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&dead.  作者: 猫蓮
27/143

&23.沈んでいく

「ぬわぁーーっ!!」


 なんだよプチッて!

 またプチッかよ!

 何回プチッてすれば気が済むんだ。ふざけんな!


 しかも今回はなんか長かったし。いつもはひき逃げのように潰して行くのに、潰して停車してったよ。さらに悪質になったよ。


 そんなに私が憎いか。

 目ん玉ぶっ刺したけど。

 首掻っ切ったけど。


 うん。憎まれて当然だね。

 ごめんね、モグラ。許して許す。


 でもなんでだろう。イライラが解消されてない。

 最後の足掻きでプチッてされたから?

 元凶の科学者をぶん殴ってないから?


 むーん。両方かな。

 うげー、後味最悪。


「シズクちゃーん!」


 こういう時はシズクちゃんの可愛さで癒してもらおう。うん。それが一番だ。


「シズクちゃーん!」


 どこから来たか分かんないからごめんだけど来てー!


「さめじぃ……」


 シズクちゃんの声が聞こえた。一気に心が晴れやかになる。


「シズクちゃん! ね、ね、私、カッコ良かった?」


 シズクちゃんの声が聞こえた方を向いて首を傾げる。


 うぐっ。カッコイイって言ってって強請ってるみたいになった。これじゃあ誘導してるのと同じだ。そんなつもりはなかったのに。ただ褒めて欲しかっただけなのに。聞き方間違えた〜。


「……うん」


 あーん。シズクちゃんの元気のいい返事に癒され……じゃない!?


 元気ない!

 落ち込んでる?

 どうしてっ!?


「シズクちゃんっどうしたの!? どこか痛む? 苦しい?」


 私がモグラと戦ってる時に何かあったのかな。離れない方が良かった? いやでも危ないし。

 いやいやいや。シズクちゃんに手出しは出来ないよ。体がないから見えないし、触れない。空気に触れないのと同じだ。


 それに、ここにはモグラとゾンビ以外誰もいない…………違う。

 いる。

 一人、いる。


 科学者。


 やつならシズクちゃんに接触出来る方法を持ってるかもしれない。そんなのズル……いや卑怯だ。私と離れるタイミングを狙ったのか。クソッ! 本当に忌々しい野郎だ。


 シズクちゃんに何をした。

 ああもう、ムカムカする。


 でも今は私よりシズクちゃんだ。シズクちゃんを元気にする方が最優先だ。

 そう思って、顔を上げる。うっすらぼんやりとシズクちゃんの姿が見えた。


 …………あえ!?


「シズクちゃ……っ!?」


 手を伸ばした直後、地震が起きた。グラりと揺れて、体がよろける。シズクちゃんから視界が外れて、再び戻した時には姿が見えなくなっていた。


 なんだなんだよなんだってんだコンチクショー!

 まだモグラを倒せていなかったのか!?

 ホントにタイミング最悪だなクソッタレ!


 首掻っ切って倒したと思ったのに、まさか地面に潜ってたのか!?

 まだそんな力が残っていたのか!?


 あんな出血……出粉? したからてっきり……え?

 ウソだよね。ウソだと言って。ウソであれ!


 私の願い虚しく、揺れはさらに大きくなった。うわーん!


 どこから来る。出てくる前に地面が下がるはず。どこだ……うん?

 でもなんか……揺れ方が違う?


 モグラは動けなくなるぐらいの縦揺れだったけど、今は左右に振られるような横揺れ。

 じゃあこれ、モグラじゃ……ない?


 モグラじゃないなら、この揺れは何?

 ホントの、自然の地震?

 てことは……荒野全体が揺れてる?!


 早く脱出をっ!

 ……いや、その前にシズクちゃんの体を見つけないと!


 そう思って走り出そうとしたら、前のめりに倒れた。足が動かなかった。つんのめって地面に手をついた。恥ずっ。


 誰だ! 足に捕まってるやつは!?


「え……うえっ?」


 二度見した。

 起きてる事に理解が及ばなくて、初めちょっと見て見ぬフリしそうになった。てかした。


 だって、私の足が埋まってる。

 地面に埋まってる。

 それどころか、手も沈んでってる!?


「ちょっ、ウソッ!? 待って待って待ってー!」


 慌てて手を引っこ抜いて上体を起こす。

 危ねー……って安心してる場合じゃない!

 まだ危機は続いてるよ!?


「ふんぬーっ」


 足を引っこ抜こうとして力を入れても、砂が重くのしかかってるみたいで抜けない。

 ヤバい、もう膝下まで埋まってる。


 手も使って引き抜けば、ズズっと動いて上がる。

 よし、いける!

 反対の足がズズッと沈む。

 それは違う!


 てかなんで、こんな事になってんだよ?!?!


 ここは、こんな土じゃなかった。アスファルトかってくらい硬く固まっていた。

 なのに、今は砂浜みたいにサラサラしてる。それどころか、底なし沼のように埋もれていく。飲み込まれていく。


 一際大きく揺れた。

 今度はなんだと顔を上げると、目を見張った。


 世界が傾いている。

 私が砂に埋もれて体が傾いているんじゃない。

 大地が傾いていた。


「アリジゴク……」


 荒野がアリジゴクのような斜面になってて、その真ん中に吸い込まれるように大地が流れていく。


 ウソでしょ!?


 落ちたらヤバくね? ヤバイよね! 絶対ヤバイやつでしょ!?

 こんなのヤバイやつに決まってんじゃん。


 うわー、体が沈んでいくー。

 って、うわっ!? もう膝まで!?


「ヒーンっ!」


 ヒーンを出して地面にぶっ刺す。クッソ、持ち替えれないのが面倒だ。今は逆手の方がいいのに。


 そうだっ!

 短い刃を取って地面にぶっ刺す。手に力を入れて下半身を引っこ抜く。ぬぬぬーけなーい。


 えーっと、えーっと、こういう時どうするんだっけ?

 あああ焦って、頭が何も考えれない。


 えっと、えっと、波に逆らっちゃダメなんだっけ。ああっ、それは海か。あーもうっ砂も水も一緒だぁー。


 刃を抜いて上半身を捻る。うぐっ、ちょっと体勢キツイ。痛くないけど。体が若干ムリしてるのが分かる。

 両の刃をぶっ刺して力を入れる。力が入れにくい……けどっ、体が動く! ちょっとずつ前に向いてるし、上に上がっていく。


 ぬぬぬーっけた!

 やったぁ!


 喜んだのもつかの間、視界に影がかかる。上というか今は斜め? に顔を向けると絶句した。


 崖が迫ってきてる。崩落した崖?

 これ、落下地点、私危ない。


「っ!」


 急いでその場から離れる。

 でも、思うように進まない。足がすぐに沈んで、砂に絡め取られる。ヒーンを杖のようにして進むけど、引っこ抜くという動作がいちいち発生して煩わしい。


 そして、私の頑張りを嘲笑うかのように崖は落下して私を押し潰す。下敷きになった私は抵抗出来ずに砂の海に沈んでいく。






 * * *



 ザァーッ


 砂嵐のような機械音が響く。


 ザザァー


 ポツポツと白い点が浮き出ては消えていく。


 ザァーーー


 雪が降ってるように見える無数の白い点は、よくよく見れば文字を形成していた。


 ザザッ


 聞き取れない程の無数の声が雑音(ノイズ)となって響き合わさる。


 また新しい文字が浮かび、機械の声が読み上げる。


『地龍ダンゴの消失を確認』


『FK1の消滅を確認』


 ザァーー


 その音もまた、ノイズの海に埋もれ、文字が消えた。






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