第610話 セラさんのお城内見案内
「この城は3階までありまして、こちらは本館、離れの塔は別館となっております」
「その別館の塔って地下の船着場みたいなのに繋がってたり?」
「はい。よくご存じですね」
その別館っていう塔の地下が、崖下の洞窟のところまで繋がってるのは確定。
あの日、あの場所から入ってたら、その時にセラさんと出会ってたのかな?
「洞窟のところにスラッジバットがいたけど、ああいうモンスターってここには出ないですよね?」
「はい。ここ本館の中は安全です」
セラさんの今の仕事が本館のハウスキーピング。
扉の向こう、庭や地下、別館の塔の構造は知ってるけど、今どうなっているかはわからないと。
「お仕事の範囲は屋内だけですか?」
「いえいえ。指示いただければ、庭のお手入れもお手伝いできますよ。奥様」
家の上位精霊らしく、家とみなされる範囲内なら自由に移動できると。
ただ、前の契約者が指示した仕事に縛られるので、今は本館だけなんだとか。
「えーっと、前の契約者さんって?」
「すでに亡くなられてるはずです。私が名前を思い出せませんので」
そう苦笑いを返され、しまったなあと。
よくよく考えると、契約した相手が引退してゲーム内に存在しないキャラになっちゃった場合を想定してるのかな。
「ぁの、その場合はお仕事もそのままなんでしょうか?」
「はい。新たなお仕事をいただくまでは、以前のお仕事を続けることになっております」
そのあたりは精霊魔法と同じで、止めるか別のことを頼むかしない限りは、今の仕事を続けるらしい。
「ん? MPっていうか、マナは必要ないの?」
「問題ありません。上位精霊ですので!」
そういって胸をはるセラさん。
上位精霊は自身の存在の維持以外にも自主的にマナを使えるそうで、シルキーは人との会話やハウスキーピングのあれこれにマナを使ってるそうだ。
うん、話が逸れた。
「地下と別館の塔に何があるかとか、どう使われてたかとかってわかります?」
「いえ、存じません。別館と地下は後から増築されたのですが、どう使用されたのかまでは……」
セラさんの以前の契約者さんが増築したけど、知ってるのは構造だけ。その後どうなったかは知らないと。
というか、そもそも何年前からこの城があったんだって話なんだけど、セラさん自身、家事に関連すること以外は覚えないそうで。
「精霊とはそういうものだ。上位精霊であってもな」
「あはは……」
その言い方はどうなんだろうと思ったんだけど、セラさんもうんうんと頷いてるし。
「それでは2階をご案内します」
セラさんに案内してもらい、みんなで城の2階へと。
階段を上ったところから、広い廊下、ロングギャラリーと呼ばれる場所で、なんだか高そうな風景画が並んでいる。
そこから繋がる西側は広い執務室、ダイニングルーム。東側には小さめの空き部屋が並び、その奥はドローイングルームっていう接客室らしい。
「こちらが執務室です」
かなり広い執務室。屋敷のリビングをさらに一回りは広くした感じで、ゴツい執務室の前には、これまたゴツいローテーブルが置かれている。
「執務室って何するんだろ?」
「参考になるかわからんが、アージェンタ様が普段行っているような仕事だろう」
うん、俺には必要ないよな。
あー、でも、アージェンタさんたちが遊びに来た時に、こっちを使ってもらうとかはありかも。
執務室の向かい側がダイニングルームで、こっちも同じぐらい広い。
「これって転送魔法陣?」
「はい。真下の1階キッチンで作られた料理を運ぶためのものですね」
その他にも火を使わない魔導燭台だったり、温かい料理のための魔導保温板だったり、いろいろと便利なものが置かれていた。
他の部屋も見て回ってから3階へ。
なんだけど、3階は寝室が多く、西に大きく広い主寝室。東に使用人たちの個室、お客様用の寝室もあった。
「うーん……」
「どうしました?」
「ここって古代遺跡だったよね。でも、ニーナさんみたいな施設じゃないのかな?」
制御室がないんだよな。
まあ、古代遺跡だからって、どこも制御室があって管理者になれるわけじゃないんだろうけど。
「塔の方にあるかもですよ?」
「あ、そうか。増築したって話だもんね」
じゃ、先に調べるのは塔の方かな。
さっそくと行きたいところだけど……、そろそろ屋敷に戻らないといけない時間だよな。
「いったん、自分たちの屋敷へ帰るんで、一緒に来ますよね?」
「それはもちろん!」
とのことなので、魔晶石に入ってもらおうと思ったんだけど、
「その前に、新たなお仕事を命じていただけますか? 今のままでは外にも出られませんので」
「ああ、なるほど。じゃ、えーっと……、この本館と中庭、あとうちの屋敷の管理をお願いします」
「かしこまりました」
屋敷に戻ったら、スウィーや白竜姫様、エメラルディアさんたちに紹介しないと。
エルさんが竜の都のお城にもシルキーがいるって話してたし、大丈夫だよな……
………
……
…
「シルキ〜♪」
「セラと申します。よろしくお願いします、お嬢様」
魔晶石から姿を現したセラさんを見て、嬉しそうなのは白竜姫様。
で、それはいいとして、
「ぇぇぇ……」
「〜〜〜♪」
なんか驚いてるエメラルディアさんに、スウィーがいつものことみたいな話をしてるんだけど。
「エメラルディアさんも、当然シルキーは知ってるんですよね?」
「ぁぃ。竜の城にいるシルキー、私と契約してる……」
「「え?」」
いや、エメラルディアさん、幻獣や妖精に詳しいって言ってたし、精霊魔法や精霊使役も使えて当然か……
バーミリオンさんが身体強化、エメラルディアさんが精霊魔法、アズールさんが元素魔法と、それぞれの色で女神の色にあった特徴を持ってると。
「ただ、エメラルディア様は自堕落な生活が過ぎて、契約したシルキーたちに怒られていたからな」
自分が契約したシルキーに怒られるっていったい……










