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第1章 1-10 説得

「あーだめだめ。ぜんっぜんなってネエな。」


あれから、ジュディの忙しそうな日はヴィネに稽古をつけてもらっている。


「徐々に強くなってきちゃいるが、そんなんじゃ100年経ってもナベリウスにはかてネェぞ」

「そんなこといったって、どわ!」


足をかけられ、あっという間に地面に転がされる。


「うし、考え方を変えるか」


ヴィネは軽く息を吐きながら、地面に腰を下ろす。


「対ナベリウス戦に絞って、そこに勝ちに行く方法を考えるか。まっとうに強くなるの待ってたら、本当に100年かかっちまう。そっちの方が、現実的だ」

「絞るって?」

「なぁに、簡単な話よ。女を落としたい時、は闇雲にかっこよくなるんじゃなくて、好きな子の好みに合わせるだろっチュー話だ」

「理屈はわかるけどさ」


ヴィネの言うことを理解しつつも、首をかしげる。


「オメさんが、ナベリウスの事どれだけ理解してるか聞かせてみな」

「ええと、頭が三つで腕四本、足は普通の剣じゃ斬りかかっても歯が立たない…これくらいかな」


自分で言ってて勝てる気がしなくなってくる。


「うんうん。で?」

「でって、そんだけしかわからないけど」

「かー。そうだよなぁ。オメさんモテねえだろ」


なにおう。いちいちカチンとくるヤツだな…。


「おい、嬢ちゃんはどうなんだい」

「あ、石化パラライズはちょっと効いたっぽい!」

「ほらな、まだあんじゃねえか」

「そういう意味なら…あ、なんかトカゲ頭は炎吐いてなかったか?」

「そうそう。相手の能力を今あるヒントから、最大限分析しろ…と言いたいところだが、今回は出血大サービスで俺が答えをおしえてやるよ」


ヴィネは地面に素早く図解を始める。その動きが思いのほか器用で、見ているとなんだか感心してしまう。


「基本的なスペックとしては、ヤツの属性は「火」だ。トカゲ頭が炎吹いてたろ」

「他の頭も吹いてくるってこと?」

「そりゃねえな。おめえら口から火吹けねえだろ。相当ヘンテコな訓練すりゃ別だが、少なくとも人間の頭の部分は火吹かねえだろうよ。ワンコロの頭はしらん」


図のトカゲ頭が火を噴く。


「んで次は腕だ。四本の腕に持った剣で繰り出される剣技は間違いなく超一流。ニンゲンの、かなりやるって嬢ちゃんがやられてたんだろ。そんじょそこらの腕じゃ即オダブツだな」


その言葉を聞き、今の剣技の修練の先、ナベリウスの剣技に届きうるのははるか先だと再認識する。


「まあ、特訓自体無駄にはなってないけどな。運良けりゃ前よりは受け流すくらいはできんだろうよ。そいで、汎用魔法は…そうだな、炎系統の魔法は全部使って来ると思えばいい。火ぃ吹いたり、力の増強したりな。重要なのはこっからだ」

「固有魔法…か?」

「そう!よくわかってんじゃねえか。アイツの固有魔法、くらったか?まぁ話聞いてると使える状況じゃなかったろうが」


ガハハと笑うヴィネに、勿体を 付けず教えてくれという。


「アイツは『魔獣統率』の固有魔法を持ってる。周辺の自分よりスペックの低い魔獣は強制的に支配下に置くことができる。ヤベェ能力さ」

「…そうか」

「気づいただろ?アイツの周りに魔獣がいねえとなんの意味もねえのさ。ま、だからこそブチギレて本体が余計パワーアップしちまったとも言えるケド」


ナベリウスの絵の周りにヌエの絵を描き加える。


「ヌエやら他の魔獣も混ざって固有魔法の嵐くらってみろ。もうオダブツよ」

「前のナベリウスとの戦闘は、本当に運が良かったんだな…」


やつが魔獣を集める事をせず単独で戦ってあの戦力。

これが全盛期は多種多様の魔獣を率いて、戦っていたかと思うと…背筋が凍る。


「ナベリウスの恐ろしさがわかったか?じゃあ、まずどうすべきかわかるよな?」

「戦うなら、ナベリウスを単独にしなきゃいけない。」

「正解だ。そこを前提にしないと、監獄ここにいる奴は誰もアイツには歯が立たないだろうよ」

「ヴィネ、アンタでもか?」

「俺ァ、そこそこ止まりの実力の魔族だぜ?全然無理だ。話聞いてる限り剣士の嬢ちゃんより俺ァ弱いぜ」


ナベリウスをどうやって孤立させるか、それが一つの鍵だ。それにしても、どうやってあの怪物を倒すか…頭が痛くなる。


*************************************


「リタさんよぉ」

「んー?」

「出口を出た後ってどんな感じか教えてくれないか?」


リタは満足そうに寝転がりながら、のんびりと答える。


「鉄格子を何度も開けて、地上に出たかな。でも、アタシが出たのは‘上’の施設で、本当の外には出てないんだけどね。」

「他に何かあったか?覚えてる範囲でいいから。」


リタが少し考えるように顔をしかめる。


「ええ…んーと、あとは見回ってる人は思ったより少なかったかな。階段を結構長い事登って行ったんだけど、その間でも一人もすれ違わなかったかな。地上についたときに出入り口に2人衛兵っぽい人がいたくらいね」


思ったよりも警備は薄いんだな。

10年間脱獄者がいなかった故なのだろう。


「ほんとに脱獄するの?」

「そりゃ、ね」

「…だ」

「え?」


小さくリタがつぶやく。

次の瞬間。


「やだやだやだやだ!!」


まるで駄々をこねる子供のように暴れ出し、僕に飛びついてきた。


「やだー!」

「ワァ!!」


僕に抱き着き、食事された。





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