第1章 1-15 脱獄-1-
ジュディはボロボロの体を引きずりながら、ナベリウスの処分は任せてくれと、こちらに笑いかけた。
僕たちは、緑が溢れる深い森を駆け抜けていく。
「あれか…!あれが出口だ!」
最奥に見えたのは、荒れ果てた壁と、そこから続く階段の先にある扉だった。
僕は走る。体はボロボロなのに、ヨルヨルのおかげか走れる程度に回復していた。
「…で。なんでついてきてんの!?」
「ハハハ!こまけえことは気にすんな!」
「出るまで、手伝えることあるかもよ~」
階段を駆け上がると、目の前の扉が目に入った。その扉は鉄格子でできていた。
これは対策済み、っと。
僕は懐から瓶詰めのスライムを取り出し、鉄格子に流す。
スライムは扉の鍵部分を溶かし始め、間もなくガチャンと音を立てて開いた。
「よし」
扉を開けると、また長い階段が続いていた。
上を見上げると、いつもの光景とは異なる異様な静けさが広がっていた。
「衛兵がいねえぞ、どうなってんだ?」
「作戦Bがうまくいってるのかもな」
「作戦B?なんだそりゃ。」
「今日の交代の商人に時間経過で発情する、スライム爆弾を売っておいた。今頃上で色んなものがとかされて大騒ぎじゃないか?」
「ハハハ!そりゃいい」
本当にそのおかげか、衛兵が少ないのは絶好のチャンスだった。
階段を登り切り、また鉄格子にスライムを使って開け、扉を開けると、見覚えのある景色が広がった。
「ここ…」
「あ~、トーマスが捕まった場所ね。ぷぷぷ」
「そうか、じゃあここ以降はリタも見たことないんだな」
「そうだね、何となくはわかるケドね、その正面の扉を開けば、外に通じる最終関門、大穴ダヨ」
「おい!」
声が聞こえ、衛兵が駈け寄る。
「お前、商人の荷物がスライムまみれで大変なんだ、手伝ってくれないか?」
「はっ、この囚人を収監したらすぐ合流します」
隣から聞き覚えのない声。
衛兵が立ち去ると、その男の姿が代わる。
「ほら、役にたったでしょ?」
「変身できたのか!?」
「ケルピーとニンゲンのハーフだからね」
「は!?」
リタのしてやったりの笑い顔。サキュバスじゃなかったのかよ!?
衝撃の事実。
イカンイカン!今は脱獄に集中しなくては。
「トリの見た目で産まれなくてよかったよホント」とリタがつぶやき、ヴィネは「トーマスしらなかったのか?」と話していた。
正面出入り口を解き放つと、ここがどういう場所なのかがよくわかった。
ここは、巨大なクレーターの中心部だったのだ。
「まっすぐ走りきりゃ、外だな」
ヴィネが屈伸してる。
「お、おい!だからダメだって」
「ああ、わかってるぜ?」
彼の顔は真剣だった。
「なんのために手伝ったと思ってんだ?俺も出たいからに決まってんだろ」
「そりゃ、薄々わかっちゃいたけどさ…」
「なぁに、オメさんが気を咎めることはネエんだ。オメさんは止めた、でも勝手に出てくヤツがいた。それでいいじゃねえか」
「それは…」
その脇に涙目のリタ。
「アタシもいく…」
「だから、ダメだってば!」
「やだーーー!トーマスとお別れなんて絶・対・ヤ!」
「はぁ…………」
心の中でジュディとの約束を思い出し天秤にかける。
ヴィネはともかく、リタとは長い付き合いだ。
もしも僕が食料となり続ける限り、他の人間に迷惑をかけることはないだろう。
「約束してくれ」
「あん?」
「なに?」
「絶対人間を食べないなら、見逃す。僕も大切な友人との約束を破るんだ。せめてこれだけは絶対に約束をしてくれ」
「余裕だろ?俺、魚好きだし」
「ええ!?トーマス以外たべちゃだめなの!?」
「なんで当然のように僕はOKの認識なの!?」
心の中でため息をつく。
「行こう」
僕らは足を踏み出した。
「悲しいです」
冷たい声。
吹き飛ぶヴィネの上半身。
核を握る取る女。
「ヴィネ!!」
「約束って、いいましたよね」
核を注射器のようなものに押し当てる、女。
それを首に押し当て、引き金をひいた。
「ボクとの約束は、なんで守ってくれないんですか?」
「ジュディ…」




