監獄 檻
「こんにちわ。今日も朝が来ましたね。」
あぁ、地獄の始まりだ――
ここは監獄「檻」だ。
檻は人体について研究している「闇の監獄」と呼ばれていて、見るに耐えない拷問などが日々行われている。
拷問部屋の照明は常に紫色で、監獄の至る所には液体に浸かった首なしの胴体があるという――。
「おはよう。編。」
「おはよう。」
私に挨拶をしてくれたのは、友人である優香。
優しい香りと書いてゆうかと読むのだが、漢字の通り優香はとても優しい良い匂いがする。
独房から次々と共有スペースに集まってくる「囚人達」。
共有スペースほ敷物が真ん中に置いてあるだけの広い空間だ。私達は共有スペースにある敷物の上に座ると、「管理者」を待つ。
しばらくして、管理者が現れると、管理者はニコリと笑って口を開いた。
「おはようございます。皆、今日も時間前に集まれて偉いですね。」
ニコリと口は笑っているが、目は笑っておらず、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「でも、残念ながらお寝坊さんが一名いるようです。」
残念です。と言い眉を下げる管理者、管理者は寝坊した囚人を皆の前に呼ぶ。
「この子は昨日入ったばっかりなのに寝坊をした、悪い子です。これから、仕置部屋に連れていくので皆さんは刑務作業をしながら私たち管理者を待っていてください。」
それじゃあ、作業開始!の合図で一斉に刑務作業場へと向かう。
共有スペースの扉をくぐり、薄暗い道を通って刑務作業と書かれた部屋に行く。
刑務作業室に着くと管理者が鍵を開け部屋の中へと通される。
皆で黙々と作業をしていると、悲鳴が聞こえてきた。
怯え、震えている者もいるが大体の人は顔色を変えずに作業をしている。
なぜ、寝坊した囚人と見られる悲鳴が聞こえるのに顔色一つ変えないかって?
それはね、「監獄では悲鳴が聞こえることは日常だからだ。」
だから、私たちはもう悲鳴になれている。
慣れていると言っても震えはする事もある。
体が震えるたびに私はまだ、人間なのだと思い知らされる。もう、いっそ壊れてしまえばいいのに、と願いながら私は刑務作業を淡々と進めた。
―――――――――
ここは、監獄檻。
人体について研究をしている監獄だ。
そんな、闇が深すぎる監獄に入れられているのは何の罪も犯してはいない人達。
じゃあ、なぜ捕まってるかって?
それは、檻に収容された主人達は皆、政府の敵になると考えられたからだよ。
だから、彼女たちは収容された。
この、絶対に脱獄できないと言われている監獄にね。
あぁそうだった。
私の自己紹介をしていなかったね。
私はこの物語の案内人。
「V」だ。ヴィーと呼んでくれ。
これから、編たちの世界に私が皆さんを案内しよう。
この物語を見るうえで「編」達が無罪なこと、そしてこの監獄が島の上にあるということを覚えていてほしい。
―――――――――
「刑務作業は終わりだ。」
管理者の声で片づけを始める囚人達。
今日制作した商品を袋に詰めると、管理者に作業で使った道具を渡した。
「今日使った道具を手元に持っていないか確認する。」
管理者の後に付いて行き、機械の中へと通る。
「ピッピッピッ」
大丈夫だ行って良し。と言われ目の前にある扉を開けた。
扉の奥は照明がほとんどなく薄暗かった。
この道は、共有スペースの手前にある独房に続く道だ。
監視カメラはなく、脱獄用の道具を隠すのに良い場所だ。
壁の間にある僅かな隙間に糸を投げ込む。
さっきの機械は金属類しか検知出来ないのは仲間が命を張って調査したので分かっている。
手に隠し持っていた糸は短いが、短いのを何本も隠しているので繋げればかなりの長さになるだろう。
扉が開いた状態になっているが、近くに管理者はいないので恐らく今の投げ込む動作も見られてはいないだろう。
薄暗い通路を抜け独房の前に出た。
独房から出てきた囚人達に挨拶をすると、自分の独房へと向かった。
ギィィィと音を立てて扉を開くと私は壁の元へと駆け寄った。
「うぅ、、、」
泣いているふりをしながら壁に少し埋まった細い針金を取り出した。
針金を取り出すと壁に埋めてある糸を取り出し、細い一本になるように裂いていく。
部屋には監視カメラがあるが、泣いているふりをしているので恐らくは大丈夫だと信じたい。
実は、前に壁に頭をつけながら泣くふりをしたことがある。
何回かそれを繰り返したんので、監視カメラの向こう側では「あ、また泣いている。」
と思われている。はずだ。
糸を裂いた後壁に戻し針金を埋めると私は目元を袖でゴシゴシと拭いた。
あとは、「皆に会いたい。」と泣きながら部屋を移動すれば完璧だ。
糸を裂いて細くする作業は今後、何か細かい作業をやる上でも経験を積めるし、棒などに括り付ける物があった時も役に立つはず、と思ってやっている。
「【000番】、出てこい。朝食だ。」
あぁ、そういえばまだ朝ご飯を食べていなかったな。
まだ、ベッドに座りたい欲を抑え込み食堂に向かう。
共有スペースから少し歩いたところにある食堂には人が少しずつ集まっていた。
「【000番】」
囚人番号を言うと食事がトレーが通るギリギリの高さにくり抜かれたパネルの奥から出てきた。
「ありがとうございます。」
食事を受け取ると席に向かい食べ始める。
ご飯を食べてる時間も脱獄に向けての考え事をする。
食事を食べ終わる頃には食堂には囚人が多くいた。
食事を返却スペースに置くと、共有スペースにある敷物に向かった。
「あ、編じゃん。」
「優香。」
優香が先に敷物の所にいた。
隣に腰を下ろすと優香に小さい声で今日の成果を伝える。
「うん。分かった。」と小さく頷く優香にあとで作戦会議をしようと伝える。
頷くのを確認した私は、優香とゲームの話をしだした。
「ここの、セーブポイントが中々見つけられなくて、苦戦したんだよね。」
「分かる!そこ、私もめちゃくちゃ苦労した。」
―――――――――
皆さん、Vだ。
二人の会話は普通の女子の会話だが、ここは監獄。
彼女達の笑顔の裏には脱獄の文字が付いて回っている。
少しずつ、少しずつ用意した計画。
その計画がばれないように、慎重に行動する彼女たちは、未成年とは思えない。
私が「監獄 檻」に居たら初日でギブアップしていただろう。
おや、敷物に食事を食べ終わった方達が集まってきましたね。
しばらくの間、私は彼女達の様子を静かに見守りたいと思う――
―――――――――
「皆。良いかな?」
親指を上に突き出した形――グットの形を私の手は取る。
このグットは会議の開始の合図だ。
「明日、ダクトの中を調べことにした。行きたい者は挙手をして。」
私が言うと一人、手を挙げる者がいた。
「カディカ。君ともう一人・・・」
ブロンドの綺麗な髪に整った顔のカディカ。
彼女以外が手を上げないのを確認すると、私は覚悟を決めた。
「じゃあ、カディカと私が行く。万が一の時のために優香にリーダー交代の準備をしてもらおうと思う。」
「分かったわ。」
引き締まった表情の優香に後で独房の前に来てくれと伝えた所で、管理者が来たので今日はお開きとなった。
「優香、これが何かあった時のハンドサインだ。」
私がオリジナルで考えた(既に存在しているかもしれないけど。)親指を曲げ、人差し指に付けるハンドサインを優香に教える。
「分かったわ。情報を。」
「情報は、、、」
今まで、私がやってきたことの引継ぎを終わらせると独房に戻り、勉強を始めた。
教科書を開くと、ノートに内容を写す。
実は、この作業も内容を素早く暗記するための訓練でもある。
「ふぅ~。」
内容を写した後、内容を暗唱する作業を終えると独房の中で筋トレを始めた。
「1,2,1,2,」
腕立てを無心でしていると、扉がノックされた。
「はい。」
短く返事をすると服で汗を拭った。
「入るぞ。」
扉を閉めると管理者は口を開いた。
「お前の希望していたシャワーだが、明日入れることになった。他の囚人にも入りたい者がいないか確認しといてくれ。話は以上だ。」
扉が閉まったのを確認すると私は「ふぅー」と息を吐いた。
タイミングが良すぎる、裏切者が居るのを疑うぐらいのタイミングだ。
でも、これでダクトの探索をシャワーの時間に出来る。
個室シャワーを希望したのは、何かカメラの無い空間で作業が出来ると考えたからだ。
当日、持っていく物の確認をして、服に隠せば当日に準備は完了するので用意するものは無いと判断して共有スペースに向かった。
「カディカ!」
私が声を掛けるとカディカはふわりと笑って「はぁい。」と返事をしてくれた。
「やっぱり、カディカのすべての行動に癒されるわ~。あと、明日シャワーに入りたいって言って。そこで実行しよう。」
「ふふ、分かった。それにしても、嬉しいわ。ありがとう。」
今度は甘えている猫のような表情をするので、私の心はカディカに癒された。
「本当に可愛い。あ、そういえば優香は?」
「あ、さっき自習室にいたわ。」
「そうなんだ。じゃあ、私も行こうかな。また、後でね。」
カディカと別れて、図書館と一緒になっている自習室に向かった。
―――――――――
「管理者長、こちらが本日、スパイから送られてきた報告書です。」
「そうか。」
管理者長は報告書を受け取ると、眉間に皺をよせた。
「これは、、、」
「アシタ、ダクトノナカヘシンニュウスルモノガデル。」
「はぁー」と深いため息を一つすると、管理者長は管理者に指示を出した。
「今すぐ、囚人の監視体制を強化せよ!」
「は!」
管理者副長が短く返事をすると、駆け出していった。
「秘書。」
「なんでしょうか?」
「スパイにこう送れ。」
ー脱獄しようとするやつは一人たりとも逃がすなー
とな。
~独房~
「分かりました。管理者長。脱獄しようとするやつを僕は絶対に逃がさない!」
管理者長が僕に生きる意味をくれた。
だから、次は僕があなたに恩を返す番だ。
―――――――――
~自習室~
図書館には本棚が何列も並んでいて、自由に本を借りる事が出来る。
自習室には手元を照らすライトとテーブルとイスが置いてある。
自習室に入ると持ってきていたノートを開いて、借りてきた本を見て絵を描き始める。
最近の趣味は絵を描くこと。図書館には絵の本もあるので絵も監獄に来た頃と比べて上手くなった方だと思う。
懐かしいなと思いながら過去に描いた絵を見返すと昔の記憶が蘇ってきた。
―――――――――
「ここが、今日からのお前の家だ。」
そういって連れてこられたのは、島に建つ監獄だった。
昔から、私は優等生だったと思う。
成績も良く、悪いこともしないでいた。
だから、捕まるなんてことは起こるはずなかった。なのに起こってしまった。
捕まった心当たりもあるはずもなく、連れてこられた監獄は凶悪犯が連れてこられる場所で、もう外の光を見る事は出来ないんだ。と感じるほどの圧を監獄は放っていた。
「これから、お前は、囚人番号【000】だ。」
そういってつけられたリストバンドには【囚人番号000】と書いてあり、囚人になったことを嫌でも理解させられた。
こんなことってあんまりだよ。と一人独房で考え続ける日々が続いたある日、共有スペースで今はどこかに行ってしまった人が話しかけてくれた。
「ここへ、ようこそ!私は、遥花。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
遥花ちゃんの笑顔に私はすごく救われた。
私は、遥花ちゃんと一緒にたくさん話をした。
その話の中で、遥花ちゃんが脱獄をしよう計画を立てていることを教えてくれた。
「私達は、絶対に無実なの。その証拠に罪については管理者は何も教えてはくれない。」
たしかにその通りだと、思った。
「だから、脱獄することにした。」
うんうん、と頷きながら話を聞いていくと、ここで生き残るコツを遥花ちゃんは教えてくれた。
「それはね、時間を守ること。」
「絶対に?」
「うん。絶対に。特に朝の時間は守らないと`仕置き`をされる。」
この時の彼女の顔は少しこわばっていて私はその仕置きが何か聞くことが出来なかった。
絶対にだよ。と念を押した彼女は数日後、私の前から姿を消した。
それから、私は遥花ちゃんの言うことをずっと守っている。
たしかに、朝の共有スペースに行くのが遅れた子が仕置き部屋に連れていかれるのは何回も見た。
もしかしたらあの時、遥花は自分に起きたことを私に起きて欲しくないから言ってくれたのかもしれない。何かあったのが分かるほどに時間の話をする彼女の顔はこわばっていたから。
遥花ちゃんが居なくなってから次々と私が仲良くしていた人達が居なくなった。
何があったのか、管理者に聞いても当然教えてくれるはずなく私は理由を知ることが出来なかった。
だいぶ時間がすぎ、私は遥花ちゃん達の脱獄計画を引き継ぐ形で後から入ってきた子に教えていった。ばれないようにするためには時には犠牲も必要で、私達は管理者にばれるか検証するために実験として危険なことを友達にしてもらうこともあった。
勿論、私もやったこともある。そして、実験は必ず成功するわけではなく失敗したときは友達がキツイ仕置きを受けたこともある。
それでも、私達は止まるわけにはいかなかった。
絶対に脱獄を成功させないといけない。
遥花ちゃんがどうなったかは、なんとなく感ずいてはいるが、そんな事は無いと私が私の事を必死に否定している。
彼女達が、作戦を失敗するはずがないと。
脱獄したわけではないことには既に気が付いている。
だって、管理者が増えたりしたりしていないから。
部屋の中を詳しく調べられたり、話を聞かれたりしていないから。
だから、恐らく彼女たちは脱獄に向けた作戦をし失敗したのだろう。
それで、別のフロアに移動させられたか、消されたか。
この二択だと私は思っている。
信じたくないけど、日を追うごとに彼女達は失敗したのだとなっとくしてしまっていた。
そして、次に出てきた感情は恐怖と不安だった。
もし失敗したら?
作戦が途中でばれたら?
私はどうなる?一緒に実行していた友達は?
実行していない人には誰かが捕まっても関わっていないと言うように言っているそれでも、正直に話してしまう者がいたら?私のせいで作戦がばれたら?
不安と恐怖は日に日に大きくなっていた。
それでも、続けていけていられる理由は友達を日の当たる所に出してあげたいと言う願いがあるからだ。
絶対に皆を外に連れていく。その気持ちがあるから私は今日まで頑張ってこれた。
―――――――――
遥花ちゃんに会いたいな。
恐らく、もう会うことが出来ない友を思い浮かべる。
でも、私はまだ諦めていなかった。彼女にはどこかで会える気がしていた。
私は消灯まで自習室に居た。
~翌日~
「おはようございます。今日は、シャワーが使えます。個室シャワーを使いたい人は二名予約出来ます。【000番】【666番】は時間を守ってシャワー室に来てください。では、また後で。」
ガチャッと音を立てて放送が切れると私はベッドから動いた。
服を変えて、トイレをして、歯を磨き、顔を洗う。
支給されているクリームを顔に塗ると部屋を出た。
「おはよう。優香。」
「おはよう。編。」
部屋を出ると優香に会ったので一緒に共有スペースに向かう。
今日は、珍しくここに昔いた子の夢を見たんだよね。と優香に話しかける。
「そうなんだ。大丈夫?顔色悪いけど、、、」
「あ、うん。大丈夫だよ。少し、夢の内容がね、、、」
あまり良くなかったと言うと優香は「そっか」と短く返事をした。
今日の夢はあまりいいものではなく遥花が仕置き部屋に連れていかれる夢だった。
私は大泣きし管理者に取り押さえられるそんな夢だった――。
共有スペースに着くと囚人の半分ぐらいは敷物に集まっていて話をしていた。
「隼人くんおはよう。」
「あ、おはようございます。編さん。」
私が挨拶したのは私がここに来た頃から一緒に居る隼人くん。
もう今はいない人たちの一人のはずだが、なぜか彼だけは戻ってきた。
「隼人くんは、今日何かするの?」
「あ、えーと。僕は今日自習室で勉強をしようかと・・・。」
「いいねー。私も勉強自習室でしようかな~。」
「いいんじゃないですか?僕と一緒に勉強しませんか?」
「うん。いいね、やろやろ。」
二人で話していると管理者がやってきた。
「おはようございます。」
「「おはようございます。」」
「今日もまた、困ったことに遅刻が一人います。カディカ来なさい。」
「は、はい。」
カディカ!?なんで・・・。今日は作戦実行日なのに。
「【666番】は寝坊と、刑務作業の物を部屋に持ち込むという重罪を犯しました。
よって、この後、仕置き部屋に連れていきます。」
「や、やめて、、、」
「おだまり!お前が悪いのです。今日は特に予定がないのでこの後は各自自由時間にしてください。
【666番】行きますよ。」
カディカは管理者に連れられ仕置き部屋の方に歩いて行った。
「怖いですね。編さん。」
「うん。そうだね。」
「しかも、あの管理者は仕置きが厳しいと言われていまして、、、あの人が担当の時に仕置き部屋に行った人は何日も独房から出てこないらしいんです。」
「こわい、、、」
二人で怖がっていると優香に図書室に行かないか誘われた。
私と隼人は顔を見合わせると頷き図書室に三人で向かった。
図書室で勉強をした後、時間が来たため私はシャワー室へ向かった。
「【000番】です。」
「よろしい、通りなさい。」
シャワー室がある部屋に通されると優香と隼人が居た。
シャワー室の前でバスタオルと下着を渡されると何分入っていいのか時間を伝えられた。
「今日は長めにとって二十分入ってよろしいです。それでは、入って下さい。」
「「「はい。」」」
三人同時にシャワー室に入る。
シャワー室に入ると私は、隠し持っていた時計を手に持つとダクトへ繋がる鉄格子のネジを外す。
ネジを外したらダクトの中へと入り机に備え付けてあるライトを取ってきたのでそれであたりを照らす。
あとは、少しずつ前に進み、ダクトの中の様子を見る。
少しあたりが明るくなってきたのでそちらの方に行くと運動場があった。
そして、ダクトを降りたところから塀の上を歩けそうだった。
しっかりダクトの他の道も探索するとシャワー室に戻り、頭と体を洗った。
時間通りに出ると私は独房に戻り早速地図を囚人分書いた。
昼食が終わると共有スペースでダクトの地図を全員に渡し、脱獄の計画を伝えた。
「脱獄が出来る。決行は次、全員個室シャワーを使える時。」
「分かった。」
全員に伝え終わると私は独房に戻り勉強と筋トレをしているとあっというまに夜になり、私はベッドに入った。
~数週間後~
「おはようございます。今日は全員個室シャワーの日です。時間通り来てください。」
ついにこの日が来た。
私は身支度を済ませた後、共有スペースに向かった。
そこで、管理者の話を聞き、その後は自習室でシャワーまでの時間を潰す。
そして、シャワーの時は来た。
「今から、シャワーを始めます。」
放送が流れると、私はシャワー室へと向かった。
シャワ―室に入ると早速私は鉄格子を開け、ダクトの中へと入った。皆が私の前を通りすぎたのを確認した後、私も後に続いてダクトの外へと向かう。
長い道を進むとあたりが明るくなってきた。
出口が見えてきたのだ。
出口の鉄格子を開け、一人ずつ外へと出ていく。
そして、私も外へ出た。思っていたよりも幅のある塀の上を歩いて行くと、一人、また一人と監獄の外へ行くことが出来た。
ついに私の番が来て、降りようとすると呼び止められた。
「何しているんですか?編さん。」
「隼人?」
私を呼び止めたのは隼人で、私は少し混乱していた。
全員が私の前を通るのを確認してから行ったはずなのになぜ後ろに彼がいるのだ?
「どうして、私の後ろに居るのって疑問でしょう?」
「う、うん。よくわかったね。」
「長い付き合いですから。あなたの疑問に答えましょう。簡単な話ですよ。横にも道がある分かれ道の時に後ろに回り、あなたの後ろに行ったんですよ。全ては、あなたを捕まえるために。」
「え?捕まえる?な、何言ってるの?隼人?」
隼人は何も言わずにただただ無言で近付いてくる。
でも、この状況がヤバいことに本能的に気付いた私は、先に塀を降りた仲間に声を掛けた。
「皆聞いて、隼人は裏切者。私が相手をするから、あなた達は私の事を気にせずに逃げて!」
私が叫ぶと同時に隼人は飛び掛かってきた。
まずい。と思った時にはもう遅く、私の体は宙に投げ出された。
私を突き落として仲間を追いかけようとする隼人の手を引き、道連れにする。
「何を!」
「あなたに、仲間を追わせないためよ。」
「クソッ。あなたは今何をしているのか分かっているんですか!?」
「何やってるんだろうね。」
「ねぇ」
と私は話しかける。
「私。何で捕まってるんだろうね。でも、ここに来た理由君なら知ってるんじゃない?」
ドン!と地面に叩きつけられるが、私は隼人の体を離さなかった。
「あなた達は、政府の敵になるから、捕まったんだ!」
「政府の敵ね。」
「あぁ、そうだ。僕は優秀だから生かされたんだ。」
「じゃあ、後ろに居る人は誰なの?」
「は?」
隼人が振り向くとそこには拳銃を隼人に向けている男が居た。
「管理者長!どうしてここに?」
「勿論、任務を達成出来なかった、裏切者を消すためだ。」
「え?裏切者?もしかして、、僕のこと?まさか!」
「そうだ。」
管理者長は隼人に向かって冷たく言い放つ。
「なぜ!?僕は、一人だけでも逃がさなかったのに!」
「一人以外は?結局、逃がしたことには変わりない。」
「っ!でも、僕は、あなたに必要だって言われたから頑張れた!」
「それがどうした?お前はただの使い捨ての駒でしか無い。」
隼人の顔は真っ青になり、目からは涙が零れた。
「ぼ、僕は、、、」
「もういい、黙れ。」
「へ?」
その瞬間、運動場には銃声が響いた。
私の顔には血が飛び散り、隼人の体が私の方にクタリと倒れてきた。
「隼人、私達は悪なんかじゃないよ。政府こそが悪だよ。遥花、言ってたじゃん。なんで、信じなかったの?」
話しかけても返事は無いのに私は話しかけてしまった。
隼人が死んだ事実を受け入れるために。
隼人は恐らく、遥花たちの作戦に付いて行ってその途中に捕まったのだろう。
そして、遥花たちと一緒に作戦を行ったことをなかったことにするから、スパイをしろ言われたのだろう。
「私は、おとなしく仕置き部屋に行きます。」
管理者長を見つめ言うと
「その必要はない。」
と言われた。
「へ?」
「なぜかって?もっとルールの厳しい、下層へ送るからな。」
「あぁ、」
私はもう``二度と``太陽を見る事は出来ないだろう。
こうして、私は捕まってしまった。
失ったものはとても多い、自信に隼人、そして、無事に脱出できたと思われる仲間。
もう二度と仲間に会うことはできないだろう。
私が太陽を拝めるのはいつになるのか。
きっとそのころには私は、、、、。
私は管理者長に付いて行き、監獄の中に戻った。
その後、ケガをしてないか検査され、エレベーターに乗って下層へと向かった。
下層には重罪を犯した人が収容されている。
政府の敵だからという理由で捕まっていると言っていた、隼人の言葉を思い出すといつか絶対、私達が政府の敵と呼ばれている理由を見つけてやると心に決めた。
そして、チリンとベルが鳴り扉が開いた――
~翌日~
「こんにちわ。今日も朝が来ましたね。」
あぁ、地獄の始まりだ――
――――――――
久しぶりです。Vだ。
他の仲間は無事に脱出することが出来た。
だが、編は残念ながら、捕まってしまった。
悲しいが、編達の物語はここで終わり。
この後、編は下層で遥花達と出会うことが出来たらしい。
でも、それと引き換えに恐らく二度と太陽を拝めなくなってしまった。
私が案内できるのはここまで。
編達の物語を一緒に見てくれてありがとう。
―――――――――
監獄 檻「完」
読んでくださった方本当にありがとうございます!
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