第608話 い、いる?
日曜日
日曜日。いつものようにミオンの家で一緒にお昼ご飯を作って食べた。
昨日のライブと同じハンバーグを作ったんだけど、あっさりめのおろしハンバーグにして和食っぽい感じに。
ほうれん草のおひたしがかなり美味しく作れて嬉しかったんだけど、やっぱり高級な出汁を使ったからなんだろうなあ。
「そうそう、お昼前に六条さんから連絡があって、澪のファーストアルバムの初動売り上げは予想以上だそうですよ」
そうニコニコ顔で話す雫さん。
俺もミオンもそれを聞いてほっと一安心。
予約が好調だとは聞いてたけど、それでもちょっと不安だったし、正直、まったく売れないって状況じゃなきゃいいよねって話をしてたぐらい。
「それで向こうとも話をしたのだけど、次のアルバムについては早くても一年後ということにしてもらいました」
「あ、はい」
詳しいことはよくわからないけど、俺たちは高校生なわけだし学業優先。というよりは、高校生活優先でという話になったそうだ。
向こうもそれで全然問題なくて、ミオンがIROの翡翠の女神役を続けてくれるのであれば、プレイ頻度とかも問わないとのこと。
「えーっと、だいぶ緩いというかいいんですかね?」
「向こうも六条の会長さんから言われているそうよ。翔太君と澪には高校生活を優先させるようにって」
会長さん、収録の時にあったおばあちゃんだよな。
うちのばあちゃんとはまた違った、優しいけどパワフルな人だった。
「それとゲームの新しいPVがそろそろという話もありました」
「そちらは公開まで秘密でお願いします」
と椿さんからフォローが入る。
で、やっぱり俺たちに出てほしいらしく、週明けぐらいにはプレイシーン採用の許可の問い合わせがくるとのこと。
今のところ隠しておきたいのって、神樹を使った妖精の道と、もう一組の転移魔法陣ぐらいかな?
まあ、見てから考えればいいか……
………
……
…
ミオンが自身の姿でもある翡翠の女神像にマナを注ぐと、そこから現れた聖域が城の中庭を覆う。
「じゃ、ちょっと見てくるよ」
「はぃ。気をつけてくださいね」
IROにログインし、城の中庭へとやってきた。
この場所の安全性を高めるために翡翠の女神像を持ってきて、聖域も展開してもらったんだけど、ちょっと過剰だった気がしなくもない。
「ここは任せてくれ」
「ニャ!」「「「ニャ!」」」「「バウ!」」
城内の確認は、俺、ルピ、ラズの3人でやることに。
ミオンはもちろん、レダとロイもついてきたがったんだけど、そうなるとどんどんと参加人数が増えて収拾がつかなくなる。
中にはモンスターがいるかもしれないし、大型転送室にアンデッドがいたみたいなことだってあるかもしれない。
南端の砂浜から無人島スタートしたことを考えると、北端のこの城はヤバい敵がいそうなんだよな。
撤退するってなった時に、俺とルピ、ラズだけなら、転移の魔法で一瞬なわけで、その時のことを考えるとこの場所を守ってもらってた方がいい。
「ワフ」
「うん。先に聞き耳してからね」
城の大きな扉に耳をつけて聞き耳を立てる。……何も聞こえないけど、これって扉が厚いからだよな。
「大丈夫だよな。加護をお願い」
光、樹、水の精霊から加護をもらって準備オッケー。
大きな取っ手に手をかけると、いつもの問いかけが聞こえてくる。
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。最上位管理者権限を確認しました。開錠しますか?】
「はい」
両開きの扉をゆっくり慎重に押す。少し隙間が空いたところで中の様子を確認。
大丈夫そうなので、今度は大きく押し開ける。
「うわ、天井高いな」
目の前に広がるのは、かなり綺麗な石畳のホール。
高い位置に大きなガラス窓があるおかげで、中はまあまあ明るい。
「一応、出しておくか。あかりを」
胸元から現れたあかりがすーっと天井付近へと飛んでいく。
正面には広い玄関ホール。すぐ右手には上り階段があって2階へと繋がっている。
「まずは1階から行こうか。ラズは後ろお願いね」
「クル〜♪」
フードが定位置のラズには後ろを警戒してもらい、行き先はルピにお任せ。
左手、西側にある扉のない部屋へと入ると、そこは応接室? 待合室? 大きな木のテーブルに椅子が6脚があるんだけど……
「埃もついてないし誰か住んでる?」
ホラーっぽいのは嫌だなあ。
マルーンレイスとか現れたら逃げるしかないし、翡翠の女神像は持ってきた方が良かったか?
「ワフ」
「おっけ」
部屋を出て左手、西側への通路を進むと、その先には地下へと繋がる階段があった。
下りた先は魔導扉が閉まっていたので、ここは後回しかな。
戻って左手奥、北西の部屋へと入ると、ここはかなり広い台所兼食堂。ダイニングキッチンって言うべきなのかな。
「うーん、手入れされてる……」
壁に沿って食器棚が並んでいて、そこには綺麗な銀食器(?)が収納されている。
魔導コンロも綺麗な状態だけど、使われてはなさそう? そして、
「この魔導保存庫って屋敷にあるやつと同じ?」
「ワフン」「クルル」
新しくもらった大きい方と同じっぽい。
中を確認してみたいんだけど、誰か住んでるんだったら失礼だよなあ。
いや、今さらだし、その時は怒られるでいいかと思い直して開けみたら……、空っぽ。
「ん? この魔法陣、どこかで見たことあるような?」
思い出せなかったので鑑定すると【転送魔法陣】と出た。
ああ、南の島の採掘施設で見た、作業室にインゴットを送るやつだ。
つまり、ここで作った料理を別室に送れるようになってるってことかな?
「よし、次」
「ワフン!」
ホールに戻って突き当たりの北側には魔導扉が閉まっていたのでスルー。
左手奥、北東側へと続く通路には、左右に空き部屋があって、突き当たりはこっちも魔導扉。
「1階はこんなとこかな」
「ワフ」「クル〜」
階段を上って2階を見るかなとホールへ戻ってきたら、
「ようこそおいでくださいました」
メイド服の女性、いや、幽霊? がそう言って深々と頭を下げた。










