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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋新しい未来へ❋
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新しい未来へ

あれから無事に学園を卒業したイロハと私。

卒業式の後、卒業生で打ち上げパーティーに参加して、学園で仲良くなった友達と楽しい一時を過ごした。




その後──


「イヴ、迎えに来た」

「イロハ、そろそろ帰ろうか?」


と、満面の笑みを浮かべたフィルとアラスターさんが迎えに来た。


「「ゔっ───」」


イケメンの笑顔は心臓に悪い。イロハと2人揃って悶える。

何とも言えない……今までで一番の笑顔じゃないだろうか?普段、この2人に顔を赤らめる竜人はいなかったけど、この時ばかりは男女関係無く顔を赤らめていた。まぁ………この後の事を、知っている─と言う事も……含まれているんだろう。

私もイロハも……居た堪れない状態だ。勿論、私達以外にも、何人かは蜜月に入る子が居る。本当、竜人族では当たり前の事のようだ。


「それじゃあ……皆、仲良くしてくれて、色々助けてくれてありがとう。卒業しても…また仲良くして下さいね」


「勿論!エヴェリーナ、イロハ、()()()()()()()連絡ちょうだいね!お出かけしようね!」


“1ヶ月過ぎたら”───


「「………ハイ、ワカリマシタ……」」


ー恥ずかし過ぎる!!ー


私とイロハは、足早にその場を後にした。







学園の門を出ると、そこですぐにイロハとはお別れになる。フィルと私は浮島へ。イロハとアラスターさんは、マクレガン家所有の別荘へと行く事になっている。


「それじゃあ……リーナ、何と言うか…お互い頑張ろうね?1ヶ月後……絶対、絶対にリーナに会いに王城に行くから……」

「うん。お互い……頑張ろうね……1ヶ月後、待ってるからね!」


ギュウッ──と、お互い励まし合うように抱き合って、イロハとお別れの挨拶を交わした。


「「…………」」


そんな私達の様子を、何とも言えない顔で見ていたフィルとアラスターさんには、私もイロハも気付かないフリをした。










王城に着くなり、ニノンさんとマリーさんとアルマさんに「お待ちしてました!」と、笑顔で出迎えられ、魔法陣─ではなく、竜化したニノンさんに掴まれて、そのまま浮島の邸へと運ばれた。


「今夜は長くなりますから」


ーそれ……生々しくないですか?ー


いつもより早目の時間に、いつもより多目の夕食を食べさせられ、その後はこれからの予定の説明をされた。


「本日より1ヶ月、竜王陛下とエヴェリーナ様は、この浮島で過ごしていただく事になります」


ーはい。知ってますー


「その間、他の者が直接お二人の視界に入る事はないと思いますが、限られた数人の使用人がお世話をする為に浮島にも居ますので、何かあれば、陛下を通して申し付け下さい」


ーフィルを通すんですね?ー


「後は……どうしても──と言う事がありましたら、大声で私の名前でも叫んでいただければ……何とか頑張ってみます」


と、ニッコリ笑うニノンさん。


ーそんな事態にならない事を……祈ろうー






それから、マリーさんとアルマさんにお風呂に連れていかれ、体の隅々まで綺麗に洗われた後、丁寧にマッサージをされ、普段は付けない香油を付けられた。


ーあからさま過ぎですよね?ー



脳内突っ込みを入れながら気持ちを落ち着かせ、気が付けば夜もいい時間になっていた。


「エヴェリーナ様。本当に……ここまで来ていただいて……竜王陛下を受け入れていただいて、本当にありがとうございます。これからも、竜王陛下の事、どうぞ、宜しくお願い致します」


ニノンさんがそう言って、アルマさんもマリーさんも頭を下げた後、3人が部屋から出て行き、入れ替わるようにフィルが部屋に入って来て、パタン─と、扉が閉められた。


そのフィルも入浴後なのか、髪が少し濡れていて、いつもより色っぽく見える。


「イヴ…大丈夫?」


ここまで来て、私を優先して気に掛けてくれるフィル。“受け入れない”“拒否する”何てことは……選択肢にはない。


「大丈夫─と言うか、嫌ならトルトニアに帰ってますからね?私は…フィルが好きだから。これからも、宜しくお願いします。ただ……その……当たり前だけど、初めてだから…お手柔らかに…お願いします!」

「ぐぅ────っ…イヴが…可愛いっ!“お手柔らかに”とは……すまない……努力はするが……約束はできないと思う」

「え………」


ー何て…有り難くない……素直さー


と思っていると、ヒョイッとお姫様抱っこされて、そのまま寝室のベッドまで運ばれ、優しく押し倒された。


「イヴ……愛してる。四度も殺した俺を受け入れてくれて、本当にありがとう。今世…今からまた……()()()()を与えてしまうと思うけど……それは赦して欲しい」

「──っ!?」


ふにゃっと笑うフィルの色気が、物凄いことになっている。それに、物凄い事を言われた…よね!?


ーやっぱり恥ずかしい!ー


と思ったのはその時だけだった。


それからの私は、フィルにしがみつくだけでいっぱいいっぱいだった。あの、酸欠に陥りそうになる程のキスが…可愛らしく思えたぐらいに───




ーこれを……1ヶ月?途中棄権は……アリかなぁ?ー




「イヴ…考え事してる?まだ…余裕あるんだな?」

「え??まさか!!余裕なんて……もう無いか──っ!!??」


妖艶に微笑んだフィルが、初めて年相応の大人な………意地悪な大人に見えた瞬間、更に追い立てられて攻め続けられた。







「イヴ……ごめん………」

「……………」


グッタリと動けなくなった私は、正面からフィルに抱きしめられたままベッドの上に横たわっている。

途中意識を失ったようで、気が付けばこの事態だった。そして、気を失った私を見て焦ったようで、目が覚めてからは、ずっと謝っている。


「本当にごめん……やっぱり…手加減できなかった……」

「………」


ーそれ…本当に反省してる?しかも、笑顔だし…ー


「本当にごめん………その…大丈夫?じゃ…ないよな…」

「………ば……か……ふぃる…………」


何とか絞り出た声はガラガラで、ギッとフィルを睨めば「……だから、ソレ………()()にしかなってないからな?」と低音ボイスで呟かれ───更なる攻めを受ける羽目になった。






ーやっぱり納得いかない!!!ー







それから、キッチリ蜜月を堪能したフィルは、1ヶ月後は満面の笑みで王城へと下りて行った。

私は、そこからまる2日ベッドの住人となり、ニノンさんにお世話をしてもらい、そこから5日程は浮島の邸でのんびり過ごし、同じ蜜月を過ごしたイロハと会えたのは、結局、蜜月が終わってから2週間後だった。


「「蜜月なんて……いらない……」」


と、私とイロハが、開口一番綺麗にハモったのは、2人だけの秘密だ。






黒龍の贄にされ、四度も噛み殺された私だけど、五度目にしてようやく……“正しい路”へと進む事ができた。


ここからは、私の─私達の新しい未来へと続く路となる。












❋プチ閑話❋



「陛下、喩え陛下の竜力を得ているとは言え、エヴェリーナ様は人間(ひと)だから…と、再三忠告しましたよね?」

「ハイ」

「それなのに、1週間の安静を要するとは………エヴェリーナ様を()()殺す気ですか?」

「スミマセン」


シュンと項垂れる陛下ではあるが、きっと反省は……していない。嬉しさが隠し切れていない。その気持ちも分からなくはない。


「竜力、体力馬鹿の陛下の基準に合わせないで下さい。医師からの伝言ですが、エヴェリーナ様に陛下の竜力が()()()()と言う事で、1ヶ月は()()だそうです」


「え……」

「…………」


ニノン(わたし)の言葉に、嬉しいやらショックやら複雑な表情を浮べる陛下と、若干引き気味の宰相アラールが居る。


「そもそも種族が違いますし、“受け入れてくれた(イコール)何でもOK”ではないんです。そんなにも、最初からガッツいていると……嫌われますよ?」

「嫌われ…………ワカッタ……」


“エヴェリーナ様に嫌われる”


これは、ある意味陛下にとって、唯一発動可能な呪文と言える。陛下が一番恐れているのは、“エヴェリーナ様に嫌われる事”だから。そこだけは……年相応の可愛らしい竜だな…と思う。

兎に角、2人が幸せになって良かった。


これで、この世界はまた、平和な時を刻んで行くだろう。








え?ニノン(わたし)の年齢…ですか?そうですねぇ………この可愛らしい陛下の✖✖倍は生きています。


「ふふっ────」










❋これにて完結となります。最後迄読んでいただき、ありがとうございました❋


❋いいね、ブックマーク登録、ありがとうございました❋



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