から目線なのは気に食わないけど、もらえるんならありがたくもらう。

 次は空を飛べる力がいいな。ほら、ペリカンだって空を飛んでるし。


 ただ伸びるスピードは遅いな。ゆっくり歩くぐらいだったら問題ない。けど走ったら一歩目でドポンだ。

 これ、マグマを覆うってすると、どんだけ時間がかかるんだろ。


 ううん。やめよう。途方もない。考えるだけで気が遠くなる。やる気が失せる。


 しゃがんで地面に手をつく。それから道を上に伸ばす。


 うん。横じゃなくて縦方向でも問題ないみたい。んでも伸ばせる面積は体一つ分か。小さなイスぐらいの円。まあ十分か。


 風もないし、揺れも小さいから立っても問題なさそうだ。バランス崩したら危ないよねってカエルポーズしたけどこれなら大丈夫か。肩幅くらいなら足を開けるし。


 ゆっくり立ち上がって、さらに道を上に伸ばす。


 はあーっ、眺め最高!

 絶景かな絶景かな。これが青い海だったら言うことなしだ。なんでマグマなんだろうね。意味分からない。

 赤と黒とか色合いがおどろおどろしいよ。地獄カラーだから。いやここ地獄だったわ。


 うーむ。見渡す限り何もないな。ピラミッド的人工物もない。

 これはあれか。またフィールドの端まで行って壁沿いを探索するルートか。ほら、足場を確保出来る(すべ)があるから問題はない。ただ私が無となれば。


 いやいやいや。無になる必要ないじゃん。なんたって今はシズクちゃんがいる。しかも目に見える。

 人魂だろうがシズクちゃんはシズクちゃん。どんな姿でも可愛い。可愛いシズクちゃんを眺めるのに一時間や二時間は短いってもんだ。一日中眺めても飽きない自信しかない。なぜならシズクちゃんは可愛いから!


 しっかしまあ、天井に当たらないな。結構な高さまで上がったぞ。もう地上の道が霞んで見えるよ。他に高い建物どころか比較出来るような建物自体ないけどさ、これもう高層ビルぐらいの高さになってるんじゃないか?

 キレイ景色だ。ほら見て。一面に赤い海が広がってるよ。血の色だね。最悪だね。


 それに比べて見てよ、シズクちゃんの白い炎を。なんて可愛いんだ。

 中心が赤くてもマグマの赤とは全然違う。マグマが赤系の絵の具を全て混ぜ合わせたドロドロの濁った赤だとして、シズクちゃんのは原色の赤。他の色と混ざることのない鮮やかな始まりの色。


「あっ、シズクちゃん。高いところ大丈夫だった?」


 すっごい今更だけど。私が全然平気だから忘れてたけど、ダメな人は少しの高さでもダメらしいからね。今はもう、少しどころの高さではなくなってるけど。


「うん!」


 良かっ……たァ?!


 頭を殴られたような衝撃が走る。グラりと体が傾いて、足が浮く。体が仰向けになって天井が視界に映る。


 ってェ、天井も見えない壁かいっ!?


 というか、どんどん上に伸ばして行きながら何も備えてなかった。上見てないし、仁王立ちだし。


 だからこうなるのは当然の帰結なのかも……。

 伸ばした手の向こう、高くそびえる私の足場が離れていく。


 久しぶりの落ちる感覚。

 ああ懐かしきかなアイキャンフライ。


 だが最後まで落ちる私ではない!

 空中で体勢を変えて縦になる。足の方に手を伸ばして力を入れる。


「足場召喚!」


 ………………あれ?

 何も出ない?


 今なお続く自由落下。私の力が不発に終わる。

 いや待て待って。もしかして力に制約があるのか?

 ヒーンみたいに名前を呼ばないと出ないとかっ……ありえる。とってもありえーるだ。


 だとしたらなんだ!?

 何がルールだ……て…………あ。


「あぁぁぁあああーーー!?!?」


 ちょっと考えりゃ簡単な話だよ。

 地面に接してなきゃダメだよな!?

 そうなんだろ!?


 くっそぁー。やっちまった!

 全部私のせいだ。自業自得だよコンチクショウ!


 いや待て。待て待て待て。ちょっと待て!

 ここの地面ってどうなってた!?

 道か? 広い足場があったか?


 ………………ダメだ。ぜんっぜん思い出せない。

 ヤバいヤバいヤバいっ!

 マグマに落ちたら終わりだぞ私ィ!?


 空気をかいて足場に手を伸ばす。って、そんな事で動けるわけねーだろ! 遊んでる暇ねーんだぞ!


「ッ、ヒーン!」 


 足場に刺して落下速度を軽減……って、足場を切るんじゃない! やめろやめろ!?

 クソッ、切れ味が良過ぎる。今回は尽く使えねーなこの武器。


 他に手段は、力っ……ないよ。もう品切れだよぉおおお!!


「わぁああああああアぎゃっ!?」


 こ、股間が……割れっ。

 全身に、衝撃が……体、真っ二つなった、なってない?


「あぁ……」


 地面がある。落下が止まった。

 上に伸ばした足場から真横に足場が伸びて、それに跨った。


 あぁ、痛覚がなくて良かった。

 ホントに、良かった……!


 下を覗いて、足場に体を預ける。

 このまま落ちてたらマグマだった。もうすぐで地上だった。間一髪セーフだ。


 焦ったぁ〜。マジで焦った。

 ヒーン伝いでも力が使えて良かったわ。

 ナイス私。よくやった。


 もっと考えてから行動しよう。うん。それがいい。

 ……それが出来てりゃ苦労はしねーよ。出来ないからこんな事になってんだろ。うわっ、言ってて傷付いた。悲しい。


「よしっ!」


 新しい力の確認は終わった。次は遠距離武器だ。


 ……の前に、疲れたから寝よう。足場を広げてっと。


「シズクちゃんおいで。一緒に寝よう」


 手を差し出すと寄ってきてくれた。触れなくても優しく包むように迎える。


「おやすみ」


「おやすみ!」






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