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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋竜王国編❋
34/83

竜さんと鱗

いいね、ありがとうございます。

五度目は、何もかもが過去とは違って来ている。

ジュリエンヌ様の光属性の発現は過去通りだけど、黒龍の巫女だと判明したのはまだ先だった筈だ。

おそらく、ジュリエンヌ様がトルトニアに留学すると言う話も、まだ出ていない筈だ。

もし、トルトニアに留学する─と決まる前に黒龍の巫女として認められたら……ジュリエンヌ様は、そのまま…竜王国に留まると言う事に…なる?


ヒュッ─と息を呑む。


また、ジュリエンヌ様と私の接点ができてしまう。

喩え、ジュリエンヌ様が黒龍の巫女になろうとも、学園には通う事になるだろう。そうなれば……通うとすれば、竜王国(この国)の学園になる可能性が高い。


「……ハウンゼントさん、大丈夫ですか?」

「え?あ……大丈夫ですよ?えっと…続けて下さい。」

「そうですか?では………」


きっと、顔色が悪くなっているんだろう。指先も冷たくなっている。

心配そうな顔をしながらも、ニノンさんは明日の選定式の説明を続けた。


明日は、私はイロハと一緒に、見習い神官の服を着て、神官の補佐をする─と言う形で参加するそうだ。補佐と言っても、何をすると言う事はなく、神官の後ろに静かに控えているだけ。

選定式の間は、私もイロハもフードを被る為、顔を晒す事はない。そして、何があっても喋らない事。見た事は口外しない事。


説明を受けた後、誓約書にサインをした。



「気分が優れないようなので…」と、ニノンさんがカモミールティーを用意してくれた。


「すみません。何だか…緊張してるみたいです。」

「もし、無理そうであれば、言って下さいね。まぁ…参加してもらえれば……全て……」

「ん?何か言いました?」

「あ、いえ…何も……。」


ニノンさんの最後の方の言葉が聞き取れず、聞き返すと、フルフルと首を横に振られ「何でもありません」と、言われてしまった。


それから、少しだけニノンさんとお喋りをした後、王城の女官の案内で入浴し、明日の為に早目にベッドに入った。




いつもよりも早目に───




不安だった筈なのに、ベッドに入るとすぐに眠りに落ちた。








目の前には、あの黒色の竜─竜さんが居た。

過去の竜さんの鱗は、くすんだような黒色だった。


でも、今、目の前に居る竜さんの鱗は、漆黒の闇を思わせる程の黒なのに、キラキラと輝いている。


「綺麗………」

『…………』


私が綺麗だ─とつぶやけば、竜さんは目を細めて笑う。その黒色の瞳は、やっぱりとても優しい。


これが夢だとハッキリと分かるのに、夢ではなく現実的な感覚がある。


「触っても良い?」

『…………』


竜さんは、嬉しそうに私の手の届くところに頭を下げて来た。遠慮なく、その頭に触れると、鱗は硬いけど温かかった。


「冷たくないのね?」


全く嫌がらないのを良い事に、竜さんの頭や首を撫でる。


「えっ!!??」

『…………』


撫でているうちに、鱗が1枚ポロッと取れてしまった。


「ごっ……ごめんなさい!どっ…どうしたら?えっと…またくっつく???え?無理??」

『…………』


ーそんな…憐れみのような目で見ないで欲しいー


「どうしよう……あの……痛くない?」

『…………』


竜さんは、怒るどころか嬉しそうに目を細めたまま、鱗を持っている私の手を、口先で優しく私の方へ押し付けて来た。


「ん?もしかして…私にあげる?って事?」


すると、竜さんがコクコクと頷く。


竜の鱗───


よく見てみると、体にある鱗の1枚1枚は大きいのに、取れてしまった鱗は二周り程小さいうえに、見る角度を変えると琥珀色にも見える。


「不思議な色の鱗だね?とても…綺麗…。本当に…貰っても良いの?大丈夫?」

『…………』


竜さんが鼻先で、私の頬をスリッと撫でる。


ー可愛い!ー


あんなに怖かった竜さん。

まさか、五度目の今回で“可愛い”と思うとは……想像すらしていなかった。


「ありがとう。大切にするね。」

『…………』


鱗をギュッと握ってお礼を言うと、視界が少しずつぼんやりしていき───



『必ず守るから───』



竜さんが何か言ったような気がするけど……うまく聞き取る事ができず、私の意識はそこで途切れた。










目を開けると、やっぱりベッドの上だった。


ーうん。やっぱり夢だったー


しかも、自分の都合の良い感じの夢だった。

噛み付かれる事なく、しかも仲良くなるとか……。


「ん?…………え?」


握りしめていた手の中に、鱗があった。


「え?」


ジッと見る。黒色の鱗だけど、角度を変えると……琥珀色に見える。黒色でも琥珀色でもキラキラと輝いていて、なんなら、どんな高価な宝石よりも綺麗に見える。


「夢じゃなかった?」


もし、あれが夢じゃなかったら……竜さんに噛み殺される最期にはならないのかもしれない。でも──


ーまた、ちゃんと竜さんに会えたら良いなぁー





コンコン─


「ハウンゼント様、お目覚めですか?」

「あ、はい!起きてます!」

「失礼致します。」


部屋に入って来たのは、支度を手伝ってくれる侍女だった──んだけど………


「ひい──────っ」

「え?」


何故か、部屋に入って来た途端、悲鳴にならない悲鳴を上げたかと思うと、その場にへたり込んでしまった。


ーえ?何があったの???ー








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