表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
贄の令嬢はループする  作者: みん
❋ループ編❋
7/83

二度目の誕生会

今世の私は、ハロルド様を庇って怪我をしない事。


これが婚約者にならない為には必須だろう。だからと言って、狙われていると知っていて何もしない、見て見ぬふりをする事はできない。それでハロルド様が死んでしまったりしたら………いや、喩えそれで死ななくても、私はきっと後悔して、ずっと引き摺ってしまうだろう。







******



今日は第二王子ハロルド様のお誕生会当日。

一度目の時と同じで、私は侯爵令嬢として、両親とともに王城へとやって来た。前回の時と少し違うとすれば、前回で身に着けていたエメラルドグリーンの宝石のブレスレットではなく、ラベンダー色の宝石が付いたブレスレットをした事。


エメラルドグリーンはハロルド様の色で、ラベンダー色は私の色だ。


前回の時は、それがハロルド様の色だとは気付かずに着けていたのだけど、婚約が調った後、私がエメラルドグリーンを身に着けていた事が嬉しかった─と、言われたからだ。ただ、それは私だけではなく、誕生会に出席していた令嬢達は、ドレスが緑色だったり、もっとあからさまに、その色を身に纏っていたから、誰にでも言っていた事かもしれないけど。でも、そう言われた時は、“私の事を見てくれていた”なんて……素直に喜んでいた。


兎に角、今回は、ハロルド様の色は身に着けずにやって来た。そして、前回と同じように両親と一緒に参加している人達に挨拶をしたり話をしながら、今日の主人公である第二王子がやって来るのを待つ。ふりをしながら、私はある人物を探す。

それは──ハロルド様を殺そうとした人物だ。


ハッキリと覚えている。


国王陛下の指示で行われた抜き打ち監査の際に領地での横領や人身売買が発覚し、爵位と領地を取り上げられた元伯爵。完全なる逆恨みだった。彼は、勿論この誕生会には招待などされていなかったし、持ち込んではならない短剣(武器)を持ち込んで犯行に及んだのだ。


ー見付けたー


前回と同じで、この誕生会の給仕係の格好をして、この会場に紛れ込んでいた。ハロルド様はまだ姿を現してはいない。


ー今のうちだー


両親が、仲の良い侯爵夫妻と話している間にその場からソッと離れて、この会場の警備をしている騎士の1人に近付いた。



「すみません、少し…良いでしょうか?」

「はい。何でしょうか?」


人好きのする爽やかな笑顔を浮かべる騎士。前回の時もそうだったけど、とても感じの良い人だ。


「あの…あそこに居る給仕係の方なんですけど、短剣のような物を持っていたように見えて…少し気になったので、お伝えしておこうかと思いまして……」

「短剣……」


その騎士は、笑顔のままで視線だけをその給仕係に向ける。そのまま数秒見つめた後、また私に視線を戻した。


「ありがとうございます。私も気になるところがあるので、注視しておきます。ご令嬢は、念の為にあの者には近付かないようにして下さい。」

「分かりました。」

「では、お誕生会を、お楽しみ下さい。」

「ありがとうございます。」


お礼を言って、私がその騎士から離れると、その騎士は違う場所に待機している数名の騎士に声を掛け、周りには気付かれないように静かに動き出した。


ーこれで、私が庇わなくてもハロルド様が死ぬような事にはならない筈だー


それから両親の元へと戻り、後は、あの給仕係の人に近付かないようにしながら、両親との会話を楽しんだ。





その結果──



ハロルド様が会場に姿を現し、参加者から挨拶を受けている最中に、給仕係が短剣を握り締めハロルド様の近く迄やって来た時、その背後から先程の騎士が短剣を持っていた手を捻り上げて短剣を奪い取り、給仕係をそのまま地面に叩き付けた。

あっと言う間の出来事だった。ハロルド様は勿論の事、この場で誰一人怪我をする事なく、その給仕係は捕まったのだ。


少しざわついてはしまったが、この誕生会を仕切っている王妃陛下の素早い対応で、落ち着きを取り戻し、誕生会は予定通りに執り行われた。


ーこれで、私の未来も…良い方に変わったかしら?ー


ハロルド様とは、両親と並んで挨拶をしただけ。軽く頭と視線を下げたままだったから、あの緑色の瞳と視線が合う事もなかった。


『ハウンゼント嬢も、このパーティーを楽しんで下さい。』


と、当たり障りのない挨拶をされただけ。


「ありがとうございます。」


と、私もお礼を言っただけ。



今回のハロルド様の誕生会は、穏やかに時間が過ぎ終わった。



ーこれで、ハロルド様との縁は…繋がる事はないだろうー


誕生会がお開きになり、会場の入り口で、帰って行く参加者を見送る王妃陛下とハロルド様。2人の前を、頭を下げてから退室して行く。私も、そのうちの1人でしかない。


最後の最後まで、ハロルド様と視線が合う事はなかった。





******



ハロルド様の誕生会から3日後。


「有力候補は、やっぱりエレオノール様かしら?」

「じゃないかなぁ?公爵令嬢だし、何よりも綺麗な方だから……」


今、学園では、“第二王子の婚約者には誰がなるのか”と言う話題で持ちきりだ。今の所の第一有力候補は、公爵令嬢であるエレオノール様。前回も今回でもあまり接点はないけど、性格はサバサバとした令嬢らしい。


ハロルド様の好きになるタイプではない──とは……口に出しては言えないよね……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ