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&dead.  作者: 猫蓮
29/143

&24.地獄だ

「プハァーーーっ!!!」


 生き返ったー!

 完 全 復 活!


 大きく息を吸う。シャバの空気が美味しいぜ!


「ッ! ゲホッ、エッホ!」


 むせた。

 うえー、口の中がジャリジャリするー。最悪ー。


 口の中の砂をペッして、犬のように体を横に揺らして砂を落とす。全然落ちねー。


 これ、モグラの唾がついてたから余計に砂が体にくっついちゃってるよね。ベッタリしっかりついちゃってるよね。すみませーん、シャワーどこですかー?


 うう、目がゴロゴロする。痛くないけど、目を開けれない。擦っても変わらない。


 ここはどこだろう?

 荒野?

 でも砂に埋もれて落ちた感じがした。

 モグラの胃の中?

 倒したからそんなはずはない……と思いたい。

 アリジゴクの下は遺跡でしたとか、ない?


「さめじぃ」


 ハッ! シズクちゃんの声がする。

 良かったぁ〜。シズクちゃんと離れ離れになってない。それだけで全てが良く思える。


「まえ、みず」


「え、ホント!?」


 もちろんシズクちゃんを疑ったりしない。嬉しくて気分が一瞬で上がった。

 膝を曲げて辺りを手で探る。むーん。ほんのり温かい地面だ。


 ……あたたかい?

 温かい!?


 ウソッ、温度が分かる!

 やったやったー!

 また感覚が増えたー!


 地面に触れてる手足が少しだけ温かい。ぬるま湯ぐらいの温かさだけど感じれる。

 嬉しくってつい地面でドラムロールしちゃった。軽快な音だぜ。こんな事してる場合じゃねーぜ。


 タシタシ……ペチ。


 あっ、水だ!

 これでさっぱり出来る!


 早速飛び込も……ん?

 水に触れた手の感覚がなくなった?


 首を傾げる。これ、ヒーンで指を切った時と同じ感覚だ。だから見なくても分かる。指がなくなってる。

 ……なんで?


 やった事。

 水に触れる。

 以上!


 むーん。水は水でも、酸性の水とか?

 それで溶けてなくなったと……?


 え、コワッ。

 飛び込もうとしたじゃん。危ねー。


 そうなると、早急に視界の確保しないとマズイ。

 適当に歩いて酸の水に落ちたら一巻の終わりだよ。


 ……最初の場所が何もない荒野で良かった。何も分からないまま意識だけが漂う事になるところだった。そんなの死んでるのと同じじゃん。いや死ぬより辛いわ。生き地獄だよ。


 とりあえず、眼だけは洗いたい。視界の確保大事。うん。


 一、涙を流す。

 うーん。何もないのに泣けんなー。あっ、シズクちゃんを見た時の感動を思い出せば……ダメだ。出ない。そんな器用な事出来ないよ。


 二、猫のように顔を洗う。

 手の甲を舐める。ザリって砂の食感がする。ウワッペ……最悪。んで、舐めた手に濡れた感じがしない。唾も溜まらない。

 そういえば私の体って血が出ないよね。もしかして体液がないとか? でも涙は出たよね? 涙も体液だよね? なんでだろう。分かんない。


 三、酸の水で顔を洗う。

 やっぱりこれが一番の解決策だよね。触れば溶けるにしても、顔が水に浸からなければいいんだ。手が溶ける前に水をすくって、顔にかける。それですぐに後ろに下がる。うん。シミュレーション完璧。


 周りに地面はある。ちょっとやそっと暴れたって前に行かなきゃ問題ない。オーケイオーライ。未来がかかった大事な瞬間だ。気合いを入れていこう。

 深呼吸。スッハッ!

 よし。


「せーのっ!」


 手を入れて水をすくう。なんかドロみがあって生温かい。何この水キモイ。

 顔にかけると同時に後ろに下がる。わだっ、尻もちついた。支えようとした手がないから後ろに転がる。


 ああ、手と顔が溶けているのか感覚がなくなっていく。うん。危ない水だ。飛び込まなくて良かった。本当に。

 それと、やっぱり頭がなくなると体が動かしずらくなってる。これは覚えておこう。頭は死守。よし。


 おっ、頭が戻ったぞ。体を起こして早速目を開ける。

 開 眼!


「な、なんじゃこりゃー!!??」


 驚いて大声で叫んだ。「りゃー」がやまびこになって聞こえてくる。うわ、恥ずっ。


 ここは荒野でも遺跡でもなかった。もちろんモグラの胃の中でもないっぽい。

 それよりもっと危険な場所。地獄という場所があるなら、それはここの事を言うんだろう。そう思える光景だった。


 黒い大地からは煙が噴き出る。酸の水だと思っていたのはグツグツと煮えたぎるマグマだった。眼前には黒の大地と赤のマグマの二色しかなく、残念な事に赤の比率が高い。見たところ足場が悪いので足を滑らしたら最後……になるだろう事が容易に想像出来てしまった。


「うわー。危なーい」


 危険でデンジャラスな光景を目の当たりにした私の口から出てきたのは超棒読みだった。


 いやホントに危なかったんだよ。緊張感もて。実感しろ。ツルっと足滑らせてマグマにドポンしたら終わりだよ。一生燃やされ続けるんだよ。そんなの地獄じゃないか。ここは地獄だよ。


 そうか。それでこの暑さなら納得……ではないね。何納得しちゃってんの私!?

 ぬるま湯とか生温かいとかの次元じゃないでしょ!?

 グッツグツのボッコボコだよ。全てを跡形もなく燃やし溶かす見た目をしてるよ。温かいで済ましちゃダメでしょー!


 ぜー、ぜー。

 全く、このポンコツめっ。ツッコミする私の身にもなりなさい!

 どっちも私だけど。やれやれ。


 多分だけど、温度が感じ取れるようになってまだ短いから、元の感覚と遠く離れてるのかも。

 感じ取れる感覚のレベルが0から十まであって、温度はまだレベル1って感じ。

 もし感覚のレベル上げが私が強くなる度、つまり攻撃を受ける度にだとすると、上げたらヤバくね?


 本来の熱さを感じ取れちゃったら動けなくなるよね。真夏とかサウナより暑いだろうね。熱中症とか脱水とかになっちゃうよ。


 ……ん?

 そういや体を手に入れてから喉の渇きを感じた事がない。それだけじゃなくて空腹も。

 あれから結構動き回ったけど、一回も気にした事がないのは空腹も渇きも感じなかったから。


 私の五臓六腑ゥ……。

 動いてる? 機能してる? てか体の中にちゃんとある?


 骨がないのは分かってる。体液は微妙だけど血液はない。でも心臓はある。ちゃんと心音聞こえてるもん。

 あれ? でも守らなきゃいけない大事な部分は頭だけ。血がないなら心臓の意味はない……?


 あー謎。不思議な体だ。ミステリーボディ。


 ま、まあ。謎なのは今に始まった事じゃないし、なんだかんだこの体で助かってるからオールオッケー。


 立ち上がって伸びをする。うん。体にざらざら触感が残ってる。

 体を見下ろす。うわー砂がベッタリついてる。やっぱりこの砂をどうにかしたいね。海に入った後はすぐにシャワー浴びたい派だもん。ベタベタするとか気になるもん。入ったのは海水じゃなくて砂の海だけど。


 前のマグマを見る。泡がボコボコ弾けてる。赤色の入浴剤を入れたお風呂だと思えば見えなくない……?

 いやムリがあるな。ヤバい色してるもん。ヤバイ音してるもん。風呂とマグマじゃ全然違うよ。


「…………よし」


 頭を掴んでスポッと取り外す。床に置いて……直火焼きだ。こんがり焼いたお肉のいい匂い漂って……きません。嗅覚ないから。

 首のない私の体がマグマに向かって歩き出す。


「あっ!」


 私が声を上げたのと体がマグマに落ちるのが同時だった。大きく開いた瞳には体が落ちて黒と赤以外の色がなくなった。


 しまった!

 浴衣を脱ぎ忘れた!


「あぁー……」


 落胆が大きい。服はあれ一枚しかないんだよー。これ体が戻っても真っ裸じゃん。露出狂だよ変態じゃん。シズクちゃんの教育に悪いよ。


 ……ん?

 …………んん?


 体が、戻る?

 マグマダイブを決めた体の感覚はもうない。

 ねえ、溶けた体ってどうやって戻るの?


 ああぁぁぁーーー!!??


 しまったーっ!

 どうしようこれ体戻る?!


 頭さえ無事なら大丈夫でしょ! って普通にゴーしちゃったよ。これこのままだったら生首生活に逆戻りじゃん。嫌だー!


 体カムバーック!


 あああぅうあっ!?

 どうしようどうしようどうしよう!?

 ああ焦りで体が震える。頭しかないけど。頭がぷるぷる震えてる。頭だけしかなくなっちゃったよ。私のせいでね!


 お?

 ……おぉぉ?!

 こ、これは……復活の兆し!?


 あ、あぁ、体が……ッ体が戻ってきたぁーー!


「「ほっ」」


 完全に元通りになって胸を撫で下ろす。なぜか浴衣も無事だよ。わーい!

 喜びの舞を踊るより安堵が大きい。マジで焦った。超焦った。ホントに良かったぁ。


 安心するタイミングも同じってシズクちゃんと息ピッタリで嬉し……ああーっ!


 頭を抱える。どうしよう……!

 違う。まずは弁明だ。私の気持ちは後回しでいい。


「あああのねっシズクちゃん! こっこれは……違うの。えっと、その……とにかく違うんだ!」


 シズクちゃんが居る方に向いて、体の前で手を振る。あああ言葉が出てこない。


 なんて説明すればいい!?

 なんて言えば納得してもらえる!?

 唸れ、閃け、私の語彙力ー!!


 砂が気持ち悪くてさっぱりしたかったの、ってそのまま伝える?

 それでマグマに入りました、って正気の沙汰じゃないよ。無鉄砲にも程があるでしょ。実際考え足らずだったし。


 うわーんやめてー、引かないで〜。

 頭おかしい人認定されたら私泣いちゃう。


「シズクちゃん、あのね……っ!?」


 白い目で見られていると思うと恐くて顔を見れなかった。それでも、何も言ってこないのがだんだん恐くなって、恐る恐る目を開けた。

 そこで、シズクちゃんの姿が見えないことを思い出した。絶望の面持ちで目を開いて、視界に映った光景に驚いた。


「シズクちゃんっ、それっ……大丈夫!?」






ポンコツは不治の病だと思ってる。

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