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これは運命の出会いですか!?

今日は12月の割には温かい日和だが、埼玉スーパーアリーナの近くは風が強いく、15:00も過ぎた時間だから、流石に冬なのだなと痛感する。

昨日は楽しみ過ぎてなかなか寝付く事ができなかった。

埼玉スーパーアリーナに来たのは数えるほどしかないけど、大きいな・・・。

入場時間になり係員の指示に従い会場に入ってみたものの、凄いな・・・何となく想像していたけど・・・最前列で、ここまで良い席とは・・・。

選手の毛穴まで見えるんじゃないかな?

それにしてもこの試合の最前列を取れるって正樹母って何者なんだ・・・。

昔から家が裕福なのはわかっていたが、まだ違った一面もありそうだな。

正樹にしたってほぼボランティアみたいな金額で俺のマネージャーやっているし。

そんな正樹家も気になるがっ、今日はナオちゃんの応援だ!

フィギュアの応援なんて初めてだからな・・・。一応正樹母から貸してもらったナオちゃん応援バナーと、ナオちゃんの好きなキャラのぬいぐるみは持ってきたから必要最低限の準備はOKだ!


全てが初めてだ。選手のウォームアップの時間に動きすら感動を覚える。


今日は女子フリープログラム、場内アナウンスで最初の選手がコールされた。

いよいよ始まるんだと思ったら僕が緊張してきた!

颯爽と現れたのはロシアのエカチェリーナ、まるでお人形さんみたいだ。

あの外見でまだ17歳というのだからロシアの選手たちにはいつも驚かさえる。

若干17歳にして堂々とした貫禄があり、それでいて美しい演技だ。

TVと違って自分の視点で選手が見れるのはうれしいの一言に尽きる!1回の競技があっという間だ!

周りを見てみると、みんな観戦が終わると温かい拍手をする。

しかも各々押しのスケーターの国旗を持ってきたりしている。ブランケットが国旗になってる人までいる。

各々の好きが伝わってくる、温かい空間だ。

僕はナオちゃんの事しか頭になかったなー。

選手だけではなくて、ファンも一生懸命だ。

ナオちゃん以外の選手にはせめて拍手だって思い、一生懸命になっていると、気にも留めていなかった隣の空席にやたらと背の高い男性が腰を沈め、遅れてやってきた。

座るとその大きさに改めて気づく。僕は170少しの身長だけだ、この人180後半近くあるんじゃないか?

後ろの人に配慮してか、ものすごく前屈みになっている。

その人は席に着くと同時にロシアの国旗を出して「エカチェリーナ!」と大声で声援を送る。

すごい、会場がほぼ女性で占められている状況で、堂々とした振る舞い。男性の常連っぽい人だ。

とはいえ、隣にこんなに濃い男性客が来ると僕のにわかっぷりが際立つから勘弁してほしいと思ってしまう。


すると隣の男性が不意に声を掛けてきた。

「あれ?若い男性が最前列ってめずかしいね~。」

妙に人懐っこい話しかけ方だ、声は想像よりも高いが。

それにしてもまずいぞ、話しかけられてしまった。

まったく知らない人に話掛けられるってこの人は陽キャだ、陽キャに違いない、

僕と対極にいる人だぞ。

服装がまたファッション誌から抜き出してきたかのようなカジュアルフォーマルな装い。

しかも正面から見るとえげつないイケメンだ。髪はロングで少しウェイブがかったものを後ろで束ねている。

男子でもぼーっと見てしまうほどの色気がある。

「あっはい。チケットを知人に頂きまして・・・。にわかですいません!!」

なんだか盛大に謝ってしまった。

いやむしろこういう時は先に謝っておいた方が良いだろう。

「そんな事気にしちゃ駄目だよ~。せっかく来たのだから一緒に楽しもうよ!」

すごい柔らかく話す人だな。まだ交わした言葉は少ないのにリラックスできる。

って?ん?いっしょに?今一緒にって言っていたな、この人。いきなり一緒に観戦なんてハードルが高すぎる。

「はい、じゃー次はイタリアのカメーリアだから、これイタリアの国旗渡しておくね。両手で持っちゃおう~。」

その国旗僕に渡したら自分振る国旗無くなってしまうと思ったら、きちんと自分の分を持っている。

この人まさか常時国旗を4本も持っているの?

「いつも・・・4本も持ってるんですね?」

「そうだよーこういう出会いもあるかもと思ってね。いや~共通の趣味の友達ほしかったんだよね~周りに居なくてフィギュアスケート好き男子♪」

なに?いつの間にあなたと僕が友達になったのですか?やばいなこの人、僕と次元が違いすぎる・・・。

「さぁ始まるね!選手が集中するからね、ここからは静かにしなきゃ。」

この人すごいゴーイングマイウェイな人だ・・・でも競技中は選手に最善の注意を図っているようだ。

選手を本気で応援しているんだ。本当にフィギュア選手の事、いやフィギュアスケートの事好きなんだなとこのわずかな時間でも実感ができる。


そんなようなやり取りが続き、既に半分の選手の演技が終わったが、この人はどの選手にも競技中は祈るようなポーズで見守り、それでいて終わったら国旗振って、声を出して・・・本当に、本当にフィギュアスケートが好きなんだな。

こんなに何かにまっすぐになれるという事は本当にうらやましい。

「あれっ?そういえば名前聞いてなかった。名前聞いてもいいかな?」

ふいに選手の練習の合間に名前を聞かれた。

この人グイグイくるなー。

「僕はモリヤマガクトです。森山は普通の森に山です。ガクトは画人と書きます。」

手の上で漢字をなぞってみせた。

既に一緒に応援ている仲、緊張はなくなっていた。

「かっこいい名前だね~でもどこかで聞いた事があるような・・・まっいっか!俺はオウジだよ~白鳥オウジ。」

「オウジ?あの王子ですか?プリンス?」

苗字の事はいっさい聞かず、思わず速攻名前を聞いてしまった。

「そうそう、きらきらでしょ~あはははっ。」

「確かにきらきらですね。あははははっ。」

それは心から同意して、ついつい笑ってしまう。何だろう、王子さんは人を楽しくさせてしまう雰囲気がある。

「画人は今日、ナオちゃんの応援で来た感じ?」

いきなりファーストのネームで呼びつけ、でもこれはこの人懐っこさを作っているポイントなんだよなと思う。

「それもあるのですが、本当にたまたまチケットを知人からもらって。」

「そっかそっか、でも画人がみんなの応援する気持ちも伝わるよ。いいねーフィギュアスケートファンはそうじゃなくちゃ。でも、とはいえ次のグループの最後はいよいよナオちゃんだね。今まで競技生活を頑張ったナオちゃんにパワーを送ろう!

昨日のショートは厳しい結果だったけど、だけどナオちゃんならきっと何かをしてくれる!」

王子さんは、まっすく僕の瞳を見ながら手を握りながら言った。

そうナオちゃんは今までの競技人生でも見たことないくらいに昨日のショートプログラムは不調だった。

あんなに調子を乱したナオちゃんを観たことがないが、それでも今までのナオちゃんは必ず不死鳥のように表彰台に戻ってきた。

それにしても、その手を握るって、しかも近い!近い!

でも負けじと「はい!」と答える。

僕も今日はこの会場で誰よりもナオちゃんを応援する気で来た。だから王子さんの気迫に負けないように手を握り返してまっすぐ答えた!

「良し!じゃーまたナオちゃん集中するときだからね、でも今回は特別だ!声を出さずに二人で念を送ろう!はぁ~~~~。」

そのポーズは〇〇波だろって心の中で突っ込みながらも・・・。

「そうですね はぁ~~~~」と僕も乗ってみる。

がんばれ ナオちゃん!日本のみんなが応援している!


そのグループの最終でナオちゃんの競技が始まった!

ショパンの”別れの曲”だ、切ないメロディーと共に、切ない表情のナオちゃんのスケートが始める。

今までTVでしか見たことなったナオちゃんの演技だが、そんなにわかの僕でもわかる今日のナオちゃんは目が離せない。

昨日はジャンプがことごとく失敗して、いつものナオちゃんじゃなかった。

しかし、今日は僕らが、日本国民が知っているナオちゃんだ!

ジャンプで3回もトリプリアクセルを決めるなんて、ナオちゃんにしかできない離れ業だ。

そしてダンスも音楽に合わせる形で優雅でありながら、人を魅了するものとなっている。

あまりの魅了っぷりに会場が異様な静けさだ。


どれをとってもやっぱりナオちゃんは世界一だ。

今までの彼女の努力や培って来たものがこのわずかな時間に凝縮されている。

会場入った時には寒かったのに、ナオちゃんの演技を見ていると熱くなる。

いや、単純に熱いだけではない、なんとも言えない胸が熱くなる。

色々喉や胸につかえていたものが一瞬にして無くなった気分だ。

そして、音楽の終焉と共にナオちゃんは両手をあげた!改心の出来だ!


僕は知らぬ間に泣いていた。横でも王子さんが泣いている。いや、会場中のファンが感動で泣いている。

すごい演技だ!いや、演技ももちろん凄いが、何よりも輝いていたナオちゃんを見てきて、それでもここ最近のナオちゃんのスランプも知っていて、昨日の演技、そしてそのスランプを最後の舞台でぶち壊してくれたナオちゃんに感動しているんだ。


特典は147.25点!すごいフリーでの得点で圧倒的一位だ!

この瞬間、彼女は伝説となると確信した。

まさに「ICE PRINCESS」だ!

どうしても、この胸の高鳴りを何かに残しておきたい。

その衝動は僕が漫画家、故かもしれないが、でも抑えきれないんだ。


少しだけ休憩がはいる。

このタイミングで1ポーズでもイラストを描こう。

最後のポーズだ。あの高らかに両手をあげたポーズが脳裏から離れない。

美しく、でもその圧倒的な存在感だ。リュックからスケッチブックを取り出し夢中になって描いていた。

あっという間に書き終わった。

この熱間がそうさせているんだ。


横から王子さんが

「本当に本当に素晴らしい演技だったよ!もう最高って感じで。しばらく放心状態だったよ。でもそんな時に画人みたら、そっちのけでイラスト書いているからびっくりした~。画人?画人ってイラストレーターさん?」

「すいません。昔からとっさに書いてしまう癖があって。これはえ~と、一応漫画家をやっていたりします。」

「漫画家さん~?そうなの~?本当に~?お~これは~。」

何やらいろいろと考えていそうな王子さんは何やら不敵な笑いになる。

「うん、うん、これも何かの縁だね~。いやむしろ運命の出会いだ~!試合のあと飲み行こう~ちょっと話があるんだ!いいよね~?絶対だよ、約束だよ~!」

拒否権のない形でいつの間にかこのあと飲みに行くことになっている。

運命の出会い?何がこの後起こるのでいったい??これはとてつもなく気になる!!

「さーナオちゃんが終わっても頑張る選手が残っているね~。最後まで応援だよ~!」

ナオちゃんが終わったらそれで終わりではない。その点流石、王子さんだ!



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