アラスター=マクレガン
いいね、ありがとうございます。
色々あったあの日の1週間後から、私とイロハはアラスターさんの護衛付きで学園に行く事ができるようになった。
遅れた分、イロハと一緒に放課後に居残りをして取り戻した。
「この年になって、こんなに勉強するとは思わなかった…」
「そう言えば…イロハは本当は何歳なの?」
イロハは人間だから、“見た目≒年齢”だと思うけど、何となく年上じゃないかなぁ?
「ここだけの話、25歳よ」
「「え!?」」
成人してる上に、私より八つも年上で驚きの声を上げ、それと同時にアラスターさんも驚きの声をあげた。
「イロハは…成人してたのか?」
「え?驚くのはそこなの?アラスターさん、知らなかったの?私、成人してるし、お酒も飲めるよ?好きじゃないから飲まないけど」
「そうか……成人しているのか……そうか………」
と、アラスターさんはブツブツと何か呟いた後、黙ったまま何かを考えているようだった。
それから3日後、トワイアルの国王両陛下が竜騎士に拘束され、竜王国の地下牢に入れられた─とアラスターさんが教えてくれた。国王不在の間は、トワイアルの宰相と、補佐としてトルトニア王太子─メレディス様が代行をするそうだ。新たな王の候補は既に居るそうで、トワイアル王国では、今はその新たな国王を迎える準備や体制を調える為に、色々大変なんだそうだ。
フィルも然り。トワイアルの元国王達の後始末や、新国王の体制作りなどで忙しいようで、あの日からマトモに会っていない。浮島の邸にも帰って来ていない。
ー会いたいなぁー
******
*竜王執務室*
「大聖女の結婚について、制約などありますか?」
「……何だ…急に………」
俺─アラスター=マクレガン─は、学園から戻って来てすぐに竜王陛下の元へとやって来た。
今日初めて知って驚いた。大聖女─イロハが成人していて25歳と言う事に。てっきり、まだ成人していないと思っていた。だから───
「大聖女イロハが、25歳だと…知っていましたか?」
「25!?いや…成人しているとは言っていたが……かなり幼く見えるな…」
「俺は、イロハはまだ成人していないと思っていたから、今迄やんわりと接していたんです。」
「あぁ………なるほど………」
そう。イロハがアルクシェリア女神に召喚され竜王国にやって来た時、その姿に目を奪われた。黒い髪に黒い瞳。竜王国では唯一無二の色だが、イロハの黒色は神秘的なモノに見えた。黒色の瞳はしっかりとした意思を持ったように凛としていた。
それから、俺が護衛に付く事になりイロハと一緒に過ごす時間が増えれば増える程、俺はイロハに惹かれていった。自分が黒龍と並ぶ程の存在である大聖女なのに、一切驕る事がない。それは、これまた黒龍と同等の存在であるエヴェリーナ様にも言える事だが、2人ともが、権力と言うモノに一切興味が無い。勿論、俺がエヴェリーナ様に手を出す事は無い。俺が心惹かれているのはイロハ=サイキだ。俺は公爵家の次男ではあるが竜王の近衛であり、見た目もそこそこいけている─と思っているが、エヴェリーナ様は勿論の事、イロハが俺に色目を使ったり媚びるような事は一度も無い。
“異性”としてではなく、“護衛”としか見られてないように思う。それでも、イロハがまだ成人していないから、直接的なアプローチは控えて、その代わり周りには牽制だけはしておいた。イロハが成人する前に誰にも奪われないように、且つ、成人すれば直ぐに動けるように。
それなのに───
「イロハが成人しているのなら、俺はもう遠慮はしません。ここまで我慢して、他の誰かに掻っ攫われたらたまったもんじゃないですからね。何の為に我慢をしたのか……。でも、イロハが大聖女様には変わりはないですから。だから、大聖女について、恋愛や結婚に制約や制限などがあるなら、教えて下さい」
「特に制約や制限は無いが、イロハにはアルクシェリア女神の加護があるから、悪意を持って近付く者には、喩えイロハが望んだとしても難しいが、基本はイロハが望む者であれば種族関係無く誰でも良い。ただ、可能な限りは、結婚しても黒龍が見守る事ができる竜王国で過ごしてもらいたい。後は…アルクシェリア女神にも許可が要るかもしれないが…それは、アラスターなら問題無く大丈夫だと思う。まぁ……頑張れ」
「ありがとうございます」
竜王陛下は笑いながら、俺の肩をポンポンと叩いた。
「……ところで……イヴは元気にしているか?」
「はい。元気にされてます。と言うか、イロハと2人で必死に遅れた分の勉強をしていて大変そうです」
毎日放課後は図書館で勉強をして、寮に帰った後は予習もしていると言っていた。薬学部は本当に大変だなと思う。
「失礼します。そろそろ休憩にしませんか?」
「ん?あぁ、そうだな。それじゃあ、お茶でも淹れてくれ」
ドア越しに声を掛けられ、陛下が答えるとドアが開きティーセットとお菓子を持った女官2人が入って来た。
「イヴ!?」
ガタガタと勢い良く椅子から立ち上がり、入って来た女官─だと思っていたら、エヴェリーナ様とイロハだった─の元へ駆け寄る陛下。
「イヴ、どうして執務室に?いや、嬉しいんだけどな?」
「今日はイロハと久し振りにお菓子を作って、いっぱい作ったから……ニノンさんに許可をもらって、フィル達に差し入れに持って来たんです。お邪魔じゃないですか?食べてもらえますか?」
「勿論食べる!勿論お邪魔なんて事はない。寧ろ大歓迎だ!」
「なら良かったです」
「──くぅっ………可愛い!!!」
ーなんとも……微笑ましいやり取りだー
過去四度は、死んだような目をした陛下を幾度と目にした。五度目の今世では、2人で幸せになって欲しい。
「アラスターさんも食べて下さいね。と言っても、ほとんど……9割はリーナが作ったお菓子だけど」
と、いつの間にか、俺の直ぐ横に来ていたイロハ。制服のイロハとは違い、私服のイロハは少し落ち着いた雰囲気がある。
「勿論、頂きますよ」
と、イロハの耳元で囁くようにお礼を言うと「ちっ……近過ぎない!?」と、少し顔を赤くしたイロハに睨まれた。
ー可愛いなー
どうやら、イロハはこう言う事には慣れていないようだ。「これぐらいの距離は普通だと思います」と言えば「そうなの?」と、簡単に騙されるイロハは心配ではるが、それなら俺が守れば良いだけの事。
「うん。手加減は要らないな」
「ん?何か言った?」
「──何も。では、有難く、お茶とお菓子をいただきます」
と、俺はイロハと並んでソファーに座ってお茶とお菓子を食べ始めた。




