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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋竜王国編❋
38/83

イーリャの実

いいね、ありがとうございます。

選定式の行われた日の夜。

夕食は部屋で1人で食べ、その後も部屋で本を読んだりしながらのんびり過ごしていたところに、ニノンさんがやって来た。


「予定通りに、今日中に寮に帰れなくなってしまってすみません。その上、放ったらかし状態になってしまって……」

「いえ、私はのんびりしてるだけなので、気にしないで下さい。それで……ニノンさん、今からって、時間ありますか?少し…気になってる事があって…」

「気になってる事─ですか?」

「今日の選定式の時の事で……」

「あ、それなら、丁度良かったです。ハウンゼントさんからも話が聞きたいと、アラール─宰相から言われて迎えに来たんです。今から、私と一緒に来てもらえますか?」

「え!?あ、はい、行きます」


ー“嫌です”なんて言えないよね?ー








ニノンさんに案内されたのは応接室で、そこには宰相様と大神官様とイロハとオーウェンさんと、フィリベールさんが居た。


「エヴェリーナ、今日はお疲れ様」

「フィリベールさん…」


ー何だろう…フィリベールさんの顔を見るとホッとするなぁー


「ハウンゼント嬢、夜遅くに呼び出して申し訳無い。少しバタバタしてしまって…。それでも、明日迄には噺を聞いておきたかったので…」


宰相様が申し訳無さそうな顔をしている。


「いえ、大丈夫です。私も、気になっていた事があったのて……」

「気になっていた事?」

「その前に、話が長くなるかもしれないから、皆、椅子に座りましょう」


ニノンさんが声を掛けると、それぞれが椅子に座り、「はい、エヴェリーナは俺の横だから」と、2人掛けの椅子にフィリベールさんと並んで座らされた。


ーイロハの横でも良くない?ー


とイロハに視線を向けると、並んで座っているニノンさんと2人がフィリベールさんと私を見て満足気に微笑んでいた。


ー恥ずかしい……ー


おまけに……私、今日も…あのピアスを着けている。


「んんっ──それで、気になっていた事とは?」

「あ!はい!そうです!それは───」


と、宰相様の仕切り直しで、私は慌てて香りについての話をした。










「香り……ですか?」

「はい。何と言うか……甘ったるい感じで……香水とは違うような…」


語彙力が……足らない。香水も知らないから喩えようもない。


「そんな香り…しましたか?」

「え?」


そんな事を言ったのは、宰相様だった。あんなにハッキリと分かる香りが…分からなかった?


「すみません。私も……そんな香りには気付きませんでした」

「え!!??」


まさかまさかの、大神官様も気付かなかったと。


「そう言えば…甘い香りがしたような気もしますが…急に息苦しい感じになって…そこからは記憶があまり……」


ー確かに、オーウェンさんは苦しそうだったよねー


「エヴェリーナ、その香り……もう一度嗅いだら……それがその時と同じモノかどうか…判断できる?」

「えっと…多分、できると思う」


あの香りは過去にも嗅いでいて、香った時全てが最期に繋がっていたから、記憶にしっかり刻まれている。だからこそ、今日もすぐに気付いたんだろう。


「“イーリャの実”を……持って来てくれ」

「「「!?」」」


ー“イーリャの実”とは?ー


フィリベールさんの言葉に反応したのは、この部屋に控えていた侍従で、直ぐに部屋から出て行った。


ーあれ?フィリベールさんって……伯爵家次男の騎士だったよね?ー


そんな……伯爵家子息の思いつきの言葉に、王城付きの侍従が素早く対応するもの?宰相様や、大神官様なら分からなくもないけど……。ジッとフィリベールさんを見ているとバチッと視線が合い、「ん?」と言って微笑まれた。


ーぐう──っー


フィリベールさんは、自分がイケメンだって分かっていない。その上の天然だ。こんな至近距離で微笑まれたら心臓に悪い。変な声を呑み込むのも大変だ。顔が赤くなるのは……見逃してほしい。


ー落ち着け…私……ー


「あの…フィリベールさん。“イーリャの実”って、何ですか?トルトニアでは、耳にした事がないんですけど…」

「んー、ソレは、この竜王国でも自然に生る事はない植物なんだ。否─禁止された植物なんだ」

「え?」


禁止された植物?


「理由は後で説明するとして、その実は研究用として、この王城の敷地内にある、管理されている温室にしかない。」


そうフィリベールさんが説明したところで、侍従が小さな箱を持って戻って来た。その箱を、侍従は迷う事なくフィリベールさんに手渡し、その箱を私へと差し出した。


「この箱を開けて、確認してくれないか?あぁ、勿論、嗅いでも体に何か影響がある訳では無いから」


フィリベールさんが言うなら、大丈夫─なんだろう。

私はその箱を受け取り、箱を開けると──


「……はい。コレです。この香りに間違いありません」

「─────ありがとう……エヴェリーナ」


箱の蓋を閉じ、その箱を私の手から持ち上げるフィリベールさんは、微笑んではいるけど、怒り?が溢れて隠し切れていない。それは、私とイロハ以外─竜人である4人ともが、その状態になっていた。






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