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ラスト・ヒストリー  作者: 上田由子
第一章『やり直しの異世界』
1/2

始まりは古びた本

こんにちは、上田由子と申します。

私は伏線などが大好きなので、所々にそのような場面を散らかしていきたいと思っています。


是非、読んでくださると嬉しいです!!


夏休みが目前まで迫ってきた。









「ん?何これ」

スクールバッグの中に突っ込んだ手に何かが当たった。宮良(みより)は手に当たった謎の物体と共に手をバッグから引き抜く。

そして、ゆっくりと歩いていた足を止めた。

「こんな古い本、宮良って持ってたっけ?」

それを受け、宮良の隣で歩いていた、彼女の親友の|万鈴(ますず)も足を止めた。



宮良と万鈴の通う、伊木(いき)高校へと続く通学路。いつものように彼女達は談笑しながら歩いていたところ、今日提出のプリントを忘れたかもと言った宮良が自身のスクールバッグの中に手を入れたのがつい先程の出来事だ。

「いや、この本は見たことない…」

宮良はバッグから引き抜いた、それをじっと見る。

それは古くさい本だった。本には、今にも破れそうな茶色の紐のようなものが表紙から裏表紙へと回っている。


「ん〜、これ万鈴のやつじゃないよね?」

「違う、私も見たことないよ」

「昨夜バッグの中を見た時はこの本、無かった気がするけど…」

「えぇ、怖」


宮良は首をひねる。やはり、この本は見覚えがない。


「だけどさ、宮良って本大好き人間じゃんか?家にもいっぱい本あるし。だから一冊くらい忘れちゃっても仕方ないんじゃない?」

「いや、確かに本は好きだけれど…こんなに印象に残りそうな本、忘れるかなぁ」

宮良は万鈴が言うように、愛読家だ。宮良の家には700冊を優に超える数の本が、本棚にぎっしりと詰まっている。何年も前に読んだ本で、中にはたまに内容を忘れているものもあるが…。

また宮良は手元の本をちらりと見る。表紙には引っ掻き傷のようなものが所々にあり、本当にボロボロだ。まるで、何百年もの時を超えて、今ここにあるような。

その時、視線を向けていた本に、先程まで気づかなかったが何かが表紙の下の方に、2センチほどの小さな文字で書かれていることに気がついた。

「ん?なんだろ、宮良、なんか書いてあるよ」

万鈴も気がついたようだ。宮良は「私も今気がついた」と、2人が見やすいように本の向きを変える。

目を凝らしてみる。だが、うまく読み取れない。

宮良はいつもかけている茶色の眼鏡を少し目から離してみた。


「あ、見えた!えーっと、『現…の……、来…な、…来て、…えて』」

「え、どういうこと?全然分からない」

「なんか、小さすぎっていうよりかは、消えかかっててよく見えない」


2人は表紙の文字の解読に夢中になって気づいていなかった。今は学校へ登校中ということと、本来の目的をすっかり忘れていることに。



キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…



伊木高校の、朝の着席完了2分前の鐘が青空に響いた。

「あ!!マズい、早く行かなくちゃ!!」

「うっそ、もうこんな時間なの?!てかプリントあるか確認し忘れてたぁ〜!」

「もう間に合わないわ!先に行っちゃうからね〜」

「あ!?ちょ、万鈴!!!置いていかないでぇぇーーー!!!」

万鈴は自慢の足の速さと体力を活かして、宮良を置いて走っていった。中学生の頃、陸上部のエースだった彼女の足は速いままだ。トレーニングはまだ続けているのだろう。

もう宮良の位置からは万鈴のポニーテールがぴょこぴょこ揺れているのしか見えない。

対する宮良は、ゼェゼェいいながら暑い道のりを走っていた。家でもずっとソファに寝転がって読書をしているものだから、運動不足だ。


もう少しで夏休み。嬉しい事だが、この炎天はどうにかならないものか。

雲ひとつない、美しいほどの青空だ。


それを恨めしそうに軽く睨みながら、宮良は住宅街に重い足音を響かせていった。
















「ゼェッ…はぁ、ふぅぅ…」

最悪だ。結局、学校に間に合わなかった。それに、つい先程確認したがレポートも家に忘れてしまっていたようだ。

息を整え、宮良は2年B組の教室の扉をこっそりと開けた。

それでも、ガラリと音が鳴るこの扉をどうにかしたい。

「遅いぞ、大嵩(おおたか)

担任の高畑(たかはた)先生が視線を何かの書類に向けたまま言う。

「す、すみません…」

名字を呼ばれた宮良はびくりとしながら小さな声で謝る。そして、座席に着いた。

宮良よりも数分前に学校に着いたのであろう。少し離れた席にもう座っていた万鈴は、後ろの方にある座席に座った宮良のことを見て、なにかジェスチャーをしていた。

恐らく、両手を合わせたそれは『置いていってごめん』だろう。

そして、その後に小さく舌を出して片目を瞑ってきた。

彼女は美形だ。彼女のもつ、艶やかな茶髪も、胸はないがすらっとした体型にも憧れる。

そんな『ごめん』のポーズをしたところで、可愛くてむかつくだけだ。

(…あとで文句言ってやろ)




















「そういえば、あの本まだ開いてないわよね。開いちゃわない?」

「そうだね、気になるし見てみよっかな」

帰り道。朝に遅刻したことで友人達に笑われるし、レポートを忘れて先生に怒られるしで散々な目に遭った宮良だったが、今は機嫌が良い。

万鈴に自分を置いて行ったことへの文句を言いつけたところ、大好きないちごオレを奢ってもらえたからだ。

まあ、遅刻した原因は宮良も真鈴と一緒に本に夢中になっていたからなのだが。

それに、ずっと気になっていた本のこと。それを、下校中に開こうというのを万鈴と昼休みに話していた。

昼休みの間に開いてしまっても良かったのだが、帰りにした。

やはり、楽しみは最後までとっておくものだ。


万鈴も不思議な本に興味深々といったところで、わくわくしながら下校の時間を待っていた。もともと、万鈴はオカルトや不思議なことが大好きなやつなのだ。

「よし、なんて書いてあるかなあ。じゃあ開くよ」

「うん!」

ずっと大切にバッグの中に保管しておいた本を取り出す。


宮良はふと、ある感覚に襲われた。



何故だろう。

この本が、この会話が凄く懐かしく感じる。ずっと幼稚園の頃から一緒にいた万鈴までもが懐かしいと、そう思ってしまう。





ゆっくりと茶色の紐を、封を解く。

1ページ目を開く。文字がぎっしりと詰まっている。だが、そのどの文字を見ても意味を読み取れない。

日本語でも、英語でもなかったのだ。今までの人生で、宮良が一度も目にしたことがない文字だ。

「…これって、文字?それとも記号かな?」

隣で本を覗き込んでいた万鈴がそんな疑問を口に出した。

万鈴がそんな疑問を抱いても仕方がないくらいに、その文字らしきものは記号じみてもいた。なんとなく、エジプト文明のころの象形文字(ヒエログリフ)に似ている。


万鈴は本が開かれて下向きになった表紙を覗き込んで言った。


「そういえば、この本って題名とか著者も書かれてないよね?」

「私も朝にそのこと思って探してたんだけど、どこにも書いてなかったよ」 


そう、この本には題名も著者も書いていなかったのだ。

そんな本、読んだことがない。


未知なる本の世界へと旅立てると思っていたのに、読めないのでは意味がないとがっかりする宮良ではない。

彼女は、運動はとても苦手だが勉強は得意だ。それも、読書が幼い頃から好きだったのと、持ち前の探究心があったからだろう。


「解読してみたい…!」

思わず、宮良は心の声が外へ漏れてしまった。

宮良は瞳を輝かせて本のページを1ページずつめくっていく。万鈴はあはは、と楽しそうに笑って「流石は宮良ね」と彼女の意思を称賛した。

めくっていくページは、どこも日焼けしていて、文字がすすけている所もある。

この本は、本当にどこからやって来たものだろう。いつに書かれたものなのかも気になる。

 



「ねぇ、何か聴こえない?」

「え?」

「ほら、やっぱり聴こえるわ。鈴よ、鈴の音だわ」

「ついに万鈴は名前の通り鈴の音の幻聴まで…」

「んもう!違うってば!ほら、耳を澄ましてみてよ!」


万鈴の言う通りに、宮良は耳を澄ましてみる。確かに、下校中にいつも聞いているような自然の音や人工の音の他に、微かだが鈴の音がした。


「ほんとうだ!聴こえたよ、鈴の音っぽいの!」

「ね、言ったでしょう。…どこから音してるのかなぁ」


宮良は一旦、バッグの中に本を仕舞おうとした。


だが、それは叶わなかった。



「え、え、何これ?!本が光ってるんだけど!?」

「え?!ま、眩しっ!?発光する本なんて今の時代あるの!?」

「し、知らない〜!!てか眩しすぎない!?」

宮良が本をバッグに仕舞おうとしたその直後。物凄い光を発しながら本が光り始めたのだ。

そのあまりの眩しさに宮良は目を固く瞑って、不安から無意識に何かを掴もうとして、手に当たったものを咄嗟に掴んだ。それは柔らかく、すぐに何を掴んだかが分かった。

「うわっ、びっくりした!何これ、宮良の手か?」

宮良の思った通り、万鈴の手を掴んだみたいだ。

万鈴は驚きはしたが、急に自分の手に触れたものが宮良の手だと分かると一安心した。それから、別の不安を抱く。


「ねぇ、そんな眩しい光、早めに消したほうがいいんじゃない?ここ住宅街なんだしさ」

「私も消したいんだけど、どうすれば消えるのかも分から…あっ!!」

「あ、消えたね!!」


宮良と万鈴はほぼ同時に声を発した。

ようやく、あの光が消えたのだろう。先程まで白かった、固く閉ざした瞳の内側が真っ暗になった。




恐る恐る瞼を開いていったが。





「「…は!?」」


2人が瞼を開いたら、待っていた世界がいつもと異なるものだった。

彼女達は住宅街の人通りの少ない歩道の隅っこに固まっていた。だから、目を開いたら登下校に使っている道のりのいつもの風景が飛び込んでくるものだと思っていた。


だが、彼女達の視界に収まった風景は全く別物だった。

周りを見渡すと、画像やテレビ越しでしか見たことがないヨーロッパの建築物のような建物がたくさん建っている。

それに、空も暗い。下校時刻は夕方だ。だが、今は夏でまだまだ空も明るかった。

なのに、何で。


「ねぇ…ここ、何処?」

「私もよく分からない…」



彼女達は何が起きたか分からずに、呆然と立ち尽くすしかなかった。

読んでくださった方、ありがとうございます!!

書きたいなぁと思っていたものを形にできて良かったです。

是非、評価などをしてくださると嬉しいです。

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