第616話 決戦
城門を出て、城壁沿いに西へ。
地下室があるあたりへと移動する。
「このあたりですかね?」
「そうだな。ちょうどこの壁の下が地下室の出口付近だろう」
地下通路は西へと続き、その先で左、南西へとカーブ。
そこからはまっすぐ進んだ先で外に出るらしい。
「その出口まで誘導って出来ます?」
「ああ、大まかでよければ」
「お願いします」
エルさんに方向を指示してもらいつつ、ルピたちが先頭。
リゲルに乗った俺と、となりでふわりと浮いているエルさん。
ミオンとエメラルディアさんを囲むようにシャルたちケット・シーと、クロたちギリー・ドゥー。
「クルル?」
「うん。何か見つけたらお願いね」
フードに収まってるラズには上を注意してもらう。
クロたちも上に行きたそうだったけど、今回はミオンの側にいてもらうようお願いした。
「ワフ」
ルピたちが何かに気づいたらしく、そろって同じ方向を見る。
感知共有をかけると……
「どうしました?」
「ハイエナかな。かなり遠くから見てる……」
大人数で移動する俺たちを警戒してるっぽい。
「どうする?」
「構ってる時間が惜しいんで、襲われない限りは放置しましょう」
「わかった」
多分、こっちが行けば逃げるだろうし、それを追いかけてるうちに囲まれるとかやってきそうだし。
気をつけつつ先へと進むと、
「合っていたようだ。ここだ」
「なるほど。こうなってたのか」
リゲルから降りて地下通路の出口を見る。
なだらかな下り斜面にぽっかり穴が空いていて、その周りには魔導安全柵だった物の残骸が打ち捨てられていた。
で、この出口から海岸のあたりまで開けていて、海が見えている。
「少し上から見てきてもいいだろうか?」
「ええ、お願いします」
こういう時、飛べるのって有利だよなあ。
すーっと高度を上げてぐるっと周囲を見回すエルさん。
「大丈夫でしょうか?」
「エルは、強ぃから、だいじょぶ……」
とエメラルディアさん。白竜姫様の護衛を任されるぐらいだもんな。
そういやセスがNPCに稽古をつけてもらって、スキルレベルを上げたって言ってたし、俺も稽古をつけて……
「何か来るぞ!」
「「!!」」
エルさんが槍を向けた方向、その先に見えるのは……なんだあれ?
ドラゴンに似た翼? 飛んでくる何かが見える。
「ワフ!」「「バウ!」」
ルピが戦闘モードになり、レダとロイもそれに答えるように四肢を広げて構える。
シャルたちも細剣を抜いて応戦の構え。
「ミオン。みんなにもう一度加護を!」
「はぃ!」
飛んでくるそれが段々大きくなって、その異形が完全に見えた。
「エルさん! 下へ!」
「呼び寄せてしまったかもしれない。すまない!」
降りてきたエルさんが、そう言ってルピの隣で槍を構える。
「いえ、大丈夫です。どうせなんとかしないとダメな相手だと思います」
近づいてくるにつれて、そいつの異形さがはっきりしてくる。
いろんなモンスターが融合してて、キマイラっぽい見た目なんだけど、加えてサイズがやばい。
ライオンの顔とアーマーベアの顔の二つに胴体はなんだ? 尻尾は蛇? 脚はグリフォンだけど、翼ってやっぱりドラゴン?
「あれはワイバーンの翼だな」
「ワイバーン……」
赤いネームプレートには【ネクロファージャ】と書かれているのが見えた。
もう少し近寄れば鑑定も通りそうなんだけど、
「「グゴアァァ!」」
そのまま上空から二つの顔で威圧するネクロファージャ。
それに応じるように、ルピたちが唸り声をあげる。
「グガァッ!!」
「っ! 水の盾っ!!」
ライオンの方の口から放たれた火球を防ごうと水の盾を出したんだけど、止められるのかこれ!?
「永遠の大盾!!」
左手を突き上げたエルさんの正面に大盾が現れ、水の盾を突き抜けた火球を完全に防いでしまった。
それに驚いてる暇もなく、
「上から一方的に攻撃されるとまずい」
「ショウ君!」
エルさんとミオンの言いたいことは当然わかる。
「エメラルディアさん、お願いできますか?」
「ぁぃ。落とせば、ぃぃ?」
「はい!」
そう答えた瞬間、エメラルディアさんが飛び上がり、翠色のドラゴンへと変身。
目の前に自分よりも一回りは大きいドラゴンと対峙しても、威嚇をやめないネクロファージャが、
「グガァッ!!」
再び火球を放つも、エメラルディアさんが出した分厚い水の盾がそれを消した。
続いて何か小声で呟くと……精霊魔法? 何かが起こったようで、奴の翼にいくつもの穴が開いた。
姿勢制御を完全に失い、真っ逆さまに落ちるネクロファージャ。
「「グアァァァ……」」
二つの頭から墜落し、左前脚(?)もありえない方向に折れ曲がっているが、血走った目はまだ狂気を宿している。
「ウオォォ〜ン!!」
ルピの体を紫電がまとい、リゲルの足元からも冷気が溢れ出す。
二人から、今までにない覇気を感じるのは、それだけこいつがヤバいからなんだろう。
「私が攻撃を受け止める。その間にとどめを」
「了解です!」
ボロボロになりつつも起き上がってくるネクロファージャ。
全く痛みを感じていないのか、思い切り飛びかかってくるのを、エルさんの大盾が受け止める。けど、
「ショウ君! 蛇の尾が!」
「ルピ!」
「ウオォォーン!」
ルピのガルムライトニングが蛇の尾に落ち、動きが固まったところを、
「リゲル! 足止め!」
「ブルン!」
リゲルのフロストピラーが後脚を貫いて縫い止める。
「いくぞ!」
エルさんが大盾を引いて空かすと、
「クル!」
ラズの炎の矢が二本。
それぞれの頭に命中した瞬間に隠密を発動して、
(バックスタブ!)
近い方、アーマーベアの延髄へと叩き込む!
「くっ!」
ギイィンと鈍い音を立てて弾かれるククリナイフ。
急所に叩き込んだはずなのに弾かれた!?
「ニャ!」
「「「ニャニャ!!」」」
俺がミスった隙をフォローするよう、細剣で攻め寄せるシャルたちだけど、暴れるネクロファージャの翼に当たって吹き飛ばされる。
「レダ! ロイ!」
「「バウ!」」
レダとロイが怪我した子を回収してミオンの元へと運んでいく。
「ミオンお願い!」
「治癒!」
これで一安心だけど、シャルたちにはちょっと手に負えない相手か。
ラケたちにも厳しいだろうし、クロクハイエナたちがまだ様子をうかがってるので、ミオンの護衛を優先してほしい。
「ごめん! シャル、ラケたちはミオンを守って!」
「ニャ!」「ゥゥ!」
「ショウ君。鑑定を!」
そうだ! 鑑定! 何か奴の弱点!
【ネクロファージャ】
『古代の魔術士によって生み出された人工モンスター。
他の魔石を食して、その力を取り込む能力を持つ。
厄災によるマナ欠乏症で暴走。研究施設の檻を破壊し、同様に飼育されていた他のネクロファージャや島の生物を取り込んでいる』
え? こいつって……










