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&dead.  作者: 猫蓮
33/143

&28.飛び道具

 突然目の前に何かが落ちた。

 一瞬の事で何かは見えず、けどそれはもう少しで私の頭の上に落ちるところだった。


 驚いて足が止まる。

 目の前には黒煙が上がり、足の前部分が削られた感覚がする。バランスを崩して前のめりになって、何かが落ちた場所を目にする。


「うわ……えぇー??」


 なにこれ。……は?

 なにこれ!?

 マグマ?!?!


 足の先にはマグマがあった。

 なんで?


 さっきまでは何もなかったのに。ちゃんと地面があったのに。大きな水溜まりのようなマグマがある。落ちてきたのってマグマ?


 いやいやいや。そんなまさか。もう疲れてしまったか私。探索を始めてまだそんなに時間は経ってない気がするぞ。


「あめ!」


 雨? 飴?

 どっちにも取れる絶妙なイントネーションだった。そのシズクちゃんの声に顔を上げた。


「え……うえぇ!?!?」


 雨が降ってる。でもそれは私の知ってる雨じゃない。

 マグマの雨。一粒がボールサイズの特大粒の赤い雨。


 いやこれ、雨って言っていいのか!?

 大大大噴火じゃん。マグマが降ってるよ。

 なんにしろ超危ねー!


 どこか雨宿り出来る場所っ……はないよな!

 知ってたよコンチクショウ!


 だが私には問題ない。オーケー焦る必要はない。なぜならそう、私は死なないから。

 マグマに当たったって、体が溶けたって、私の頭がマグマに落ちない限りは死なないのさ。フッ。


 自分で言っててダッセェ。ホントやだ。


「っ……ヤバいかも」


 ひや汗が垂れる……感じがした。実際には汗なんて出てないけど、それぐらい焦ってる。嫌な予感がビシバシ伝わってくる。


 マグマが落ちる。

 音を立てて、マグマの塊が、地上に降り注ぐ。


 そして、嫌な予感が的中してしまった。


 落ちたマグマが地面を削る。削った場所にマグマ溜りが出来る。

 幅の狭い道にマグマが落ちた。地面が削られ、両隣のマグマの海が繋がった。道が途切れて塊の大きさ分の間が空く。


 ヤバいヤバいヤバい!

 足場が減っていく。このままじゃ身動きが取れなくなる。


 マグマが当たるだけならまだいい。いや良くはないけど、死なないから、いい。

 でもマグマに落ちたらアウトだ。浸かっちゃったら一生燃えカスだ。


 マグマの雨に当たった衝撃でバランスを崩したら?

 飛び越えた先で足を滑らしたら?

 道が途絶えて行き止まりになったら?


 詰みだ。完全に詰む。

 そんなのは嫌だ。まだ何も出来てない。シズクちゃんと、一緒にしたい事がいっぱいある。本当の外を見せて上げる事も出来ずに朽ちていくなんて、絶対にごめんだ。


「シズクちゃん走るよ。ついてきて!」


 ここの地形は複雑だ。雨が降った後の砂浜みたいに、木の根っこみたいに、道が伸びている。無数に伸びてるように見えて、ゴールのない迷路みたいだ。

 これまで何度引き返した事かっ!


 てか敵はどこだよ!?

 全然、これっぽっちも、影すら見えないが!?

 まさか……マグマの中に居るって事はないよな!?


「しまっ……!」


 マグマの雨に気を取られて足元が不注意になってた。

 道が途切れている事に気付かず、足を踏み外した。


 マグマに落ちる。そう思った。

 体が倒れる先に地面はない。


 こんなところで終わってしまうのか。

 こんな簡単に、呆気ないのか。

 こんなの、一生恨む。


 歯を食いしばる。でも、もうどうする事も出来ない。

 それでも湧き上がる抵抗心で眼を閉じずに睨みつける。赤一色の景色。それにとても嫌悪感を抱いた。


 けど、不思議な事に伸ばした手に硬い感触がした。

 思考が停止して、体の力が抜けて、尻もちつく。

 頭が下がって、視界に入ったのは、地面についた手だった。


 …………地面?


「うえ」


 その直後、シズクちゃんの声が聞こえた。反射的に上を見上げると、真上からマグマが落ちてくるのが見えた。


「ちぃっ」


 飛び跳ねるように後ろに下がって立ち上がるとすぐさま駆け出す。休む暇もないっ。


 この雨はいつまで続く?!

 地面が全部なくなるとかないよな?!

 洪水とか起きないよな?!


 疑問が浮かんで浮かぶ。答えが分からないから、解消される事はない。ただただ疑問が増え続けるだけ。深く考える余裕もない。


 危険、ピンチ、大変!

 今出来る事……走る!


 がむしゃらに走って、とにかく走りまくった。疲れない体で本当に良かった。じゃなきゃ今頃、マグマのモクズだ。


 どれだけ走ってたのか、気付いたら雨が止んでいた。

 マグマが降ってこなくなった。

 それが分かって、ようやく足を止めれた。


 膝に手をついて息を吐く。呼吸は乱れてないし、疲れてないし、汗も出てない。それでもこのポーズを取ったのは、無意識なんだと思う。前の体の、人間だった頃の癖。


 今も人間のつもりだけどね!

 ミステリーボディなだけで。


「ったく、なんだったんだ……」


 汗を拭うように手の甲を顎に押し付ける。それから雨が降っていた空を見上げる。

 室内だから天気が変わる事はないはずだ。というか雨がマグマだから自然現象なわけがない。絶対に故意だ。ふざけてる。


「…………ん?」


 空に何かいる。なんだあれ。

 目を細めて見る。


 鳥……?

 まさか……敵!?


 ウソでしょ!?

 飛んでるなんて卑怯だ。ズルだ。

 降りてこい!


 マグマの中じゃなかったのは良かったけど。良かったけど……!

 飛んでるも十分なしだろ。ありえないって。ありえちゃダメだって。反則だから!


 手が届く距離まで降りてきてくれたら……ってないよね。うん。分かってる。高望みはしないよ。


「どうにかして撃ち落とせないか」


 飛び道具は……ない。いやあっても届かないだろ。遠いし。

 スナイパーライフルとかならって思ったけど、敵の位置が上だと減速するし、飛距離が足りない。


「…………いや、一か八か」


 ヒーンを出して長い刃を取る。それをやり投げの感覚で持つ。

 足場オーケー。狙いを定めて……助走をつけて、投げるっ!


「っ、うわ?!」


 大きな音を立てて、刃が地面に刺さった。

 うん。刺さってる。


 ふぅ。落ち着けー私ー。

 確かに私はヒーンを投げた。刃から手を離した。なのに手を引っ張られるような感覚がした。気付けば投げたはずのヒーンが地面に突き刺さっていた。しかも私の手はヒーンから離れてない。


 いやどうなってんの、これ?


 手を動かしても手の皮一枚が繋がってるみたいに滑る。んでもって完全に離れる事はない。


 いやなんで?


 手を強く引けば地面からヒーンが抜ける。指の腹にくっついてプラプラと揺れる。接着剤でついてるみたいに。


 切れ味抜群で、壊れなくて、でも名前を呼ばないと出てこなくて、私から離れる事はない。


 ……いや何それ。

 くっつき虫かよ。おじゃま虫じゃん。

 これならなくす心配ないね、とかじゃないから。今は投げたいの。投擲武器として使いたいの。求めてるのはそれじゃない。


 はあー。これじゃあ打つ手なしだよ。どうすんだよ。

 このアチチな地獄でゲームオーバーか?

 二戦目にして脱落か?


 それは嫌だ。戦わずして負けるとか一番ダサい。戦って負けるならいざ知らず、いやそれでも嫌だけど、敵前逃亡とかダサすぎて死ぬ。

 自分で負けを認めるようなものだ。そんなの嫌だし、私のプライドが許さない。


 長い刃を付けて、ヒーンを眺める。

 もしかしたら、ヒーンのような武器が各フィールド毎に用意されてるのかも。


 さすがに極悪非道な主催者でも多少の手心は加えてると思いたい。信じてるってわけじゃない。そうであって欲しいって私の願望。人として、最低限の心があると……いやないかなー?


 ま、まあ、武器を探すのは良い案だよね。選択肢は多い方がいいし。それにシズクちゃんの体も見つけたいし。


 ここの敵が鳥だと分かっただけでも大きな収穫だ。対抗手段を得なければ太刀打ち出来ないけど。

 はあ。私も空が飛べたらいいのに。






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