第617話 継承
「ショウ! 気を抜くな!」
「っ!!」
エルさんからの叱咤を受けて、嫌な想像を頭から追い払う。
今すべきは目の前にいる敵を倒すこと。
「はあぁっ!!」
エルさんの槍での攻撃を嫌がり、横転してそれをかわしたネクロファージャだが、フロストピラーを無理矢理抜いたせいで後ろ足もおかしな方向に曲がってしまった。
それでも、
「グガァッ!!」
「っ! <魔素結界>!」
ガルムライトニングに似た雷の雨が降り注ぐのを、魔素結界を張って遮断する。
「うっ、きっつ……」
なんとか持ちこたえたけど、MPを一気に半分以上持って行かれたし、これを連発されるとヤバい……
「エメラルディア様!」
「ぇぃ」
「ギャアアァァ!!」
エルさんの声に慌てて降りてきたエメラルディアさんが、奴をがっつりと押さえ込んだ。
再びライトニングを放って抵抗を試みてるんだけど……、エメラルディアさんの鱗に吸収されてる?
「これでとどめを」
「え? あっ!」
エルさんから放り投げられた短剣を受け止める。
すごい豪華な装飾が入った鞘。刀身も虹色に光っていて、どう見ても魔剣だよな、これ。
「私は左をやる。ショウは右を」
大盾をどこかにしまい、両手で槍を構えたエルさんが半身に構えた。
マナが尽きたのか、身動きも取れず満身創痍のネクロファージャ……
「でも、こいつはマナ欠乏症で……」
「だめ。この子は、もう、壊れてる、から。早く」
「情けをかける方が残酷なこともある」
まだ狂気を宿している目を見て覚悟を決めた。
「……いけます!」
エルさんの突きに合わせ、アーマーベア頭の眉間に<急所攻撃>を叩き込むと、
【キャラクターレベルが上がりました!】
【キャラクターレベルが上がりました!】
【特殊剣マスタリースキルのレベルが上がりました!】
【気配遮断スキルのレベルが上がりました!】
【気配遮断スキルの基礎値が上限に到達しました。返還SPはありません】
【隠密スキルのレベルが上がりました!】
【隠密スキルの基礎値が上限に到達しました。4SPが返還されました】
【結界魔法スキルのレベルが上がりました!】
【島北部エリアを占有しました】
【島の全てのエリアを占有しました。建国の際にボーナスが適用されます】
〖ワールド初の古代島占有者が現れました!〗
【ワールド初の古代島占有:10SPを獲得しました】
レベルアップの通知が響く中、ネクロファージャの目から狂気が消え、光が失われた。
「これで、よかった、ょ」
「はい」
ゲームだから、その中の設定の一つだから、そうわかっていても悲しい気持ちになる。でも、もう元に戻す方法なんてないんだろうし、それに……
【ネクロファージャ】
『古代の魔術士によって生み出された人工モンスター。
他者の魔石を食して、その力を取り込む能力を持つ。
厄災によるマナ欠乏症で暴走。研究施設の檻を破壊し、同様に飼育されていた他のネクロファージャや島の生物を取り込んでいる。
吸収した生物:ミルメコレオ、ヴァーゲスト、グリフォン、ワイバーン、スモークサーペント、ドラブウルフ、アーマーベア、クロクハイエナ、グラニ、マナガルム……』
【真贋スキルのレベルが上がりました!】
「やっぱり……」
真贋スキルを意識して鑑定しなおしたことで、奴が吸収した生物が見えた。
このマナガルムって……
「ショウ君?」
「多分だけど、こいつがルピの父親を……」
「ぇ?」
レダやロイ、リゲルの仲間、ひょっとしたら家族もこいつにやられたっぽいよな。
「ルピの父親がなんでいなくなったのか不思議だったけど、こいつを倒そうとしたのかも」
「ぁ……」
俺のつぶやきにエルさんも無言で頷く。
ルピは……
「ワフン!」
「うん。頑張ったな!」
父親のことは知らないのかな?
前に聞いた時は、俺だって言ってくれてたもんな。
「ブルルン」「クル〜♪」
「リゲルもラズもありがとうな」
「ニャ。ニャニャ」「ゥゥ」
「そっか。今日のところは放置でいいよ」
ハイエナたちはいなくなったらしい。
まあ、あいつらも被害者だったっぽいし、襲ってこない分にはいいや。
「ゥゥ?」
「うん。いいけど、気をつけてね。レダ、ロイ。クロたちのフォローお願い」
「「バウ!」」
周囲の警戒に出たいというクロたちを送り出したところで、
「魔石、浄化して」
人の姿へと戻ったエメラルディアさんから声がかかった。
ネクロファージャに取り込まれた者を弔って欲しいと。
「そうですね。解体は俺たちでやるから、ミオンは浄化お願いできる?」
「はぃ」
俺とシャル、エルさんにも手伝ってもらって解体することに。
あ、その前に、
「エルさん。これ、ありがとうございました」
「ああ、役に立ったようでよかった」
勝手に鑑定するのも良くないだろうし、しっかり浄化をかけてから鞘に戻して返す。落ち着いた時にでも聞いてみよう。
【解体スキルのレベルが上がりました!】
「これ、ニーナの非常用魔晶石より大きいよね?」
「はぃ」
あっちはバレーボールサイズだったけど、こっちはバスケットボールって感じ?
このサイズなら死霊都市の副制御室を再起動できそうだけど……
「……ネクロファージャの詳しいことは伏せようか」
「そうですね」
「その方がいいだろう。真似をする輩が出る可能性もある」
エルさんの言葉に頷く。
その他、解体でゲットしたのは牙や皮、骨など。
「じゃ、浄化お願い。あ、MP足りる?」
「大丈夫だと思います」
ミオンは精霊魔法と神聖魔法を重視するキャラビルドに進んでるし、俺よりもMPあるから大丈夫かな。
みんなが見守る中、地面に置かれた巨大な魔晶石に浄化をかけるミオン。
ドス黒い感じの魔石から、光の粒が立ち昇り、次第に透明になっていく。
そして、その浄化が終わった瞬間、
【ルピがアーツ<神獣化>を継承しました】
「え?」
いや、ルピっていうか、マナガルムは蒼空の女神の従者って書かれてたし、不思議でもないのかな?
俺の間抜けな声に、ミオンもエルさんも不思議そうにこちらを見ている。
当のルピは……
「ワフ?」
うん、可愛いままだよな。思わずほっぺをむにむにしてしまう。
「どうしました?」
「えーっと、あ、いや、まずは城へ帰ろう。ここで話すのもなんだし」
「ぁ、そうですね」
キャラのレベルもスキルのレベルも上がったし、島北部エリア占有、島の全体を占有したとかもあった。
そっちも確認して、今後の方針を決めないとだよな。










