表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
贄の令嬢はループする  作者: みん
❋ループ編❋
5/83

一度目の終わり

「ハウンゼント嬢、申し訳ありませんでした。」


部屋を出て暫く歩いてから、私の前を歩いていたハロルド様の侍従─アナトルが立ち止まり、勢いよく頭を下げた。


「頭を上げてください。アナトル…貴方も知らなかったのでしょう?」

「何と…お詫び申し上げれば良いのか………」

「ひょっとして…今、国王両陛下は不在なのですか?」

「左様でございます。王太子殿下も一緒に、後3日はお戻りにはなりません。」


ーなるほど。それ故の…今日なのかー


婚約()()とは…また大きく出たな─と思ったけど…国王両陛下だけではなく、王太子殿下までもが不在とは…。今回の事に、トワイアル王国側がどこまで把握して、どこまで関与しているのか。流石に、この3日で何かをして来る事は…ないだろうけど……。


「それでは、国王両陛下がお戻りになられたら、謁見の許可を得られるようにしていただけますか?父と一緒に……。」


「承知致しました。必ず。」


アナトルと約束をした後、私は急いで邸へと帰る為に馬車に乗り込んだ。









予定よりも早い時間に帰って来た私を、家令のワイアットが少し驚きつつも、お願いをするとサロンにお茶の用意をしてくれた。そこで、話があると座ってもらい、ハロルド様から言われた事を全て話した。




「────なるほど……何たる侮辱でございましょうか………」


ふっ─と笑った後


「そこまで頭に花が咲いているとは……思いませんでした。そうですか………久し振りに……腕が鳴りそうです。直ぐに、旦那様に連絡を取ります。」


「お…お願い…するわね……。」


そう言うと、ワイアットは不敵な笑みを浮かべながらサロンから出て行った。いつも温厚で冷静沈着な家令のワイアット。父が一番信頼を寄せているのも知っている。父が幼い頃からずっと側に居るそうだ。


「………」


兎に角……私1人では何もできないから、今はおとなしくしているしかない。トワイアル王国だけではなく、竜王国が出て来るかもしれない。その竜王国の動き次第で……私もどうなるのか………。


ー私は、何もしていないのにー


おそらく、それを証明するのは…ある意味簡単なのだ。ジュリエンヌ様も、それは分かっている筈なのに。だから、余計に、さっきのジュリエンヌ様の沈黙が不気味なものに思えたのだ。


「念の為、外の警備を増やしておきます。」とワイアットもいつもよりピリピリとした空気を纏わせていた。私は不安な気持ちを隠すように、いつもより早目に夕食をとり、いつもより早目にベッドに潜り込んだ。寝室には、いつもとは違う香りが漂っている。ワイアットが気を利かせてくれたのかもしれない。


ー眠れるかしら?ー


なんて思っていたけど、精神的にも疲れていたせいか、ベッドに入って暫くすると、強張っていた体から自然と力が抜けていき、うとうとと、眠りに落ちていった。




「────お嬢様!」




眠りに落ちる前に、微かに耳に入って来たのは……どこか焦ったようなワイアットの声だった。












******



「─────」

『────』


誰かの話し声がして、意識が浮上する。


ツキン─と頭痛がして、体が重たい。何故か、体が思うように動いてくれない。何とかして動いたのは目だけだった。


ーえ?ー


寝起きだからなのか、視界がいつもよりボヤケているけど、今私が居る場所が、私が寝ていた自分の部屋ではないと言う事は分かる。しかも私はベッドではなく床に横たわっているようだ。


ーここはどこ?何故、体が動かないの?ー


どうやら、声も出ないようだ。ならば─と、目だけをキョロキョロと動かして、辺りの確認をする。


「───っ!?」


そこでようやく、視界がハッキリして、私の目に飛び込んで来たのは───



ー竜!?ー



真っ黒なその体は、3m程は優にあるだろうか。

グルグルル─と、地を這うような唸り声を出している。初めて目にする竜に、初めて耳にするその声に、恐怖が沸き起こる。


ーどうして…私はこんな所に!?ー




「───さぁ、***。アレが……にえですわ。********!」


ー誰か…居る?ー


よく見ると、その竜の前にフード付きのマントを来た誰かが居た。声からすると女性だろう。


ー助けて!ー


“────にえですわ”


にえ……にえ………贄────!?



そう気付いた時には、その竜が私の目の前迄来ていて、恐ろしい程の眼差しで私を見下ろしていた。


ーあぁ………どうして…ー


その竜が、ゆっくりとその大きな口を開けていく。ふと、その時、その竜と視線が合った。その大きな体と同じ黒色の瞳だ。その目が、少し大きく見開かれた?と思った瞬間─────


「────っ!!」


視界が真っ暗になり、体に激痛が走り───





私の意識はそこで途絶えた。












『わた──の───い。』


『───どうか………正しい路に……』


『でなけ────から。────どうか……』








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ