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第1章 1-6 ナベリウス戦

「くっ…!」

ジュディは全身に全力を込め、ナベリウスの凄まじい剣戟をかろうじてさばく。

その剣戟はまるで大地を切り裂くような重さで、どこか幻想的な力を感じさせた。

攻防が繰り広げられるたび、ジュディの体力は少しずつ、確実に、削られていく。


三つの頭、四本の腕、太い大木のように屹立する足。

その姿は、もはや既知の生物の域を超えていた。

まさに、怪物と呼ぶに相応しい。


せん!!」


ジュディの剣が煌めく。

しかし、その一閃もナベリウスの四本の剣によって軽くいなされ、無情にも空を切った。

遠くから響く金属音が、僕の意識を呼び戻す。

目の前に広がったのは、あまりにも絶望的な光景だった。


「ジュディ!」


ナベリウスの巨大な手が、彼女を握りつぶすかのように締め上げていた。

必死にもがくジュディの姿が、僕の目の前で歪んでいく。


「トカゲ野郎!」


僕は思わず剣を抜き、ナベリウスへと斬りかかる。

しかし、その刃が彼の硬い鱗のような皮膚に触れる前に、長い尻尾が薙ぐ。

僕はあっという間に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


「ボクはいい、逃げろ…」

「ほっとけるか!」


もう一度、意を決して剣を握る。

だが、今度はナベリウスの太ももに振り下ろすも、剣は無惨にもガラスのように砕け散った。


「そんなのアリかよ…」


「鬱陶しいぞ」

「うるさいな」

「ウザい!」


僕もまた、首をつかまれてナベリウスの力で宙に持ち上げられる。

ジュディはぐったりと、完全に気を失っている。

この怪物に、どうやって勝てばいい…?


だめだ、ここで僕らは……

意識が遠のく。


〈【〕】」〉【〕】〈【〕】」〉」「〔【〕】」*「【〕】」「【〕*】」〉」「【*【〕】」「〕】」〉〈【〕】」〉


〔「〈【トーマスに何してるの〕】」〉


その言葉はトーマスの口から放たれる。


「え?」

「な?」

「は?」


突然、ナベリウスの腕が真っ黒に朽ち、消え去る。

ジュディが地面に転がる。

ナベリウスの腕は、すぐさま再生を始める。


〔「〈【お前、失敗作…?〕】」〉


「まさか」

「あなたは」

「お前は!!」


〈【〕】」〉【〕】〈【〕】」〉」「〔【〕】」*「【〕】」「【〕*】」〉」「【*【〕】」「〕】」〉〈【〕】」〉


意識が、飛んでいた…?


僕は再び意識が遠くなるのを必死で振り払う。


――まずい!


ナベリウスの拳が眼前に迫り、とっさに身をかわす。

その後の攻撃が怒涛のように続く。


「いまさら」

「何をしに来た」

「裏切者が!!」


ナベリウスの様子がおかしい。

繰り出される攻撃が取り留めもなく、混乱したような動きだ。

闇雲にあたり一帯を攻撃している。


石化パラライズ!」


ナベリウスの動きがわずかに鈍る。

僕はジュディを抱え、その場を離れた。


「こっち!」


聞き覚えのある声が、暗闇の中で響く。


「リタか!助かった!」

「急いで!」


*************************************


必死に森を駆け抜け、ナベリウスとの距離を取る。

ジュディを背負い、リタの背中を追いながら、僕は一度も振り返ることなく、ただ必死に走り続けた。


やがて、森の中にひっそりと佇む木造の家が見えた。


「アタシの家。男子いれるなんて初めてなんだから」

「そんなこと言ってるキブンじゃないんだけど…」


リタに案内されて家に上がる。

寝室に案内されると、そこには二つのベッドが並んでいた。


ジュディを空いているベッドに寝かせ、ふと横目で隣のベッドに目を向けると、

そこにはリタにそっくりな少女が眠っていた。


「妹」

「そっくりじゃないか」


だが、その少女は眠っているというよりも、どこか異様に静かだった。

気になった僕が声をかけると、リタが小さなため息をつきながら言った。


「死んでるの」

「は…?」


その言葉は、僕を凍りつかせた。


「あ、ごめん。ビックリするよね。アハハ」


リタはちょっと困った顔をして、鼻を掻きながら言った。


「10年前の戦争のゴタゴタでね。そこで。お医者さんは、もう魂はここにないって言ってるんだけど。

諦めきれなくて、ずっと…。……アハハ~重くなっちゃった」


リタの言葉に、空気が重くなる。

その言葉の先に、何か重い過去が隠れていることがわかる。


少女の腕には奇妙な器具が取り付けられており、そこから伸びる管が点滴のように繋がれていた。


「この話は終わり!助けたんだし、ちょっと食べさせてよね!」

「リタ。キミの燃費が悪いって言ってたのって…」

「カンケー無い!無い!………………んーごめん。やっぱ今日はお腹すいてないや」


リタは部屋を出て行った。

僕は、少女の横に立ち、小さなカーテンを静かに閉めた。


*************************************


気がつけば、いつの間にか眠っていた。

ベッドの脇で、無理に体を横にして寝たせいか、妙に体の節々が痛んでいた。


「ん…あれ、ここは?」


ジュディも目を覚ます。


「友達の家だよ」

「トーマス…そうか、ボク負けちゃったんだね」


ジュディは静かに下を向く。


「その…落ち込むなよ。相手が悪かっただけだ」

「そっかぁ~!ボク負けちゃったのか!」


その瞬間、ジュディの顔がぱっと明るくなる。


「それってまだボクに強くなる予知があるってことだよね!どこが悪かったのかな!?初手の斬り込みから見直そう。そもそも斬撃の威力が足りて…いやいや、彼の目線はボクの剣戟をすべては見切れてなかったし、もしかすると剣を見直せば攻撃が少しは通るか?いや、もしかして…」


「元気そうで何より…」


ジュディはアレか?コレか?と楽しげに自分の剣技を反省していた。


「おはよぉ~」


そのとき、寝ぼけたリタが部屋に入ってくる。

ジュディはリタを見ると、反射的に一閃。

だが、剣が無いことに気づき、舌打ちをした。


「トーマス、剣を」

「待て待て、味方だ!」

「味方?彼女は魔族だ」

「ねえ~トーマス、お腹すいたぁ」

「トーマス!早く剣を!」

「だあああ!一回落ち着け!!」


*************************************


ジュディはベッドに座り込んでしかめっ面をしている。

リタもまた、むくれて僕の背中に抱きつき、その結果、僕は痛みに耐えながら彼女に言葉を投げかけた。


「トーマス、呆れたよ。まさか魔族の肩を持つだなんて」

「残念でしたぁーアタシは魔族じゃありません~」

「じゃあ、鼓動の音を聞かせてみろ。魔族に心音はない」

「生まれつき心音はしないし、やです~」

「そんな人間がいるか」

「べー」


さっきからずっとこの調子だ。


「なあ、リタ。あうっ。君は、魔族じゃないのか。あべべべ」

「ん~半分は魔族なんだけど、お父さんはニンゲンだよ。だから半分ニンゲン!」


なるほど、そういう事情だったのか。


「トーマス、その。昨日は助かったよ。君がいなければボクは…」

「おお!あべべべべべ、気にすんな!」

「監獄に戻るよ。あの化け物に勝てるように、もう一度自分を鍛えなおす。次あんなことになったら、キミを守れるようにね」

「そうか、ばばばばば。あとから僕も戻るからまたたたたた、稽古つけてくれれれよな」

「ああ。」


ジュディはリタを睨む。


「宿の礼とトーマスに免じて、今日だけは見逃す」


そう言いジュディは出て行った。


「感じ悪ぅ~」

「あのー。そろそろおなかいっぱいになってない?」

「まだかな~」


なんだかいつもより長い気がする。

なぜに!?

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