表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

13、全てはアンディの為に



「ただ今、ブレナン侯爵との交渉を……」


説明しようとしたドリアード侯爵の言葉を、アンディが遮る。


「そのことではない。私に、何か隠しているだろう?」


「何のことを仰っているのか、分かりかねます」


「私に、嘘をつく気か?」


あえて話さないことと、嘘をつくことは違う。

ドリアード侯爵は、あえてロゼッタのことを話さなかった。ロゼッタがそれを望んでいないから……ではなく、アンディの為だった。

アンディは、ロゼッタが初恋の少女だとは知らない。ロゼッタが名乗った通り、あの時の少女はリジィだと思っている。だが、あの日の面影をリジィに感じてはいなかった。成長し、変わってしまったのだと思っていた。

それでも、アンディは唯一心を寄せた相手を守りたくて、側に置くと決めたのだが、リジィの嘘に気付いてしまった。

なぜリジィが嘘をついたのか、なぜ料理をロゼッタが作っているのか、そしてなぜロゼッタは態度とは正反対な行動をとるのか……疑問に思った時、ドリアード侯爵が全てを知っているのだと考えた。


自分が、ブレナン侯爵に暗殺されかけたことは聞いていた。そのブレナン侯爵を、味方にしようと動いていることも知っている。

だが、ロゼッタが料理を作っていることを、侯爵は報告しなかった。


「申し訳ございません。陛下が、知る必要はないと判断しました」


どんなにロゼッタがアンディを想っていても、彼女はブルーク公爵の実の娘だ。そんな相手を、アンディが愛してしまったらと侯爵は危惧していた。

ブルーク公爵を排除し、この国の真の国王になるはずのアンディに、ロゼッタは不要だ。ロゼッタも、そう思っているに違いない。


「勝手に判断するな。全てを話せ」


アンディの気迫に負け、侯爵はロゼッタのことを話すことに決めた。


「王妃様は、父上であるブルーク公爵を排除するおつもりです」


やっと話し始めた侯爵を見て、アンディはイスに腰を下ろした。


「なぜそのようなことを?」


「王妃様……ロゼッタ様のお母上は、前国王様と前王妃様がお亡くなりになった翌日に、病死しております。ロゼッタ様のお母上であるハンナ様は、公爵のなさっていたことに反対をしていました。つまりは……」


「父上と母上のように、殺されたか……」


それだけではなかった。

ロゼッタの母の両親は、娘を亡くしたショックで自害した。いや、自害させられていた。ロゼッタを引き取りたいと申し出ただけで、財産を奪われ、爵位を奪われ、何もかも奪われて絶望し、命を絶った……とされているが、ロゼッタを守りたければ自害しろと強要させられていた。


「その後、ロゼッタ様は使用人用の離れに住まわされ、使用人の為に食事や掃除をして暮らして来たそうです」


ロゼッタは、苦労知らずで何不自由なく暮らして来たのかと、アンディは思っていた。憎い仇の娘は、誰よりも辛い思いをし、誰よりも苦しんで来た。


「……それで、料理があんなに美味いのか。私は、彼女に酷い態度を取ってしまった」


今にも泣きそうな、悲しげな表情を浮かべながら、拳を握りしめる。


「ロゼッタ様は、心から陛下をお慕いしております。陛下に憎まれることも、嫌われることも、ロゼッタ様が望んでいたことです。『自分を憎むことで、少しでもアンディ様の気を楽にして差し上げたい』と……」


アンディの表情が、驚きに変わる。

今までのことを考えると、ブルーク公爵の邪魔をしているように思えていたから、父親を排除しようとしているのではと予想がついていた。

だが、ロゼッタが自分を慕っている素振りを見たことがない。何かを隠していると気付いていたが、まさか自分を想っているとは考えなかった。なぜなら、結婚式が初対面だったのだから……そこまで考えたところで、アンディは何かに気付いた。そして、頭を抱えた。


「……あの日一緒に夜空を見上げた少女は、ロゼッタだったのか……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ