表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
贄の令嬢はループする  作者: みん
❋新しい未来へ❋
49/83

フィリベール③

いいね、ありがとうございます。

あの女が、イーリャの実を使用していた事が分かった。アレを禁止したのは遥か昔だ。一体どこでソレを知って、その実を手に入れたのか。


エヴェリーナは「甘い香りがした」と言った。おそらく、俺が、過去のあの女に対して香っていたと思っていた香りだろう。

あの甘い香りには抗う事ができなかった。今思えば、あの香りがする時は…思考が鈍り、記憶も曖昧になっていた。二度目以降、何とか回避しようとしたけど、結局はイーリャの実にやられて……


「今世でも、更に動いてくれないだろうか?」

「陛下………」


正直、あの2人が動いてくれた方が、こっちは堂々と叩き潰す事ができるのだ。腐っていてもあの2人は王族。


「まぁ…兎に角、トワイアルの王家の交代は確実だから、今から相応しい者を探さなければいけないな。」

「それでしたら、カデライル侯爵に任せましょう。彼なら、適任者を見付けてくれるでしょう」


カデライル侯爵─竜王国学園の寮長の旦那で、俺の父の側近だった1人だ。


「そうだな。直接話して頼みたいから、登城するように手紙を出してくれ」

「承知しました」


そうして、五度目の今世は、過去4回の流れとは全く違う路を進んでいる。これが、“正しい路”であると、信じて───








******



エヴェリーナが、俺の竜心と共鳴して番になってから10日。数日前から固形物も口にする事ができるようになり、部屋からも出て、庭を散歩したりもしているそうだ。今の所、見た目も精神的な事も特に問題は無いとの事だった。

とは言え、問題は、黒龍(オレ)に会った時にどうなるのか──だ。


「────」


フィリベール=スコルッシュとしては、嫌われてはないと言う自信は………ある。

竜心が取れた時のエヴェリーナの様子からして……大丈夫だと……思いたい……。


「はぁ────」


ー番になる前の方が……毎日エヴェリーナに会えていたのにー


番になった途端に会えなくなった。あの可愛らしい声すら聞いていない。あの綺麗なブルーグレーの髪すら目にしていない。コツン─と、座ったまま机に突っ伏す。


「………会いたいなぁ…………」


「────」


「ん?」


ーあれ?この部屋に、花なんて飾ってあったか?窓は…開けてなかったよな?ー


風もないのに、気持ちが落ち着くよな優しい花の香りがする。何の花だった?いや、花の香りだけじゃなくて……


「ん?」


ガバッと顔を上げると、そこに───


「エヴェリーナ??」

「…はい」


俺の目の前に、エヴェリーナによく似た子が居る。ブルーグレーの髪に……これまたエヴェリーナと同じラベンダー色の瞳だ。

そして、何故か手には焼き菓子らしき物が入った籠を持っている。


「え?俺、ついに幻……白昼夢でもみてしまっているのか?」

「ま…幻?白昼夢??」


目の前に居るエヴェリーナらしき人物が、困ったようにコテンと小首を傾げると、そのブルーグレーの髪もサラサラと揺れる。なんともリアルな幻だ。


「えっと…フィ─竜王陛下、休憩がてらに……お茶でもしませんか?」

「え?声までエヴェリーナ?」

「え?」

「「……………」」


「エヴェリーナ!?」

「そうです。エヴェリーナ=ハウンゼントです。」

「え?何故…執務室(こんな所)に!?他に…ニノンは…どうした?」


黒龍(オレ)に、エヴェリーナと物理的にも距離を取れと言っていたニノンすら居らず、エヴェリーナ1人だけが俺の目の前に……居る!?


「あの…取り敢えず、一緒に……お茶しませんか?あの……このお菓子…作って来たんですけど…要らな───」

「うん。すぐ食べよう!今すぐ食べよう!」


喰い気味に反応した後、ハッと我に返り、慌ててエヴェリーナを見ると、ビックリしたような顔をした後、フワリと花が綻ぶように笑った。


「くっ…………」


ー可愛過ぎる!ー


「それじゃあ、()()()()は、そこに座って下さい。お茶の用意をしますね。」


()()()()”──


ー前は…“フィリベールさん”と呼んでくれていたのにー


取り敢えず、今は気を落ち着かせて椅子に座り、目の前にいるエヴェリーナを見つめる。


軽く視線を下に向けてお茶を淹れて、籠から焼き菓子を出して……俺の対面の椅子に座った。

用意してくれた焼き菓子は、以前、俺が好きだと言った物だった。


「やっぱり、美味しいな。ありがとう、エヴェリーナ」

「いえ……」

「ところで……俺は…エヴェリーナと会えて嬉しいんだけど……その……大丈夫…か?」


多分、俺に会いに来る前に、ニノンから色々話を聞いているはずだ。


「大丈夫…だと思います。勿論、噛み付かれた記憶はありますけど……それでも…私の為に抗ってくれた竜さんや、留学生の私を守ってくれたフィリベールも知ってますから。それら全てが……フィリベールさんですから……でも…そうですね……四度も噛み殺されましたから、そのうち……いつか、仕返ししてやろうかな?何て……思ったりもしてたりします。ふふっ」


ー“仕返ししてやろうかな?”とか、ふふっ─と笑うとか……可愛いしかないなー





仕返し───寧ろ………大歓迎なんだが?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ