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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋竜王国編❋
37/83

甘い香り

いいね、ありがとうございます。

選定式で、少しトラブルがあった為、私ももう1日王城に泊まる事になった。多分、異変があったオーウェンさんに関係がある事だろうと思う。

そのトラブルに、選定式に参加していた人達がバタバタとしている間、私は1人、充てがわれている部屋でのんびりしている。




オーウェンさんに気を取られて忘れてたけど……あの時に嗅いだ、あの甘い香りは──


選定式の行われた部屋に入った時にはなかった。選定式が始まってからも……なかった。香ったのは──


「ジュリエンヌ様が、部屋に入って来てからだ」


ならば、アレは……ただの香水だった?

私の記憶の中のジュリエンヌ様も香水は付けていたけど、ローズ系の香水を好んで付けていた。あんな甘い…甘過ぎる香りではなかった。


「…………」


そう言えば、あの香りがしたのと、オーウェンさんに異変が起きたタイミングが同じじゃなかった?


「────あっ!」


思い出した!あの甘い香りは……過去の私が竜さんの所に飛ばされる前に、寝室で嗅いだ香りだ!それが、どうして………


ージュリエンヌ様が……何かした?ー


残念な事に、私は香水だけではなく、オシャレに関しては全くの無知だ。過去の私は、公爵夫人になる為の勉学や、ループから抜け出すのに必死でオシャレに気をかけている暇なんてなかった。今世は今世で薬学に必死で………おまけに寮生活で自分の事は自分でしなければならず、香水なんて使わないし普段は制服で、私服なんてワンピースが数着あるだけだ。そもそも、竜人族の人達の服装はシンプルな物が多いし、女性でも普通にズボンを履いている。


兎に角、あの甘い香りが普通の香水の香りなのか、それとも……


何か意味のあるモノなのか───


「…落ち着いたら、ニノンさんとイロハに話してみようかな………」










******



「竜王陛下が参加するのではなかったの!?」

「参加する─と情報はありました。」

「なら、何故()()に誰も反応しなかったの!?()()の効果は確かなモノよ!反応しなかった─と言う事は、あの場に()()()が───竜王陛下が居なかったと言う事でしょう!?」


ガシャンッ─────


「聖女様、何かありましたか!?」

「何でもないわ!その……ティーカップを落としてしまって…………」

「では、片付けの為に女官を呼んで参ります」


部屋の扉の外に待機している騎士が、この部屋を覗く事なく扉越しに対応してくれてホッとする。

そうして、私の目の前で膝をついて頭を下げている、トワイアルから連れて来た私付きの侍女と騎士に視線を向ける。


「コレを1本無駄にしたわ。この意味分かるかしら?お前達が簡単に弁償できるモノではないのよ?」

「「…………」」

「ふんっ…役立たずは………要らないのよ?トワイアルに帰ったら……覚悟しておく事ね。2人とも、隣の部屋に下がりなさい。顔を……見せないで!」

「…………」

「失礼…致しました………」


役立たずの2人は、そのまま隣の部屋へと入って行った。



黒龍の巫女の選定式を取り仕切るのは、既婚で()()()の宰相と大神官だが、今回、竜王陛下が極秘に参加する─との情報を得ていた。その竜王に関しての情報は殆ど無い。人型の姿や年齢は不詳だが、妃や番が居ないという事は確かなようだ。長寿の竜族であっても、番と出会える可能性はかなり低い。ただ、竜族は愛し合えば、喩え相手が番でなくても生涯を共に過ごす事ができるようになる()()()がある。

だから、もし、竜人と結婚したいのであれば、その相手を()()()()、ソレを行えば良いのだ。ソレさえすれば、後になって番が現れようとも、その2人が離れる事はない。ある種の契約のようなもの。


予定では、選定式に紛れ込んでいる竜王陛下を私のモノにできる筈だった。


なのに────


アレには誰も反応しなかった。アレに反応するのは、未婚で番無しの竜人だけ。と言う事は、あの場には竜王陛下は居なかったと言う事だ。

その事に内心焦ってしまったせいか、竜人の怪我をうまく治す事ができなかった。


治せる!と言う自信があったのに────

ただ、治癒に関しては時間差で効いてくる事もあるらしく、選定の結果は明日の発表となる。ただ、何故か、私が巫女になれると言う自信がある。


今日は失敗したけれど、私が巫女となれば、竜王陛下を落とすチャンスはいくらでもある。アレから逃れられる竜人なんて……居ないのだから。










******



「貴賓用のティーカップを壊してしまう程、お怒りのようだな」

「今回は、あの場では怪我を治癒する事もできませんでしたから…何もかもが、違っていますね」


フィリベールが呆れた様に言うと、宰相─アラールも呆れている。


あの女には、常に2人体制で監視を付け、何か事が起これば逐一報告するようにと言いつけている為、部屋でティーカップを投げ付けて壊した事は、既に把握済みの事だ。



過去、四度も同じ最後を迎えた。その記憶があるのは─


現学園長アリソン=ガーナード、その婚約者でもあるニノン、宰相アラール=ナクラマルト、大神官アルピーヌ、竜騎士のオーウェン=グリフォードとフィリベール(オレ)の6人。そして、五度目にして初めてとなる存在が大聖女イロハ。



「さぁ、あの女、次はどう出て来るんだろうな?」



五度目は、お前の好きな様にはさせない────






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