街へ
いいね、ありがとうございます。
入寮した翌日は、予定通り制服の採寸や学園でのルールや授業についての説明の後、学園内を案内してもらった。
校舎の外観もそうだったけど、内装もトルトニアの学園と同じような造りになっていた為、すぐに慣れそうで安心した。ただ、トルトニアよりも、頑丈に造られていると言う印象だ。
「竜族は基本、馬鹿力持ちなので…」
と、ニノンさんは苦笑していた。
ーえ?弱い壁だと壊しちゃうの?ー
残念ながら、学園長は急用ができて不在らしく、挨拶をするのは後日と言う事になり、急遽時間ができた。
「ハウンゼントさん、ランチがてらに街に出てみますか?」
「ニノンさんが良ければ行きたいです!」
「──でっ……では、行きましょう。」
「?」
何故か吃ったニノンさんと一緒に、私達は街へと繰り出した。
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「…………デカイ」
「ふふっ。人間族から見れば、確かにデカイですね。」
街に出てみれば、竜人の男性がたくさん居た。皆、平均180cm以上…190cm位あるんじゃないだろうか?トルトニアで、身長高いなぁ…と思ったのはオーウェン。そのオーウェン位の人達ばかりだ。
中には、獣耳がある獣人も居るが、その獣人も竜人程ではないけど、それなりにデカイ。
「確かに…これなら、人間は可愛く見えるかもしれませんね。ある意味…役得?」
「全く居ない訳ではないですけど、竜王国には人間族は2桁の人数しか居ませし、小柄な女性のハウンゼントさんは……特にかわ──小さく見えるかもしれませんね。まぁ…ある意味心配ですね。」
心配───
確か…竜王国や獣王国は、貴族階級も存在するけど、実力主義と聞いた事がある。そんな竜王国に飛び込んできた人間────
「あれ?私って、一般的に排除対象だったりしますか?」
『弱者は帰れ!』的な??
「排除対象!?それはないです!寧ろ───」
「寧ろ??」
「…………いえ。コホンッ。排除対象にはなりません。竜族からすれば、種族が違っても“子は宝”と言う認識には変わりありませんから。」
「ちなみに……学園に私以外の人間族は……」
「あ、そうでした。言い忘れていましたが、留学生ではないんですけど、ハウンゼントさんと同じ学年に今年度から、もう1人人間族の女の子が入園します。人間族は、その子とハウンゼントさんの2人だけです。同じ人間族と言う事で、同じクラスにしてもらってます。学園長に挨拶をする時に、一緒に会えるかと思います。」
留学生ではないけど人間族?異種族結婚した両親を持っているか、移住して来た人達と言う事かな?兎に角、護衛の人と一緒で、その子とも仲良くできれば良いなぁ。
それから、ニノンさんお勧めのお店でランチをした。トルトニアの物より薄目の味付けだったけど、それがかえって食べやすくて、いつもより多目に食べれてしまった。
食べた後は、学生がよく行く文房具屋さんや、学生や平民でも買えるアクセサリーショップを教えてくれた。他にも、屋台などもあり、週末ともなれば、多くの人達で賑わうらしい。
ー楽しいー
過去四度の人生では、第二王子ハロルド様の婚約者として、色々な制限や我慢を強いられた生活で、街に出掛けるとしたら、フルールとのお出掛けぐらいだった。
「屋台で買った物を…外で食べても……怒られない?」
「え?」
「あっ!すみません。えっと…気にしないでくださ──」
「誰も怒ったりしませんよ。竜王国にも貴族階級があり、それなりのルールやマナーもありますけど、侯爵令嬢が外で買い食いしても、怒るような人はいませんよ。」
「……そうなんですね………。」
「ただ…やっぱり色々心配なので、街に出る時は、必ず護衛を付けて下さいね。」
「はい。それは勿論付けさせてもらいます。」
ー万が一にでも、竜人や獣人に絡まれたりしたら勝てないからねー
“今世では、あの竜を助けて長生きをする”
それが、私の第一目標だ。決して、決して、それ以外での危険は冒さないし、避けるに越したことはない。
ふんふん─と、少し意気込んで返事をする私は、“少し意味が違うと思うけど…”と言う様な目で見ているニノンさんには気付かなかった。
学園に戻る前にスイーツを─と言う事で、ニノンさんお勧めのカフェにやって来た。天気も良いからと、オープンテラスで食べる事にした。
そのオープンテラスの目の前には綺麗な川が流れていて、その川沿いに白い花が咲いていた。
「綺麗ですね……」
「ここは、パンケーキが有名なんですけど、このオープンテラスからの眺めも人気の理由の一つなんですよ。」
ーいつか……好きな人ができたら……ー
なんて思っていると、バサッ─と大きな音がした後、視界全体に大きな影ができた。
バッと上空を見上げれば────
「……竜!?」
「あれは………!」
竜王国に来て初めて目にした竜。
逆光で、その竜が何色なのかは分からない。ただただ、やっぱり大きい。
「ハウンゼントさん。少し…所用を思い出したので、食べ終わったら学園にすぐ戻ってもらいますが…いいですが?」
「あ、はい!それは大丈夫です。こちらこそ、今日は付き合っていただいて、ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ、急に申し訳ありません。また…ゆっくり案内させてもらいますね。」
パンケーキを食べた後学園へと戻り、ニノンさんはそのまま少し急いだように、また学園の外へと出て行った。




