表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/24

15、新たな味方



ブレナン侯爵やほかの貴族達に手紙を送ってから、一週間が経った。そして、一通の手紙が届いた。


「ロゼッタ様のお気持ちは、きっと届いています!」

「絶対に大丈夫です!」


アビーもサナも不安な表情を浮かべているのに、私の心を落ち着かせようとしてくれている。

手紙は、ブレナン侯爵含めて十五人の貴族に送った。けれど、返事は一通のみ。

不安な気持ちを抑えながら、封を開ける。


手紙に記されていたのはたった一言……『お会いしたい』とだけ。

私のことを信用していないから、何かの証拠になるような余計なことは書かなかったのだろう。

それに、私のせいで暗殺計画を阻止されたのだから、印象は最悪だろう。


ドリアード侯爵を通して、会う日程を伝え、その日が訪れた。会う場所は王宮ではなく、王都にある小さなレストランの個室。

私は王宮から出ることを許されてはいないから、サナの服を借り、使用人として外出することにした。アビーを一緒に連れて行くことは出来ないから、ローリーと一緒に行くことにした。使用人が馬車を使うと怪しまれる為、徒歩でレストランを目指す。

ドリアード侯爵には、護衛をつけると言われたけれど断った。使用人が護衛を付けていたら目立ってしまう。それに、ブレナン侯爵達にも私は護衛など必要ないほど信頼しているとアピールしたかった。そう思っていたのに……


「サナ! 待って! 私も一緒に行くわ!」


メイド服を着た見知らぬ女性が、そう言いながらあとを追いかけて来た。

私を『サナ』と呼んだのだから、ドリアード侯爵の命令で来たのだとすぐに分かった。


「仕方ないわね。行くわよ」


彼女を受け入れはしたけれど、彼女の顔に見覚えがない。


「どうしてついてきたの?」


小声でそう聞くと、


「兄に、()()様をお守りするようにと」


そう答えた。

……兄? 首を傾げる私に、女性は続ける。


「デイモンは私の兄です。ご心配はいりません。私は空気のいい田舎で、療養していることになっています」


彼女の名前は、レイシアだそうだ。

侯爵は妹の身体が弱いから、療養の為に田舎で暮らしていると父に報告していた。けれど、レイシアは健康そのもので、なんなら兄より剣術も体術も優れていた。

ドリアード侯爵が動けない時は、王都にいないはずのレイシアが動いているというわけだ。リジィと義母のことも、ブレナン侯爵と手を組んでいる貴族達のことも、彼女が調べたようだ。


「……護衛は不要だと言ったのに」


「そうですね、()()そのつもりだったようですが……」


意味深なところで、言葉が途切れる。


「それはどういう……」

「さあ、もう少しペースをあげましょう。このままだと、日が暮れてしまいます」


彼女は、答える気がないようだ。

やっぱり、兄妹だ。良く似ている。


何事もなくレストランに到着し、裏口から中に入る。裏口では店長が待っていて、人目に触れないように個室へと案内してくれた。


個室に入ると、ブレナン侯爵が立ち上がり、こちらに近づいて来た。

個室には、ブレナン侯爵のみで、他の貴族の姿はない。


「初めまして、ロゼッタ様。まさか、そのようなお姿でお見えになるとは思いませんでした」


表情はにこやかだけれど、警戒しているようだ。


「初めまして、ブレナン侯爵。初めに、一つだけ言わせていただきます。私は、陛下のお命を狙った侯爵が許せません。ですが、これから陛下を全力でお守りすると誓ってくださるなら、この思いは私の心の中だけにしまっておきます」


味方になって欲しいと言ったのは私だ。けれど、アンディ様を殺そうとしたことは許すことが出来ない。


「ワッハッハッ! これは、面白い!」


一瞬驚いた顔をしたブレナン侯爵は、すぐに大きな声で笑い出した。その様子からは、警戒がとけたように見えた。


「失礼。ロゼッタ様は、お母上のハンナ様にそっくりですな」


「母を、ご存知なのですか?」


「もちろん、存じております。ハンナ様は、私の幼馴染みでした……」


ブレナン侯爵の表情から察するに、侯爵は母に恋をしていたようだ。いや、今でも愛しているように見える。それで、納得がいった。

アンディ様の命を狙ってまで、父を排除しようとしていたのは、復讐だったのかもしれない。


「母を想ってくださり、ありがとうございます」


心を込めて、ブレナン侯爵にお礼を言いながら丁寧に頭を下げる。

母は、愛されていた。間違った人を愛して、愛されないまま亡くなったのだと思っていたけれど、ちゃんと愛されていたことが嬉しかった。


「やはり、ロゼッタ様はハンナ様にそっくりだ。聡明で、誰にも負けない強さをお持ちのようだ。私は、決めました。ロゼッタ様に従います! 他の貴族の説得は、私にお任せください!」


交渉の為に、色々と考えてきた。けれど、そんなのは、最初から無意味だったようだ。

ブレナン侯爵が見極めたかったのは、私の本音。私がアンディ様の為なら、何でもすると感じ取ったのだろう。母のおかげだ。


頼もしい味方ができ、あとは父を破滅させる為の作戦を練るだけだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ