&11.念力とか
飛べぇー!
飛べよぉー!
飛んでくれぇー!
なんで上手くいかないんだー。
私にだけ酷すぎないかこの世界。
私が何をしたってんだよ。なんもしてねーよ。
全面隈なく……はムリだけど、出来る範囲で探したけどダメ。助走つけてもダメ。三段跳びしてもダメ。
なぜかピラミッドの周りには崖どころか小高い丘もないから高低差で登る事も出来ない。まあ、それはすぐ落下しちゃうからムリなんだけど。
あれもダメ。これもダメ。ダメダメダメのダーメ。
詰 ん だ。
完全に詰んだわ。何やってもダメだったわ。思いつく限りやったけど尽くダメだったわ。うわー。
ここに来て諦めろってか。そりゃキツいぜ。
ちょっと体探してくるぜーって離れて、また戻ってくるのも厳しいのよ。
ここがどんだけ広いか知ってる?
めっっっちゃくちゃ広いんだよ。
私はそんな大大大冒険はしたくない。確証があるならまだいいけど、お先真っ暗でそれはいやだ。
てか、こんだけ頑張ってるけど、ピラミッドの中に私の体があるのかも不明なんだよね。うわっ冷静に考えちゃったよ。最悪。
まあ、ミイラの体でもあればいいからね。代替出来るかはまた別の問題だけど。その時はその時考えればいいんだ。うん。
今はまずピラミッドに入る事だけを考えよう。マジでスタート地点にすら立ててないから。それ以前の問題だから。
取り急ぎ、はい。頑張れ私。
* * *
………………っ、ムーリーだぁあああ!!!
悲しくて泣きたくて叫んだ。声出ないけど。
夕日に向かって叫びたかった。太陽ないけど。
頑張ったよ。頑張ったさ。めっちゃ頑張って挑んだ。
でもね、人生どんなに頑張っても出来ない事はあるの。私にとってそれが今。
私生首、今ピラミッドの前にいるの。
私生首、ピラミッドの入口に行けないの。助けて。
なんでここには誰も来ないんだよ。
助け呼べないけど。声出ないから。
でもさ、違うじゃん。なんか、こう……違うじゃん。
おーい、誰か居ないのかー。
居たら返事してくれー。
私は上に行きたいんだー。
誰か、助けてくれー。
声さえ出ればって思ってもここには誰も居ない。助けてくれる親切な人はどこにも居ない。
分かってる。ここでうだうだするだけ時間のムダって事は。
分かってるんだ。ムリなもんはどれだけ頑張ってもムリだって事は。
それでも私は諦めたくなかった。諦めきれなかった。
だって言ってた。お宝ってのは夢なんだって。ロマンは追い求める心に価値があるんだって。
正直何言ってんのか意味分からないけど、だからってわけじゃないけど……でも、もう諦めたくない。
私はもう二度とっ、にど、と…………え?
え、えっ、うぇえええ!?!?
浮いてる…………っ、私、空、飛んでる。
な、んえ? うえええ??!!
地面に触れてる感覚はある。でも視覚はどんどん上に行ってる。
エスカレーターでもあるの? ここ。
いやでも何もなかったぞ。びっくりするぐらい、人一人いなかったぞ。
どうなってんの?
え、ホントに幽霊? 実在してる?
……あ、ミイラ。ミイラですか。魂ですもんねー。体ないもんねー。あるあるー。
………………。
いやねーよ!
なんだよそれ!
ふざけてんのかワレぇ!?
えーでもさ、急だったよ。突然だったよ。いきなりだったよ。前触れなんもなかったよ。
私しばらく動いてなかったもん。詰んだーってしょぼくれて停止してたもん。
あっ、入口が近付いてきた。なんか知らんけどラッキー。やったー。
こういうのは深く考えちゃダメなんだ。知らない方が幸せな事しかないから。適当に浅く受け入れるのが一番。
よし。入口着ーいた…………ぬえええ!?
行き過ぎっ、行き過ぎだよ! 戻ってバーック!
入口を通り過ぎて、それでも上に進んで行く。戻ってという気持ちが急いで体が動いた。ぴょんっと跳ねる。
…………えっ。
うっそぉおおおお!!??
不可視のそれは一度離れたらダメだったっぽい。
少し跳ねただけで、私は重力に従って真下に落ちていく。ピラミッドに当たって、跳ね返って、ゴロゴロと転がり落ちる。
階段で突き落とされたようにそれはもう、いいスピードで止まらない。
止まっ、待って、ヤダやめて、いやっ!
痛くないから、視界が固定されてるから、ただただ入口が遠のいて行くのを見ている事しか出来なかった。悲嘆して、私は再び元いた場所に戻った。
…………………………。
は、はは……うそでしょ。あ、あれ……涙が……出ないけど。
これは……あれですか? 一回限りのボーナス特典とかいうやつですか? 初回サービスにやり直しはききますか?
声が震える。声出ないけど。
体も震える。ぷるぷるーって。
悲しいとかで済ませれない。失望が大きい。
だって、そうでしょ。せっかくの機会を自ら棒に振ったんだよ。またとないチャンスだったのに。
あのー、すみませーん。
もう一度上に上げてもらえないですか?
お願いしまーす!
……って言ったところでムダなんだろうなぁ。声出ないし。念力とかないし。
はあー……あ?
お、おぉ、上がってる。上がってるよ!
ありがとう! ホンットに、ありがとう!
あ、うん、そこの入口、空洞のところに下ろしてもらえれば、あっはい、あそこです。そこに……おぉ。
通じた……!? 私の願いが通じてる!?
わーい。やったー。嬉しいー。
ゆっくりと入口の前に下ろされて、私はようやくスタート地点に立つことが出来た。
触覚に変化はなかったけど。
振り返って、そこを見る。うん。何もない。知ってた。
私って視界を動かすのに体を動かす必要がないらしいんだ。球体だからか知らないけど。
前にぐるっと見渡すだけをした時、地面と擦れる音が全くしなかった。私がグイッて視界を動かすと、よく分かんない可動域までは自由に動かせれるんだ。
限界は真上と真下、その周辺。裏を返せば、それ以外なら見る事が出来る。
だから見た。いやだって普通に気になるじゃん。でね、何もなかったさ。
また落ちたらショックだから反応しないように気をつけたけど、ピシッて固まって驚いてた。んで私は何も見てないって静かに前を向き直した。
幽霊かな。幽霊さんかな。あ、ミイラだっけ。
まあもうなんでもいいや。ありがとうございます!




