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贄の令嬢はループする  作者: みん
❋ループ編❋
15/83

四度目……キレました

いいね、ありがとうございます。

四度目のハロルド様の誕生会にも、あの元伯爵が給仕姿をして紛れ込んでいる。彼が、どのタイミングでハロルド様を狙うのかは把握済みだ。後は──


四度目の彼が早足でハロルド様へと近付いて行くのを確認し、私は何気ないふりをしたまま足をスッと出し、その元伯爵を転ばせた。すると、彼が転んだ拍子に持っていた短剣が滑り落ち、その短剣を目にしたオーウェンが直ぐ様彼を拘束し、誰一人怪我をする事なく誕生会を終える事ができた。









******



「“リーナ”と呼んても良いだろうか?」

「………お好きなようにお呼び下さい。ただ、私はまだ()()()()()()にしかすぎませんので、私を“リーナ”とお呼びでしたら、()()()()()()()()も、愛称でお呼び下さい。それと、私は“殿下”と呼ばせていただきます。」

「あぁ……分かった………」


四度目のハロルド様は、今迄の優しい笑顔とは違って、困ったように微笑んだ。


“婚約者候補”


四度目の私は婚約者ではなく、婚約者()()となった。


四度目では、ハロルド様の誕生会の後、公爵令嬢のエレオノール様と侯爵令嬢のエヴェリーナ(わたし)と、もう一人の侯爵令嬢─メリザンド様の名前が上がったようで、暫くはこの3人を婚約者候補として様子を見る─と言う事になったようだ。

婚約者候補にはなったけど、エレオノール様と私には、婚約者になりたい意思はなく、メリザンド様だけが意欲満々にハロルド様にアピールをしている。


私は、3回も裏切られて贄にされて食べられたのだ。100年…1000年の恋だってビックリの裏切られようで……もう、ハロルド様に恋心なんて抱けないし、受け入れる気持ちも全くない。だから、ハロルド様が私を“リーナ”と呼ぼうが、私は“ハロルド様”なんて呼ぶつもりはない。


「もう、殿下の婚約者はメリザンド様で良くないかしら?」

「私もそう思います。」

「なら、私からお父様に、私とエヴェリーナ様の意思をそれとなく国王陛下に伝えてもらっておくわ。」

「ありがとうございます。宜しくお願いします。」


エレオノール様のお父様は、国王陛下の側近中の側近の宰相様だ。


ー四度目にして、ようやく婚約者にならずに済むかもしれないー




なんて……ウキウキしてましたよ?

ウキウキした罰が……くだったんだろうか?



婚約者として、メリザンド様が正式に決まり掛けた時、メリザンド様がハロルド様とは違う男性の子を身籠っている事が判明した。


16歳で妊娠……17歳で母親になるメリザンド様。


ー恨んでも…良いですか?ー









「改めて、()()()、よろしくね?」

「…………宜しくお願い致します………殿()()……」


四度目の婚約。

四度目の挨拶。

四度目も“リーナ”と呼ばれようとも、私は“殿下”と呼ぶ。脳内では“ハロルド様”呼びだけど。


私が殿下呼びする度に、ハロルド様は辛そう?悲しそう?な目をするけど、それには気付かないふりをする。結局は、私が裏切られるから。






******



「婚約()()、おめでとう、リーナ。」

「エレ、ありがとう。」

「今日は、3人でケーキでも食べに行こう!」



四度目のジュリエンヌ様の留学。

四度目も2人の距離は近付いた。

四度目も、ハロルド様は私を裏切った。


四度目ともなると、悲しみよりも腹立たしさよりも呆れしかなかった。



ただ、四度目もハロルド様と婚約し、その後にジュリエンヌ様と出会い恋におちた─と言う流れは過去と同じだから、おそらく、四度目の今世も、あの竜の元に行く事になるだろう。


「…………」


何故、あの竜の贄にされる前に巻き戻る事ができないんだろうか?


「私……食われ損じゃない?」


そう思うと、あの竜に対しても恐怖心よりも怒り?がふつふつと湧いてくる。

四度目に目にする時は、もう少し……あの竜を注視してみよう。


そう思いながら、私はまた、いつもよりも早い時間にベッドに入った。













『────クルルルル……』


何かが私の頭を優しく触っている。


「────ん」


目を開けるとそこには……やっぱり、あの真っ黒な竜が居た。


その竜は、四度目も何かに堪えるように、我慢しているように体を震わせて私を見下ろしている。

その竜の目は───目だけは…何故か優しい色をしているように見えた。


四度目にして初めて、その竜に手を伸ばしてソッと触れる。すると、その竜はビクリッ─と体を震わせてから、目を大きく見開いた後、ゆるく目を細めて──


ー笑ってる?ー


「********」

「『────っ!?』」


四度目も、また彼女が何かを叫んだ瞬間、目の前の竜の雰囲気がガラリと変わった。


やっぱり、この竜が私に噛み付くのは、彼女の言葉のせいなのかもしれない。そして、この竜は……多分、本当は私に噛み付きたくないのかもしれない。目の前の竜は、口を開けないように、必死に何かに抗っているように見える。

でも──この竜が私に噛み付いて終わらせないと、時間は巻き戻らない。


ー本当に、食われ損もいいとこだよね!?ー


プチッ─と、私の中で何かがキレた。


「竜さん!」

『───っ!?』

「“正しい路へ”と言うだけで四度も食べられるのは……キレても良いですよね!?竜さんも、ある意味…被害者?なんですか?兎に角、今回は、三度目とは違って、躊躇わずに一思いに一瞬で私を食べてもらえますか!?」

『っ!!??』


私の言っている事に驚いているように目を大きくする竜。


「躊躇われると、一瞬でいけなくて、痛いんです!」

『…………』


何だろう……緊迫している筈なのに、目の前の竜から憐れみ?のような眼差しを向けられているのは……きっと気のせいだ。兎に角───


「もう、私もいい加減……キレました!次こそは……自分自身も……そして、竜さん。貴方も……助けてみせます!」

『─っ!!』


それから、その竜は、少し目を細めた後、いつも通り大きく口を開いて───





四度目は痛みを感じる間も無く、私の意識は途切れた。






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