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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋竜王国編❋
29/83

五度目の誕生会③

いいね、ありがとうございます。

「トルトニアの王子は…間抜けなんだな……」

「フィリベールさん………」


ハロルド様との挨拶が終わった後、ホールの隅にある椅子に座ってフィリベールさんとドリンクを飲むことにした。


間抜けなのか、ワザとなのか──


接点があってもなくても、何故か必ずハロルド様と私の婚約が成立していた。五度目の今世でもそうだ。フィリベールさんが居なければ、私はまたハロルド様の婚約者にされたかもしれない。でも、今回は、王妃陛下の様子を見る限り、逃れられそうな気がする。


「フィリベールさんが、王妃陛下や第二王子に圧を掛けたのには少し驚いたけど…これで、婚約を回避できると思うと…嬉しいです。まぁ…安心するのはまだ早いかもしれないけど…。」


フィリベールさんが大丈夫、信じろと言う言葉を疑っている訳ではないけど、相手が王族だから油断はできないのは確かだ。


「大丈夫だ。間抜けの方は分からないが、王妃陛下には十分に伝わっただろうし……国王陛下も、()()()()()()()()だろうから。」

「“ちゃんと理解する”?」


何を?─と訊こうかと思ったけど、フィリベールさんがあまりにも不敵に微笑むから、訊くのは止めておいた。ひょっとしたら、トルトニア王国と竜王国の国力の差が物を言っているのかもしれない。


ーうん。必要以上に踏み込むのは止めておこうー




父と母は、今世でも仲の良い侯爵夫妻と話していて、私は今世ではフィリベールさんと穏やかに時間を過ごしていた。


「きゃあーっ」

「押さえろ!」


その時、女性の悲鳴と共にざわめきが起こった。


ハッとなり、ざわめきの方に視線を向けると、オーウェンが給仕係の男を取り押さえていて、その横に騎士に支えられたまま蹲っている令嬢が居るのが見えた。

よく見ると、その令嬢は腕を押さえていて、そこから……血が流れているようだった。


ー忘れてたー


浮かれていたのか…この襲撃事件の事をすっかり忘れていたのだ。


ーどうしよう…私が……知っていたのに……私が上手く動いていれば、あの令嬢が怪我をする事は…なかったのにー


カタカタと自然と体が震え出した。


“傷物”となってしまったあの令嬢は、これからどうなるの?私の…せいだ──。


「エヴェリーナ……」

「フィリベールさん!?」


カタカタと震える私を、フィリベールさんが優しく抱きしめてくれる。

こんな人がたくさん居るところで…恥ずかしいのは恥ずかしいのに、とても安心する温もりだ。抵抗する気にもならず、そのままコツン─と、オデコをフィリベールさんの胸に押し当てた。


「──っ……エヴェリーナ、大丈夫…か?」

「ごめんなさい。ちょっと…驚いてしまって…。」

「あんなものを目の当たりにすれば、気分が悪くなるのも仕方無い。エヴェリーナが悪い訳では無いから、謝る必要なんて、全く無いんだ。悪いのは……この様な場で、刃物を持って事を起こそうとした奴なんだから。」

「………はい…ありがとうございます。」


エヴェリーナ(わたし)は悪くない”─


フィリベールさんは、何も知らずに言ってくれた言葉だろうけど、その言葉に救われたような気持ちになる。


それからの流れも過去とは違い、令嬢一人が怪我を負ったと言う事で、王妃陛下の判断で誕生会はお開きとなった。王妃陛下は怪我をした令嬢と共に先にホールから出て行き、ハロルド様と宰相の2人が帰って行く私達を見送る為に扉の所に立っていた。大勢の者がそれぞれに挨拶をしながら、ホールから退出して行く。フィリベールさんと私も、そんな大勢の者達の1人でしかなく、「それでは、失礼致します」と挨拶をして礼を取った後、フィリベールさんと私は、振り返る事なく王城を後にした。




予定よりもかなり早く終わってしまった為、フィリベールさんと私は、父と母と共にハウンゼント邸へと行く事になった。明日は学園登校日の為、泊まる予定ない。「家族団欒を楽しんで」と言って、フィリベールさんはどこかへ行ってしまった為、私は父と母に学園での話をしながら3人でのティータイムを楽しんだ。










******



「怪我を負ったのは、侯爵令嬢のメリザンド嬢。彼女のお陰で、貴方は助かったの。この意味、分かるわね?」

「母上、でも………」

「“でも”ではないわ。ハロルドが悪い訳では無いけれど、それでも、大きな代償を払った彼女には、それ相応の対応をしなければならないの。ハロルドの婚約者は、メリザンド嬢とします。彼女を……大切にしてあげなさい。」

「……承知……しました。」






「ふぅ──これで……大丈夫でしょう?」

「ですね。王妃陛下の賢明な判断に感謝します。」


ここは、トルトニアの王城内にある王妃陛下の執務室。先程、話が終わり、この部屋から退室して行ったのはハロルド第二王子。


「まさか……この様な所で拝謁できるとは……」

「ここでは、畏まらないでもらえると助かる。」

「承ち──分かりました。これからも、私がちゃんと見張っておきます。」

「あぁ。トルトニアの王妃陛下に…任せよう。それと、俺の配下を1人、連れて帰るから宜しく。」


その者がフッと微笑んだ後、パチン─と指を鳴らせば、その者はその場から姿を消した。


「お怒りでなくて……本当に良かったわ………」


と、王妃は安堵のため息を吐いた。







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