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ホラー・ホラー風味

コレはラジオなのだろうか

作者: まい

夏のホラー2022投稿用



 本格的なホラーをお求めの方は、ご遠慮をお願いいたします。

 これはホラーっぽいナニカですので。

20XX年――――


 それは静かに始まった。







 当時の人類は、何も知らなかった。


 沢山のご家庭に置かれたラジオだが、その内で無作為(ランダム)のラジオ達に些細(ささい)だがとても大きな変化が起きた。


 変化の仕方だが、呆れるほどに細かい性格をした人類がようやく気付くかどうか程度のレベルで、ラジオの箱……筐体(きょうたい)が大きくなる。


 それだけである。



 その変化は毎日だったり、月に1度だったり。 特に決まった法則は見つからなかった。


 人類がそのラジオから目を離した(すき)に大きくなるのだ。


 ただ、機能は(まご)う事なくラジオのままで、ちゃんとラジオ波を受信し、受信した音声をスピーカーから出力する。





 人類がこの大きくなるラジオの存在をハッキリ意識したのは、ラジオを置いていたテーブルや棚やタンスの半分以上を、ラジオに奪われてからだった。



 それまでは、


「おや? 最近テーブルが狭く感じる」

「置き物棚がもう埋まった。 そんなにお土産の置き物を買ってきたかな?」

「最近買うスプレーの種類が増えたなぁ。 置いておけるスペースが狭くなってきた」


 なんて呑気な者が大多数だった。


 細かい性格をした者はその変化にいち早く気付いていたが、その変化を他者へ告げると変人扱いや(精神的な)病気扱いされるので、声を上げるのは諦めていた。



 さて、そこまで大きくなってから異変だと人類から判断された訳だが、その時点で既に手遅れだった。


 まずは大きくなったラジオは常時機能がONの状態になった。


 音量ツマミでの音量調節は不可能になり、ヘッドホンジャックへプラグを()し込んでも、スピーカーとヘッドホンの両方から音が出るだけだった。





 こんな不思議なモノを見て、一部の研究者は当然の様に興味を持った。


 そして分解をしてみようとするのもよくある流れ。


 だが、その大きくなり続けるラジオは分解出来なくなっていた。


 最初のバランスを保ったまま等倍的に大きくなった結果、ネジ穴に適合するドライバーが無くなった。


 特注として大きなドライバーを用意すれば、その用意する時間の間にラジオが大きくなり、特注ドライバーも意味が無くなる。


 等倍で大きくなるならと、そのドライバーが届く頃の大きさを予測して特注した者も当然現れるが、今度は適合したサイズのドライバーでもなぜかネジを回せなかった。


 非破壊検査装置でモニターしながら特注ドライバーをネジ穴に挿すと、どうやらネジを受け止める側……()ネジ側がキュッと()まり、ネジの回転を(さまた)げている謎現象が確認された。



 これによりラジオが生物(せいぶつ)化したのではないか。


 そんな常識では有り得ない仮説まで飛び出す。


 しかし有り得ない仮説と言いながらも――捏造(ねつぞう)された映像でないならば――能動的に動く映像からの説得力が有る。


 それで真に受けた大きくなるラジオ所有者の一部が、どうにか今の内に壊してしまおう。 そう極端な行動に出てしまうのも無理はない。



 ――補足として1番穏当な、ラジオの電池を含む電源を取り去る行為は、既に出来るものはしている。


 一部電池カバーがネジと同様に外せなくなっていたものもあるが、そこは今更だ。


 そうやって電源は無いはずなのに、動き続けている。




 ――――結果、壊せなかった。


 バット等で殴りつける力でも、車で押しつぶす重さでも。


 ましてや高層ビル等から落とす高さでさえも。


 これを知り、国が回収を指示して1()所に集め、自衛隊の持つあらゆる兵器でどうにか壊そうとしても無理だった。


 そう、人類は既に負けていた。 手遅れだったのだ。


 人類に許されたのは、大きくなるラジオ達 (?)を見守る事だけ。






 やがてラジオの高さが30㍍程になると、ラジオ達 (?)の成長は止まった。


 止まってから1週間後。 これまではラジオ番組を受信して音を出していたのに、いきなり謎の電波をラジオ側から放出するようになった。


 その周波数帯は現在の人類が受信はできても使えない範囲なので、人類の生活に悪影響らしい悪影響は出ていないが、それはそれでとても不気味であった。








 謎の電波を放出する様になってから1年。


 その頃の人類は全てを諦め、電波の出るオブジェ群として認識し放置するしかなかった。


 そんな時に、久しぶりの変化が起きる。




 ()()()()()()()()()()()


 人間を含めた様々な動物の手足が。


 中にはそれらを模した、いかにもロボット然とした手足を持つものもあった。


 偶然テレビが映してしまった手足で最悪だったのが、イヤにてらてらしてヌメって光る、赤黒い色した大量の細長い()()()まれたモノ。

 それを近距離で映してしまい、一部の触手がうねり、脈打ち、跳ね回る様子が放送されてしまった。




 もう訳が分からない。


 しかし変化はそれだけではない。




〔1〕


〔お※っ。 うぽ○う△つ〕


〔こ□わ☓つー〕


〔おはようございます こωばんわ こんにちわんこチワワ〕


〔1〕


〔おはよ∩からおやすみまで みなさまの⊆らしをみつめる Εθξ よろしくおねが%します〕




 ラジオから生えた手足を動かしながら、スピーカーを通じて何か喋りだした。


 なぜか決して海へ踏み入れない以外はそのまま無目的・無軌道で気ままに歩き回り、踏み潰したり蹴躓(けつまず)いて転んだり――そしてそれで立ち上がる時にしか手は使わない――して、各地で災害を撒き散らす。


 人類の明日はどっちだ。

(すこし)(ふしぎ)ホラー



 人類ではどうしょうもない巨大なラジオが、何をするのだろうか。


 人類を支配したいとか壊したいなら、抗う手段は無い。


 人類と仲良くしたいのであれば、大き過ぎてコミュニケーションはかなり難しい。


 そもそも30㍍とか言う巨体(横幅はそれ以上)が何も壊さず動き回れるスペースなと人類の文明にそうそう無い。


 共存は難しいだろう。


 だが巨大なラジオを壊す手段は人類に無い。



 これからの人類はどうなるのだろうか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 筒井康隆や星新一を思わせる理不尽SFホラーで、この設定を思いついた段階で成功が約束されているお話で、実際、最後まで楽しませて貰いました。 ネジ穴が合わないというところがリアルで恐怖をひき…
[良い点] ぎゃあー! こんなのに支配されたくない。 ( >Д<;)
[良い点] ある日現れた謎の物体。だがそれは人類に何をするでもなく、ただ奔放に活動する。だがそこに悪意は無くとも、人々が恐怖を感じるには十分だった。 人以外の動植物からすると、人類側がこんな感じかも…
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