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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋新しい未来へ❋
55/83

ハロルドとメザリンド

いいね、ありがとうございます。

「フィル、おかえりなさい」

「っ!!イヴ、ただいま!」


今日の執務を終えて浮島の邸に帰って来ると、ブルーグレーの髪をゆらゆらとさせながら、俺を出迎えてくれたのはイヴ。この邸に居ると分かっていても、出迎えてくれる度に嬉しいと思うし幸せだとも思うし……安心もする。


ー本当に、イヴがここに居るんだー


それから、もっとイヴの存在を確かなものにしたくて、いつも「ただいま」と言った後に必ず抱きしめる。すると、イヴは必ず「ゔっ─」と変な声を出すけど、それすら可愛い。それから少し顔を赤くしながら、俺の背中に手を回してポンポンと優しく叩いてくる。


ー可愛いー


“ポンポン”って何だ?可愛いから問題ないが、ある意味可愛過ぎて問題あるからな?─とは、ひかれそうだから、口にはしない。


兎に角、春休暇に入ってから、毎日幸せな日々を送っている。

まぁ…同じ敷地内にあの女が居ると思うと……腹立たしいものはあるが、今の所、あの女には会っていない。毎日毎日神殿で、主にアルピーヌ主導の巫女の訓練とやらを受けているそうだが、どうやら、今世では巫女としての力が強くなる感じは無いそうだ。

当然の結果だろうと思う。あの女は、この世界を壊してしまうような事を四度も行って、五度目の今回もやろうとしているのだ。女神から見放されてもおかしくはない─と言うか、五度も変わらず聖女、巫女となれた事の方がおかしいと思う。




『アレでも、この世界の人間の1人ですからね。全てを変えてしまっては、どんな影響があるか…分かりませんから…』



アルピーヌは苦虫を噛み潰したような顔で言っていた。

喩え神であっても、万能では無いのか─と思った。



四度も俺に噛み殺されたイヴ。

それでも俺を受け入れてくれたイヴ。

必ずイヴを幸せにする。


そして、あの2人には─────









******



「トルトニアの第二王子が、実行したようです」

「そうか……それで、メザリンド嬢は大丈夫だったのか?」

「はい、メザリンド嬢には何も危害を加えられたりはしていません。事前に把握していたので、きっちり()()をして合わせてくれたようです。後は、竜王国(こちら側)で付けていた者が処理をしました。トルトニアの国王は把握済みで、今は第二王子を泳がせている状況です」

「ふん……第二王子(アレ)は、本当に愚か者──クズだな」


馬鹿王子は、あの誕生会の時に俺からと王妃から釘を刺された筈なのに、あの女の誘いに迷う事なく飛び付いた。あの女との距離を縮めておきながら、イヴへの執着を捨てていなかったのだ。


馬鹿王子は、メザリンド嬢の邸で使用人として働いているある男爵家の子息を唆し、メザリンド嬢に媚薬を盛り既成事実を作らせて、自分との婚約を解消させようとしたのだ。事前に把握していた為、侯爵側には伝えた上で、騙されたようにしてもらうようにお願いしておいた。そして、その通りに、メザリンド嬢は媚薬が盛られた食事を食べたフリをして、その使用人を寝室へと誘導してベッドに押し倒した──ところで、俺達が付けていた者が、その使用人をキッチリと拘束して縛り上げた。


侯爵夫妻が数日間留守で、メザリンド嬢がより孕みやすいと言う日を指示され事に及んだのだと。メザリンド嬢が自分の子を孕めば、自分が次期侯爵の座を得られる─と唆されたそうだ。

実際の話、四度目の時に、メザリンド嬢は男爵家の子息との子を孕み、馬鹿王子の婚約者候補から外れたとイヴが言っていた。その時も、そうだったんだろう。

勿論、それでその使用人が侯爵の座に就ける事はなかった筈だ。今世でも、その使用人が侯爵の座に就く事はなく……腐ってはいるが王族の婚約者に手を出したのだ。そのまま処刑となるだろう。

そして、トルトニアは親としてではなく、国王と王妃として第二王子を切り捨てる選択をした。トルトニアは、王太子が優秀だから、馬鹿王子を切り捨てたところで、特に問題はないだろう。国王と王妃が馬鹿王子を窘めていた事も知っている。だから、トルトニアは馬鹿王子だけで()()()()事にした。


「さて…これからあの馬鹿王子は…どんな行動に出るんだろうな?」


馬鹿王子とあの女は、使用人が成功したと言う偽の報告を受けて信じ切っている。勿論、トルトニアの国王は馬鹿王子とメザリンド嬢との婚約を解消させた。そのメザリンド嬢の今後については、トルトニアと竜王国とでキッチリとフォローする予定だ。


「そろそろ、フィリベール=スコルッシュとして、あの女の前に現れるべきか?」

「そうですね。王女殿下も最近イライラしているようですから、そろそろ進めても良いかもしれませんね」


できる事なら、あの女など二度と目にしたくはない。話したくもない。声すら聞きたくもない。


「いっその事、やってしまうか?」

「………陛下………………」

「本気だけど冗談だ………」

「………陛下………………」


俺を諌めているようで、アラール(お前)も口は笑っているからな?




ーあぁ、本当に面倒くさいー









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