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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋竜王国編❋
24/83

トルトニアからの手紙

いいね、ありがとうございます。

「………」


目の前に居るフィリベールさんに視線を向ける。


黒色の髪に瞳も黒色。イロハと同じ色。でも、よく見ると、その黒も少し違う。どちらかと言うと、フィリベールさんの方がより濃い黒─漆黒の闇を纏っているような────


「ん?何か…分からない事でもあった?」

「あ…ごめんなさい!」


じーっ…と見つめ過ぎてしまっていたようだ。


「いや……謝らなくて良いから……寧ろ……」

「寧ろ?」

「いや…何でもない。で?何か分からない事でもあった?」

「あー…えっと…龍族について…訊いても良いですか?」

「あぁ、構わない。」


そう言うと、フィリベールさんは目を細めて微笑んだ後、開いていた本を閉じた。







やっぱり、黒龍─黒色の竜は、この世界には1人しか居ないそうだ。では、その黒龍は何歳なのか?


「それは…俺達竜人にも分からない。」


と言うのも、黒龍─竜王陛下は滅多に人前に現れる事がないそうで、現れたとしても竜の姿をしている為、人型になれるのかどうかさえも分からないそうだ。そして、今の竜王が、この世界が創世された時から居る黒龍なのか…代替わりをした黒龍なのか──それすらも分からないらしい。


「この大陸…世界を統べる存在だから、竜王陛下については、余程のことがない限り、情報が漏れる事はないから。」


ー代替わりしてない──ともなれば、かなりの……おじいちゃん?おばあちゃん?……だよね?ー


「フィリベールさんの髪色と瞳は黒色だけど、竜化すると…黒に近い色だったりするんですか?」

「うーん…有り難い事に、俺は竜力が強くて…濃藍色……かな?人型になった時の髪か目の色が、竜化した時の色に()()()になる。」

「それじゃあ、違う色になる事もあるって事ですか?」

「そうだな。だいたいは、その色か近い色だけど、稀に全く違う色の者も居る。」


と言う事は、人型になった竜さんに会っても、分からないって事か…。フィリベールさんが黒色だから(正しくは濃藍だったけど)、もしかして?と思ったりもしたけど………竜王陛下がこんなに若い筈はないだろうし、こんな所で人間(ひと)族の留学生(わたし)の護衛なんてしてる訳ないよね。



それからも、色々聞いた話によると、色の違いによる力の上下関係はなく、あくまでその竜の持つ竜力の強さで上下関係が決まってくるとのことだった。ただ、同じ色でも、その色が濃ければ濃い程竜力が強くなるそうだ。



「エヴェリーナは……竜を…怖いと思うか?」


ふと、フィリベールさんに質問された事に、ドキリとする。


怖いか怖くないか──と訊かれたら……正直、少し怖い。噛み付かれた記憶しかないからだ。流石に四度目はズレたキレ方をしたと言う自覚は……あるけど。

ただ、四度目の竜さんに対しては、恐怖心は全くなかった。あの時の竜さんの目は……優しい色を持っていたから。


「どうでしょう?一度だけ、上空を飛んでいる竜を見掛けたけど、それ以外では……近くで竜を見てないから……怖いかどうか、分からない…ですね。」

「……そうか…………。」


一瞬だけ悲しそうな目をしたフィリベールさん。


竜化すると、大き過ぎて壁を破壊する事もあるそうで、学園内での竜化は禁止されている。そんな理由もあり、今世ではまだ間近で竜を見た事はない。

噛み付かれた記憶がなくても、あの大きさは少し怖いけど。


「でも…その竜が、ニノンさんやフィリベールさんだと分かっていれば、怖くない─と思います。」


ふふっ──と笑えば


ゴンッ────


「フィリベールさん!?」


何故か、フィリベールさんがテーブルに勢い良く突っ伏したせいで、ものすごい音がした。


ーえぇっ!?オデコ、大丈夫!?ー


「あの…だっ……だいじょ───」

「大丈夫だ。すまない……少し………破壊力が───ではなくて、少し自戒していただけだから。」

「破壊力?じかい?」


ー“破壊力”とは?次回?自戒?磁界?ん??ー



「ハウンゼントさんは、何も気にしなくて良いですよ。」

「あ、ニノンさん。お疲れ様です。」

「……ニノン…………」


少し呆れたように笑っているは、ニノンさん。そんなニノンさんにジトリとした視線を向けるのは、フィリベールさん。この2人の雰囲気で、何となく、お互い信頼のようなものがある仲なのかな?と思っている。


「ハウンゼントさん、トルトニアから手紙が届いたんですけど……」

「手紙…ですか?」


手紙なら、いつもなら寮の私の部屋に届けられるのに、何故ニノンさんが直接私に?と不思議に思いながら、その手紙を受け取る。


「え?」

「この手紙は、学園寮宛てではなく、王城に届いたようなので、私が預かって持って来たの。」


ー何で?ー


その手紙の封蝋には、ハウンゼントではなく、トルトニア王国の紋章が押されていた。


ーまさかー


落ち着かせるように深呼吸をしてから、その手紙の封を開けた。




その手紙は───





3ヶ月後に開かれる、トルトニア王国第二王子ハロルド様の誕生会の招待状だった。





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