それぞれの夜
いいね、ありがとうございます。
私達が王城に戻って来てから1時間程してから、フィル達も王城へと戻って来た。
「少しだけ──」と言って、フィルと2人きりになり、ギュウギュウと抱きしめられた。
王太子殿下にキッチリ浄化してもらっていたから、スッキリはしていたのだけど、こうしてフィルに抱きしめられると……恥ずかしいけど安心して心も落ち着いた。
「もっとゆっくりイヴと一緒に居たいけど…やるべき事はさっさとやって、片付けて来る」と言って、フィルはまた部屋から出て行った。そして、私はまた明日にでも話を訊くからと言われ、今日は浮島に戻り、ゆっくりする事となった。
浮島に戻ると、イロハもやって来て、2人で一緒に夕食を食べた。イロハも今日はゆっくりして、明日、私と一緒にフィルの執務室に行く予定だ。
「イロハもお疲れ様」
「私はフィリベールさんに文句を言っただけだけどね。後は、あの馬鹿女が自滅したって感じかな?空っぽなプライドしかないくせに、やすやすと王族の身分まで使って“親も共犯です”って教えてくれたしね。本当に…馬鹿王女だったわ…」
そのジュリエンヌ様はと言うと、フィル─竜王に媚薬を盛った事を認めたそうで、その場で気を失わされ、今は王城の地下牢に入れられているらしい。
そして、今回の事に関して親であるトワイアルの国王両陛下も関わっている事も、ジュリエンヌ様本人が認めたそうだ。
これで、トワイアル王国の王族は排除され、新たな王が立つ事になるだろう。暫くの間は、フィルもトルトニアの国王両陛下と王太子殿下も忙しくなるだろう。
「その話はまた明日にして……」
と、それからは、気分を変えるかのように学園の話や、また行きたいお店の話などをしながら、少しだけ夜更しをして楽しんだ。
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「トワイアル王女の所持品に、2本の小瓶がありました。今、研究所で分析してもらってます」
「分析している者は──」
「勿論、竜心で結ばれた旦那が居る者がしています」
「なら大丈夫だな」
2本の小瓶─おそらく、1本は俺に盛った媚薬で、もう1本はイーリャの実だろう。今現在、大陸中でイーリャの実の有無を確認させてはいるが、今のところ“見付かった”と言う報告はない。
今、報告をしに俺の執務室にやって来たのは宰相のアラール。ニノンは今、ジュリエンヌの身体チェックなどをしている。ハロルドにはオーウェンを付けている。
「ちなみに、第二王子からも、小瓶1本が出てきました。本人の言う通りならば、媚薬ですね。どれ程のレベルのモノなのか……こちらも、研究所で分析してもらってます」
「……へぇ………あの馬鹿王子、イヴに…媚薬を盛ったのか…………」
「申し訳ありませんでした!」
勢い良く頭を下げて謝罪するのは、トルトニアの王太子─メレディス。本当にあの馬鹿王子と兄弟なのか?と訊きたくなる程のマトモな王子だ。あの馬鹿王子と同じ色を持ちながら、他は全て違う。立派な国王に似ていて武に長けていて誠実。俺もアルピーヌもトルトニアの国王と王妃と王太子の事は気に入っている。
「メレディス、お前が謝る必要はない。イヴ─エヴェリーナからも、そう言われただろう?悪いのはメレディスではなく、ハロルドだと。ん?“気持ち悪い”だったか?」
「あー、はい。“悪い”のも“気持ち悪い”のも……ハロルドです。本当に……あそこまで気持ち悪い奴だったとは………アレでも、以前は勉学に励みしっかりしていたんです。将来、王となった私を支えたいと……父も母も…甘やかす事もなく……それがどうしてこんなにも………阿呆…愚かな者になってしまったのか……」
確かに、少し前までは、あの馬鹿王子も特に問題は無かった。ただ、過去の四度とも、やっぱり最後は馬鹿女と一緒になってイヴを死に追いやったのだ。
「確認だが、その第二王子は俺の番に手を出した。俺からと、トルトニア王妃の言葉を無視をして。今、地下牢に放り込んでいるが…そのまま、ここで預かると言う事で良いな?」
「勿論です。もともと、愚弟が行動すれば、竜王国で処罰を受けさせると言う約束でしたし、行動を起こした段階で、愚弟がトルトニアの地を踏む事は二度とないと思っていましたから。トルトニアとしては、竜王陛下のいかなる処罰も受け入れる所存です。」
ー本当に…マトモだー
「分かった。それでは、第二王子はこれから竜王国預かりとする。色々調べる事もあるから時間は掛かるかも知れないが、処罰が決まり次第トルトニア国王に知らせよう」
「承知致しました。どうぞ…宜しくお願い致します」
メレディスからの話も訊きたい為、メレディスにも暫くの間竜王国の王城で過ごしてもらう事になり、今日のところはゆっくり休んでもらう為に客室へと案内させた。
「イヴの様子はどうだ?」
「侍女の話によると、イロハ様とお喋りしながら、そのまま一緒にベッドで寝てしまったそうです」
「一緒に…………」
ー何て羨ましいー
「寂しいなら、陛下もアラスターと一緒に寝ますか?」
「何故そうなる!?」
「ははっ…冗談ですよ。兎に角、エヴェリーナ様とイチャイチャしたいなら、明日からもキリキリ働いて下さいね。」
“イチャイチャ”
何だろう……普段真面目なアラールが言うと恥ずかしく聞こえる。
「あーうん。イヴとの時間の為に…」
「はい。では、本日は陛下もお休み下さい。私もこれで、失礼致します。」
と、アラールは笑顔のまま部屋から出て行った。




