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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋新しい未来へ❋
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四度のチャンス

いいね、ありがとうございます。

「未だに、エヴェリーナ様に会いたい─と呟いているそうですよ」

「恐ろしい執着心だな……」


地下牢に居るハロルド(馬鹿王子)は、イヴからハッキリ「気持ち悪い」と言われたのにも関わらず、未だに「会いたい」やら「私のモノなのに」などとほざいているらしい。


「もう、一気に()ってしまおうか?」

「…………」

「アラール……反対しないのか?」

「アァ…ダメデスヨ、ヘイカ。喩え、第二王子が気持ち悪いからと言って、()ってしまっては…」


どうやら、アラールも気持ち悪いと思っているようだ。


「分かっている。喩えアレが気持ち悪くても、簡単には死なせない」


馬鹿女も馬鹿王子も、簡単に死なせるつもりは微塵も無い。トワイアルの元国王と王妃の罪状も揃った。

そして、トワイアルのこれからの道筋も調った。


ならば───


「そろそろ……止めを刺すか」

「そうですね。では、トルトニアに知らせを送っておきます」








******



「エヴェリーナ………」

「エヴェリーナは来ないぞ」

「っ!お前は……お前が、エヴェリーナに私の事を悪く言ったんだろう!?」


俺に気付いた馬鹿王子が立ち上がり、ガシャンッ─と、鉄格子を握り締めて叫んだ。

相変わらず、現実を受け止められていないようだ。

一目惚れからの拗らせで思い込みが激しく、イヴに自分の理想を押し付けたまま成長したんだろう。

イヴがおとなしく可憐で、笑顔の可愛い従順な令嬢だと。確かに、笑顔も可愛いのは認めるが、イヴはおとなしい、従順な令嬢ではない。自分の意思をハッキリと持った、心の強い令嬢だ。それに、ちゃんと向き合えばイヴはいつだって応えてくれる。

馬鹿王子は、ちゃんとイヴに向き合わなかったのだ。


「俺が何を言っても信じられないだろうから、お前にはちゃんと()()()やろう」

「見せて?何を───」


「ハロルド=トルトニアが……何をしたのか、お()()しましょう」

「え?大神官様?」


俺の背後から現れたアルピーヌ大神官が馬鹿王子に近付き、鉄格子越しに馬鹿王子の顔の前に手を翳すと、その手の平からキラキラと光が溢れ出した。


「なに──を──────っ!?」


その光が馬鹿王子の頭に吸い込まれた後、馬鹿王子は暫くするとカタカタと震え出した。


「あ………な………え?私が………エヴェリーナを?」


アルピーヌ大神官──元アルクシェリア女神が出した光は、過去四度のハロルド=トルトニアの記憶だ。


「お前には記憶が無かっただろうが、お前も俺達も、今は五度目の人生を送っているんだ。そして、今、お前が視たのは、過去四度のお前の記憶だ。」

「五度目の人生?過去……四度の……記憶?」

「それで分かっただろう?お前は、過去、四度もジュリエンヌ=トワイアルと一緒になって……俺にエヴェリーナを殺させたんだ」

「な………でも…………」

「お前も騙されたところはあるが……俺の番はジュリエンヌ=トワイアルではなく、エヴェリーナ=ハウンゼントだ」

「え?」


馬鹿女はイーリャの実を使い俺の番に成りすましていたが、本物の番であるイヴを見付けてしまい、そのイヴを殺す為に馬鹿王子に近付いた。


『エヴェリーナ様は、ハロルド様の事が本当にお好きなのね…。私がいつもハロルド様と一緒にいるから、嫌味を言われるの。嫉妬……ですわね…』


そう言われて、この馬鹿王子は優越感を抱いたのだ。馬鹿女と一緒に居れば、“イヴが嫉妬してくれる”“私を見てくれる”─と。


そして、最終的には──


嫉妬に駆られたイヴが馬鹿女に手を出してしまい、馬鹿王子とは違う男に気持ちが移った─などと吹き込まれ、それを信じた馬鹿王子は、馬鹿女と共にイヴを──


「お前達は、嘘をでっち上げてイヴ─エヴェリーナを……黒龍(おれ)の贄にしたんだ。四度も……」


ー俺は……四度も番を殺したんだー


「それで残ったのは、本当の番を喪った黒龍(オレ)と、婚約者を喪ったハロルド王子(お前)と、自分の思い通りになったジュリエンヌ=トワイアルだったんだ」

「そんな……ジュリーの……嘘?」

「“()()()()”か……今世でも、お前達は仲が良かったんだな。呆れる。本当にエヴェリーナが好きなら、お前はジュリエンヌとの距離を取るべきだったんだ。エヴェリーナを好きだと言いながら、お前は四度も彼女を裏切ったんだ。裏切った挙句、お前は媚薬を使ってエヴェリーナをモノにしようとしたんだ。そんなお前を、エヴェリーナが好きになってくれると思うか?」

「え?まさか……エヴェリーナは…」

「その“まさか”だ。エヴェリーナは、過去四度の記憶が全てある」

「っ!?」


イヴは、全ての記憶がある。黒龍に噛み殺される記憶を持ちながら、独りで運命に立ち向かう事は、どれ程大変だっただろう。


「お前には、四度のチャンスがあったんだ。それを全て無駄にしたのは……お前自身なんだ。だから、今世では、エヴェリーナがお前を見る事はない。阿呆でクズで腐っていても、王子であったお前なら知っていると思うが……エヴェリーナは今は俺の正式な番だ。その意味分かるな?」

「………」


人間(ひと)が竜族の番になると言う事は、ある意味人間(ひと)ではなくなると言う事だ。特に、竜族最強の黒龍の番ともなると、遥かな時間を共にする事になる。しかも、過去四度、自分を噛み殺した相手だ。


「俺は、エヴェリーナにちゃんと向き合って、それにエヴェリーナが応えてくれた。だから、俺は今、エヴェリーナと一緒に居られるんだ。お前が入るような隙は無い。お前は……今世でもジュリーと仲良くしていれば良い」


ーそう。今世でも、2人仲良く…一緒にしてやるー


「そんな…………」


その場に崩れ落ちた馬鹿王子。俺はそんな馬鹿王子を一瞥した後、アルピーヌと共にその場から立ち去った。


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