表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/31

第1章 1’-12 決戦!無窮の勇者ガトー

斬撃に地がえぐれる。

その刃が空気を切り裂く瞬間、三人の姿はまるで風のように素早く動いた。

ユリエルが施した風魔法がその身体を守る。


生きてるか!?とララフィの声。

しかし、次々に迫る斬撃をかわすばかりで、攻撃には転じられない。


「嘘だろ!?3対1なんだぜ!?」


ジュディの声が、状況の異常さを叫ぶ。


ガトーのギリギリの隙を突いて投げたララフィの投げナイフを避け、ユリエルの剣をいなす。

背後から迫るジュディの斬撃を受け止め、鳩尾に肘鉄を食らわせて阻止。


「手始めに一人、冥府へ送るとしよう。」


その言葉とともに、斬撃がジュディを襲った。


「痛ぅ…、大丈夫ですの!?」

「あ、ああ。ありがとう姫様」


ユリエルが間一髪で割り込み、斬撃をはじく。


「多少は腕が立つ」

「民を守る立場ですから」

「が、未熟」


腹を蹴られ、ユリエルが地面に転がる。


『固有魔法、狂刃』


ガトーが剣を掲げ、その手から放たれる斬撃が三人を切り裂いた。


「命を奪わぬ程度に斬り伏せた。もう一度だけ問う。この聖域に何用だ。」


ユリエルは、定まらない視界の中でララフィとジュディを捉える。

――生きてはいる。


「答えたら見逃してくれますの」

「否、貴様らに逃れる道理無し。ここで全員始末する。」

「なら答えるわけ、ないですわね!」


足払いを仕掛けても、当然かわされる。

――連撃!

ユリエルは続けて剣を振る、またこれもいなされる。


「死ぬわけにはいかないんですのよ!」


体をひねり、抉れた石畳の砂蹴り上げガトーの顔にかけ、距離を取る。

目つぶしになったかと期待をしたが、全く意に介していない。


「ならば、答えぬことを悔いしながら、死ね。」


ガトーが剣を掲げる。その姿勢は、先ほど三人同時に斬り裂いた時と同じ。ユリエルは、じっと剣を下ろす。

ユリエルは剣を下ろす。


「口を開く覚悟が決まったか?」


ユリエルの唇が三日月のように弧を描く。


「ここで終わるくらいなら」


首に『エーテルゲート』を押し当てる。


「人でなくなったっていい」


彼女は魔獣の核を無理やりに流し込み始める。

血管が浮き上がり、瞳からは血の涙が流れ始める。


「ああぁぁぁあああああああ!!」


傷ついた体は不自然に肉が治癒を始める。

異様な雰囲気にガトーは彼女を切り裂く。

だが、その斬撃は地面を削り取るにとどまり、ユリエルには届かない。


「案外遅いんですのね」

「っ!」


ガトーは剣を振るい、その刃がユリエルを捉えんとするが、

彼女は難なくそれを避けてみせた。


距離を取り、ユリエルは剣を捨て、右腕を突き出す。


――これは、誰の魔法?


「固有魔法、『召喚』」


右手の先から、突如として風が巻き起こる。

それはやがて暴風となり、ガトーはその圧力に耐えられず、地面に剣を突き立てることでなんとか立っていられる。


「来い、異界の剣」

「貴様、何をしている…」


暴風は紫雷を伴い、ユリエルの右手に、暗く、禍々しい大剣の柄が姿を現す。

無理やり引き抜くと紫雷が地を、壁を焼く。

その刀身が徐々に表れるそれは、剣というにはあまりにも禍々しく、「生物」と表現するに相応しかった。

刀身には眼球。ギョロギョロと周りを見渡す。

刃は赤く、血のような液体を垂れ流す。


「ガルガーノ」


名を呼ぶと、轟音と共にユリエルの目の前の景色は外とつながり、ガトーの姿は消えた。


*************************************


「いやぁ~!大活躍だったネ!ユリチャン!」


階段の上から拍手と共に聞き覚えのある声が聞こえる。


「ヴォルハウス」

「あのガトーをやっつけたんだよ!?もっと喜ばないと!」

「貴方、わたくしたちを売りましたのね」


胡散臭い男は目をパチクリさせる。


「なんのことぉ?」

「言ったでしょう、貴方は嘘が下手だと」


この部屋の床に転がるエーテルゲートを彼女は見逃さなかった。


「バレバレだよネ〜。ここに来た時点で隠す気もなかったケド!でもユリチャン、それは正解じゃない」

「…」

「売ってないよぉ!ちょ~っとだけ、あっち側に協力しただけ。オジさん言ったでしょ。オジさんの評価が高まるのが好きだって。戦いの無いこんな世の中じゃオジさん評価されないも~ん!ユリウスには悪いけど、だから…ネ?」


その身勝手さに、ユリエルは嫌悪をあらわにする。


「オジさん的にはどっちが勝ってもよかったんだ。これは本当だよぉ?」


ユリエルはヴォルハウス卿の胸ぐらを掴み、無言でその身を引き寄せる。


「オジさんを殺す?いいよォ!オジさんこんな人間だから、いつだって死ねる!」

「お望みとあらば、わたくしが戦争なんて、いくらでも起こして差し上げます」

「え…?」

「わたくしは、アクーティカも、フォグルも全て支配する。全て統治する。そのためなら、お前のようなゴミも使い潰す」


その眼には、赤黒く、濁った光が宿っていた。


「女神様…?」


ヴォルハウス卿は興奮しながら月光に照らされるユリエルに跪いた。


*************************************

運良く開いた大穴から、負傷した二人をヴォルハウス卿に担がせ、ユリエルは町へと向かった。

馬車を借り、ララフィとジュディの治療を続ける。ユリエルの治癒魔法と応急処置が的確で、医者は二人が命を取り留めるだろうと太鼓判を押した。


彼女ら二人には申し訳ないと思いながら、荷台に出来る限り休める環境を整え、馬車を走らせる。


「ユリエル様、これを」

「呼び方、気持ち悪いですわ。あからさまに態度を変えないでくださる」

「じゃ、ユリエルチャン!これ!」


書類の束だ。差し出されたのは、書類の束だった。


「オジさんの事バレなかったら、これが机に置いてあって、ヒントになる予定だったんだけどネ」


あの立ち回りでバレない想定があったのだろうか、と心でため息をつきながら書類に目を通す。


『魔種の管理について』


「獣王、ナベリウス…?わたくしの管理している1層の管理者ですわね」

「そう、彼が面白い固有魔法を持っていてネェ…」


『《《魔種》》統率』


「どう?これがあれば、ユリウスも安心して王位をユリエルチャンに譲れるんじゃないかなァ~」

「…」


――確かにここに書かれている内容が本当であれば、わたくしが望む魔力の管理も。最悪の場合の魔種廃滅にも使える…?


「本っ当、性格悪いですわね…」

「お褒めいただき恐悦至極。んふっふっふ」


全てこの男の掌の上で踊らされているようで癪だが、グレイヴィア王国に戻った後の動きは決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ