第1章 1-12 別れ
うん。こんなもんか。
「スライム瓶」「たいまつ」「新調した剣」エトセトラエトセトラ
作戦の大枠は決まった。
あとは、アイツらがどこまで協力してくれるか、だな。
「なぁ」
「いいよ」
「まだ何も言ってないんだけど…」
「いいこと思いついちゃったから。えへ」
リタのニマニマした顔を見た瞬間、嫌な予感しか浮かばない…。
「ヴィネにも話してくるよ」
「アタシもいくー」
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「あ?元々そのつもりだったんだが…」
「そうなの?」
魔族って思い切りがいいというか…。
「ちょっとした因縁もあるしよ」
「でも、お前たち、僕が脱走したところでなんのメリットも…むしろ怒られたりするんじゃないのか?」
「まぁーこまけぇ事は気にすんなって!」
笑いながら背中を叩く。
「言っとくが、お前らは絶対出ちゃだめだからな。タブーなんだから」
「わかってるって!ガハハハ!」
「わかってるわかってる~」
…本当に嫌な予感しかしないが、脱獄寸前でコイツらをうまくやり過ごさなきゃ…。
確実にここに留めることまで考えてたら、いつまでたっても脱獄できそうにないし、まずはナベリウスの打倒に集中しよう。
「あとは…、さすがに挨拶くらいしておくか」
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「なにっ…?もう脱獄を…?」
ジュディが目を見開く。
「いつ?」
「来週の商人の交代の日」
彼女は静かにうつむいた。
「世話になったし、せめて挨拶をね」
「…無駄死にするだけだぞ」
「かもね」
「じゃあどうして!」
彼女の瞳には涙がにじんでいた。
「自由になりたいんだ」
「自由…?」
僕はようやく自分の気持ちに気づいた気がした。
「山にこもってたって言ったけどさ。嘘なんだ、アレ。実はずっと病気で…ようやく治ったと思ったらここに入れられちゃって…。自由に生きていきたいんだ。この新しい世界で!…自由に動き回れることが、幸せなんだよ」
「自由…、自由か。ボクには縁遠いものだね…」
「わかってほしいとは言わないし、ジュディが脱獄を許せないって、ここでぶつかるならそれもしょうがないって思ってる。でも僕は行くよ」
「…わかった。でも一つ。一つだけ約束してくれ」
彼女は真剣な眼差しで、僕を見つめた。
「魔種に脱獄を手伝わせるのはいい。でも、必ず…必ず、魔種だけは外に出すなよ。」
「ああ、ありがとう」
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リタの家にて、ヴィネとリタに作戦の打ち合わせをする。
「ヴィネ、今の僕らの実力を数字に例えてみてくれないか?」
「数字ィ?あぁーそうだな。俺が50、真ん中とするか。トーマス、オメェは~」
デレレレレと口ずさむヴィネ。
「ま、大目に見て15ってところだな」
「アタシは~?」
「20」
「よっしゃ!トーマスに勝った!」
「…ナベリウスは?」
「100だな」
予想はしていた。
「ま、全然届かねぇってわけじゃねぇ。集団戦ってのは、10と10と10を合わせて30になるもんじゃねぇ、連携次第で100にだって200にだってなるぜ?」
「そういうの聞けるだけでも、今は気がまぎれるよ…」
「だがな、相手も集団だぜ?真正面からぶつかれば、魔獣をわんさとつれてくるだろうよ。どういう作戦でいくんだ?」
「まずは僕が見つかって、おもいっきり走って逃げる」
「オイオイ、いきなり破綻してるぜ、アイツ、本気出したらウマより速えぞ」
「そこはリタの石化で動きを鈍らせる」
「ええ!?そんなにずっと使ってられるかなぁ」
「来週の決行まで練習しよう」
「ん~疲れるんだよねえ。魔法つかうと…まあ、毎日食べさせてくれるならいいケドォ」
「うっ…わかった」
思わぬ交換条件に、げんなりする。
「で、走ってどうすんだ」
「まずは魔獣とナベリウスを分断する。出来るだけ、長い距離を走ってヤツの固有魔法を出し切らせて、魔力切れを狙う」
「まあ、悪かねえな。しかしアイツ魔力の底なんてつくのカネェ。四指の一指だぞ」
「ここはもう根性で逃げ回るしかないな…」
「オイオイ…この次の作戦聞くのが心配だぜ…」
ヴィネが肩をすくめた。
「ハァ、その作戦に俺を組み込みな。俺の固有魔法を教えてやるよ。『再生の炎』つってな、固有魔法発動中は死なねえんだ、俺。逃げ回って体力が尽きたら、バトンタッチな」
「! 助かるな、それは」
「俺だって成功してほしいからよ、それよりも嬢ちゃんが石化してるって気づいたらアイツ嬢ちゃんを狙うと思うぜ?アイツ脳筋だが、そこまでアホじゃない」
「アタシ飛べるから大丈夫っしょ!」
「アイツも跳べるぜ」
「うそ!やめやめ!石化はナーシ!」
「その時は僕たちで死ぬ気で守ろう」
「ガハハ、また根性かよ!脳筋作戦だ、こっちが。ガハハハハ。まあいい、続けな」
ヴィネからすれば作戦とも呼べない出来なんだろうなぁ…、と心で悲しむ。
「魔獣と分断している間、出来るだけヴィネには魔獣を削っておいてほしい、万が一固有魔法が再発動されたら怖いしね」
「応、それは正解だ」
「あとは、落とし穴をつくって、そこに落とす」
「お、落とし穴ァ?アハハハハ!ひっかかるかよ、そんなん」
「ただの落とし穴じゃない。スライム落とし穴だ」
「あー…、何となく読めたぜ。そういうことか、それなら、可能性はあるかもな」
リタは「?」とこちらを見つめる。
「ってことで、今日から決行までの一週間はスライム収集だ!」




