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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋新しい未来へ❋
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春休暇

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『春の長期休暇の間、黒龍の巫女の見習いとして、竜王国で過ごす事をお許しいただけますでしょうか?』



ジュリエンヌ様から、そう書かれた手紙が届いたのは、フィルと庭園でお茶をしながら話を聞いた翌日だった。




「勿論受け入れてやる。アルピーヌとマリーとアルマにも伝えてくれ。“しっかり頼む”と」

「承知しました。」


そう言うと、宰相様はすぐに執務室から出て行き、ニノンさんがジュリエンヌ様への返事の手紙を書き出した。


「ジュリエンヌ様を受け入れると言う事は、王城で過ごす事になるんですよね?」

「そうなるな。腐っても王女だからな。それに、手元に置いておいた方が監視しやすいのもあるな」


と言う事は、今世でもやっぱり、ジュリエンヌ様と顔を合わせる可能性があると言う事だ。

ハロルド様とは違って、フィルが私を裏切るなんて事はないと思うけど……2人並んだ姿を想像すると……美男美女でお似合いだなんて……勝手に思ってしまっているだけなのに、モヤモヤした気持ちになってしまう。


「黒龍の巫女見習いとして来るから、王城と言うよりは、敷地内の奥にある神殿で過ごす事になる。そこで……アルピーヌとマリーとアルマが喜んで相手をしてくれるだろう」


マリーさんとアルマさんは、竜人の黒龍の巫女で、過去の記憶はないそうだけど、過去の4回とも、竜王から番だと紹介されたにも関わらず、ジュリエンヌ様に対して距離を取って接していたそうだ。


「黒龍を守る者として、あの女は番ではないと、本能的に感じていたのかもしれないな」


と、フィルが言っていた通りで、私がフィルの番となって暫くしてから2人を紹介された時、2人とも涙を流しながら喜んで私を迎え入れてくれた。「これで、若き王も安心、安泰ですね」「先代の竜王陛下も、きっとお喜びですよ」なんて言っていたから、きっとあの2人の巫女も見た目が若いベテランの巫女なんだろう。

見た目、私と年齢が同じに見えるフィルも、まさかの50歳オーバーだった。


「私は……その間は学園の寮で過ごせばい──」

「イヴは、浮島の邸で過ごすようにしてあるから。毎日必ず浮島の邸に帰るから、邸で待っていて欲しい。勿論、昼間はニノンかオーウェンと一緒なら街に出たり好きな事をしても良いから。」

「わ…分かった。えっと…浮島の邸で、お世話になりますね」


素直に頷くと、フィルは嬉しそうに笑ってくれた。

勿論、私だって、フィルと一緒に居られる事は嬉しい。


「それと、その春休暇の間に、イヴに見せたい本もあるから、時間のある時にでも見て欲しい」

「見せたい本?」

「前に話した事だけど、“古代龍の言葉の書”だ」


“古代龍の言葉の書”


世界最強の黒龍に何かあった時に、黒龍を止める為に作られた言葉で、黒龍の番だけに継承されるモノだ。

番としてその言葉をしっかり覚えようとは思っているけど、私が生きている間使う事が無い事を願う。


「直ぐに覚える自信はないけど、ゆっくり…頑張って覚えますね!でも……その言葉を使わせないようにして下さいね!」

「それは、イヴが俺の側に居てくれる限り、使わせる事はない。」


頬に手を添えられて、軽くキスをされた。

初めてキスをしてから、フィルはサラッと流れるようにキスをして来る。何度されても私は慣れないし、心臓が爆発するんじゃないかと思うぐらい騒ぐのに、フィルはいつも涼しい顔をしている。


ー何となく…悔しいー


いつか、フィルにも仕返ししたい─と思っている。驚いた顔のフィル……うん、見てみたい!



なんて、軽い気持ちでフィルへの仕返しを考えていた私が、その事を後悔するのは、もう少し後の話である。




「イヴが可愛いのが悪い」

「何でそうなるの!?」












*****



「本日より、宜しくお願い致します」


春休暇に入ってから3日目。

ジュリエンヌ様が竜王国へとやって来た。


“時間の無駄になるから、トワイアルには帰って来なくて良い”と、トワイアル国王からも言われたらしく、トワイアルには帰らず、そのまま竜王国の王城へとやって来たそうだ。

そこで、ジュリエンヌ様を出迎えたのは、大神官様とマリーさんとアルマさんと宰相様。

その4人の面子に、ジュリエンヌ様は一瞬だけ顔を顰めたそうだけど、その次の瞬間には微笑みを浮かべながら挨拶をしたらしい。


「竜王らしき人物が居なかったのが、気に食わなかったんでしょうね。王女であったとしても、誰が、あの女の為に陛下が態々出迎えると言うのか…“我一番”と育てられた王女は()()性格をしていますね」


宰相様が、毒舌全開だった。


その後は、そのまま王城を突き抜けて、敷地内の奥にある神殿へと案内されて行ったそうだ。


「一国の王女様なのに…そんな対応をして大丈夫なんですか?」と訊けば、「王女である前に、自分で“黒龍の巫女見習いとして”と言って来ているので、何の問題もありません」と、ピシャリッと宰相様が言い切った。


その時の宰相様の笑顔は、とても綺麗だった。





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