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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋新しい未来へ❋
47/83

フィリベール①

いいね、ありがとうございます。

「エヴェリーナ様は、四度も黒龍(陛下)に噛み殺されてますから。トラウマになってない─とは言い切れません。ですから、少しずつ、距離をつめて行った方が良いかと…」



ニノンの言う通りだと思った。



今でもハッキリと覚えている。


番を噛んだ感触

俺の腕の中でぐったりとしている番の重み

竜化した俺の手で掴んだ時の小ささ



殺した側の俺でさえ、未だに恐怖を感じる事もあるのだから、番として受け入れてくれたとしても、フィリベール=スコルッシュではなく、改めて黒龍として対面した時、エヴェリーナがどんな反応をするのかは……本当に分からない。


ただ、竜心が吸収されて消えた時は、もう死んでも良いぐらい嬉しかった。


ー絶対死なないがー


思わず抱きしめてしまった。

抱きしめたエヴェリーナは……温かかった。ただそれだけで、泣きそうになった。生きて、俺の腕の中に居るんだ───と。抱きしめし過ぎて「死ぬ」と言う言葉がエヴェリーナの口から出た時は焦ったが、それでも離す事はできなかった。

その後、エヴェリーナが倒れてしまった事で、ニノンとイロハに無理矢理離されてしまったが……。




「フィリベールさん、暫くの間はリーナとは距離を置いて下さいね。リーナは、この短期間で色々な変化があって、心が追いついていない可能性がありますからね。様子をみながら、距離を縮めて行った方が良いと思います」


そう言ったのは、異世界からやって来た大聖女イロハだ。過去の出来事を知っている者の中で、唯一の人間(ひと)族。だからか、エヴェリーナとイロハは気が合うようで、2人はとても仲が良い。考え方や価値観が似ているのかもしれない。

人間からすれば、番がどんな存在なのか…イマイチ分からないんだろう。一時だって離れたくないぐらい愛しくて大切な唯一無二な存在。


そんな番を……四度も自らの手(正しくは“口”だが)で殺めた。自分でも、よく精神が壊れなかったな─と思う。それも……父上と母上のお陰だろう。

自分が亡くなる迄、「(こども)を愛している」と言い続けた母上。その母上の気持ちを最優先して俺に愛情を注いでくれた父上。番を喪っても我を失わなかった父上は、本当に素晴らしい父であり竜王でもあった。俺は、そんな両親に恥じないような…竜王になりたい。

そして、五度目の今世では、必ずエヴェリーナを幸せにする。勿論──


あの2人には────













******



「フィリベール!!ついに来たよ!」

「伯父上?何が来たんですか?」


1年程前のある日、竜王(オレ)の執務室に飛び込んで来たのは、母上の兄のアリソン=ガーナード。ニノンの婚約者でもある。


「これを……」

「?」


手渡されたのは、竜王国の学園宛の手紙だった。その手紙を開封すると、何故か懐かしいような香りがした。


手紙の内容は、お決まりの挨拶から始まり、竜王国の学園に留学したい。ギリギリの申請になり申し訳ありません。どうか、宜しくお願い致します──


「────“エヴェリーナ=ハウンゼント”!?」

「そう!ハウンゼント嬢だ!彼女が、竜王国(ここ)に留学したいと、今朝、この手紙と共に申請書が届いたんだ。ようやく……未来が変わって来た」


五度目にして、ようやく、()()()よりも先にエヴェリーナに会える。

ただ、竜王国への留学のレベルは他国に比べて高い。喩え、エヴェリーナが竜王(オレ)の番だとしても、そのレベルがなければ受け入れる事はできない。


ー兎に角、レベルがなければないで、他に策を練れば良いかー


伯父上は学園のルール通りにエヴェリーナに課題を送った。その結果、エヴェリーナは実力で留学のキップを手に入れた。







******



「私は、エヴェリーナ=ハウンゼントと言います。こちらこそ、宜しくお願いします。」


ニコリと微笑んで軽く頭を下げると、ブルーグレーの髪がサラリと肩から滑り落ちた。そして、次に顔をあげると…そこには──ラベンダー色の瞳があった。


ーようやく、この瞳に俺が映ったー


今すぐにでも抱きしめたい

今すぐにでも連れ去りたい

今すぐにでも閉じ込めたい


色んな欲望が顔を出し───そうになる度に、イロハとニノンから……殺気を飛ばされた。


可愛いしかないエヴェリーナ。エヴェリーナが微笑む度に…顔と気持ちが緩んでしまわないようにグッと顔に力を入れる。




「そうなんですね。では……スコルッシュ様、私の事は“エヴェリーナ”と呼んで下さい。これから3年間お世話になるので……仲良くしてもらえると…嬉しいのですけど……。」


ーぐっ…まさかの名前呼びの許可!喜んで!ー


「─────っ!も……もち……分かりました。では、俺の事も………………“フィリベール”と呼んで下さい……」

「えっと…無理してませ──」

「大丈夫です。無理はしてません。」


ー無理どころか、“フィル”と呼んでもらっても良いけどな!!ー


「……では…私も名前呼びさせてもらいますね。」


若干困った様な顔をしていた気がするが、それは気にしない。困った顔でさえ……エヴェリーナは可愛かった。






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