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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋竜王国編❋
41/83

違和感

いいね、ありがとうございます。

「貴方が……俺の番だ……」


抱きしめた彼女からは、甘い香りがした。





相手が番かどうか、どうして分かるのか?それが疑問だったが、番持ちは必ず同じ事を口にしていた。


『会えば分かる』



ーなるほど、こう言う事かー


甘い香りには抗えない。彼女から目が離せない。まさか、こんなにも早くに番に出会えるとは思っていなかった。


運良く、ジュリエンヌの選定の順番が最後だった為、俺はそのまま彼女を俺の執務室まで連れ帰った。そこでは、番であるジュリエンヌを、皆が喜び受け入れてくれた。



ある3人を除いては───








「トルトニアへの留学は、前から決まっていた事なので、行きたいのですが…駄目ですか?」


「…………」


それは、番であるジュリエンヌからの初めてのお願いだった。ずっと一緒に居るのに、まだまだ心が満たされなくて、ずっと一緒に居たいと思っているのに、ジュリエンヌは平気で俺から離れようとする。どうして?と思うが、ジュリエンヌは竜人でも獣人でもなく人間(ひと)だから、番と言う存在がどんなものなのか、理解しきれていないんだろう。

確かに、ジュリエンヌはまだまだ若い。これから学ぶべき事もたくさんあるだろう。番であるジュリエンヌの願い事なら、何でも叶えてあげたいが……。


「辛い事かもしれませんが…1年ですから……行かせてあげてはいかがですか?その間は……私が竜力を()()()ますから。マリーとアルマも助けてくれますから……」


そう言って、ジュリエンヌの留学を勧めたのは大神官のアルピーヌだった。

このアルピーヌとマリーとアルマの3人は、何故かジュリエンヌとは少し距離を置いているようだった。


「大丈夫だと思いますけど……離れて心配なようでしたら……竜心を…彼女に渡せば良いでしょう?」

「………」


“竜心”


番や伴侶を得ると、琥珀色を帯びた鱗ができる。一生涯に1枚だけの特別な竜心(うろこ)。ジュリエンヌと言う番が現れたのにも関わらず、その竜心が…ないのだ。


まだまだ俺が未熟だから─


大き過ぎる竜力が、まだ身体に馴染んでいないから─


相手の番も、まだまだ幼いから─



色んな理由が考えられたが、原因は分からないままだった。

1年我慢すれば、後はジュリエンヌを囲い込める。

そう思った俺は、竜心ではないが、鱗を1枚取って“お守り”としてジュリエンヌに渡し、1年だけの留学を許した。


竜力の強い竜の鱗は、1枚あるだけでもその存在感を発揮する。ただ……人間(ひと)族には殆ど影響はないようで、魔力が強くて実力のある騎士か、一部の王族ぐらいだが……。竜人と獣人には牽制する事はできる。





「帰って来るのを待っている」

「ありがとうございます。行って参ります」


フワリと微笑んだジュリエンヌを抱きしめたくなるのを我慢して、俺はジュリエンヌをトルトニアへと送り出した。







******



ジュリエンヌがトルトニアへ行ってから3ヶ月。


この辺りから、俺の魔力が落ち着いて来た。不思議だった。番と離れているのだから、暴走するのでは?と心配していたのに──

それに、どれ程一緒に居ても満たされる事がなかった心の渇きも、無くなって来ているような感じもするのだ。


ー何故だ?ー


理由は分からないが、魔力が暴走するよりはマシだろう─と、そう思う事にした。


結局、ジュリエンヌはトルトニアへ行ったまま、学園が長期休暇になっても竜王国に戻って来る事はなかった。




そして、ジュリエンヌが俺の元に戻って来たのが…


()()()だった───






その日、いつもより早目の時間に眠りに就いていたが、何となく心がざわつき夜中に目を覚ました。

すると、久し振りの、あの甘い香りがした。


「ジュリエンヌか!?」


あの甘い香りを間違える事はない。番が戻って来たのだと、俺は竜化して甘い香りのする方へと飛び立った。

俺が普段寝ているのは地上にある王城の一室だが、上空の浮島にある邸が俺のプライベートゾーンになっていて、そこから甘い香りがするのだ。番であるジュリエンヌには、転移魔法陣で行き来できるようにしてあったから、それを利用したのだろう。


浮島の邸に辿り着き、邸に入ろうとしたところで、違和感に気付いた。


ージュリエンヌ以外に、誰か居るのか?ー


甘い香りとは別の……穏やかな気配。気が緩むと、泣いてしまいそうになるような穏やかな()()。竜化している事を忘れて、そのままの姿で甘い香りのするホールへと入ると、そこには、やっぱりジュリエンヌが居た。


「ジュリエン────」


名を呼び掛けた時、ジュリエンヌから少し離れた所に床に横たわっている人間が見えた。

ブルーグレーの長い髪が床に広がり、キラキラと輝いているように見えた。顔は反対を向いているせいで分からない。分からないのに、彼女を見ていると心は穏やかなのに、泣きたくなるような気持ちになった。


彼女の顔を見たい─

彼女の瞳に映りたい─

彼女の声を聞きたい─


彼女にソロソロと近付いて行こうとした時だった。

ジュリエンヌの甘い香りが強くなった。


『******』

『──っ!?』


今迄心地好かった甘い香り。それが何故か、今は体中が悲鳴を上げるような苦痛に変わった。







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