第597話 トレンドメーカー
水曜日
9月も下旬に入ろうっていう時期なのに、まだまだ残暑が厳しい。
さすがに屋上はパスして、エアコンの効いてる教室でのお昼にした。
「コボルトもずいぶん減ったし、あの森を抜けた先に行こうって話になってるな」
「そりゃ良かった。俺は自分の島の方に専念したいし、あと任せちゃって大丈夫そうか?」
北の塔の探索が終わるまでは、そっちに専念したいんだよな。
できれば今月中に探索が終わってスッキリしたいところ。
「問題ないと思うぜ。そういや、昨日、マスターシェフさんに会ったけど、お前がまた来るかどうか気にしてたぞ」
「え、マジか。うーん、会って話したいところだけど……」
いずれ離島互助会を始めるし、その時にもいろいろお世話になるだろうし。
いや、ひとまず小屋を作り終わるまでは、そっち優先したいところなんだよな。
そういえば、サバナさんはそろそろ落ち着いたのかな? わりとそれ次第な感じなんだよな……
「また行くだろうけど、すぐじゃないってことにしといてくれ。あ、それはそれとして、お前んとこに問い合わせ来てたりしないの?」
「おう、めっちゃ来てるぞ」
そう言って笑うナット。
月曜に俺を見た人たちから、その日何があったかが広まって、結果としてナットのところのギルドへの問い合わせがすごいらしい。
もちろん、予想してたことではあるけど……
「大丈夫か?」
「全然平気だぞ。俺の知り合いって話で通してるし、実際そうだしな」
「じゃあ、平気か」
「おい!」
それでナットに話が回ってきて『別ゲーからの友達』で通してるらしい。嘘でもないもんな。
で、その問い合わせの内容は「連絡取る方法を教えて欲しい」っていうのが一番。
次に「俺に売っている品があれば、それをこっちにも売って欲しい」って話だそうで。
「え? どういうこと?」
「伊勢君が扱う品は、次に売れる商品になるからってことでしょ」
呆れてそう言ういいんちょ。
「は?」と思ったんだけど、隣でミオンもうんうんと頷いている。
とろとろ干しパプ、ガラス瓶代わりの陶器瓶、精霊石、草木染めスカーフと指折り数えられて……、まあ、うん。
「なんて答えてるんだ?」
「アズキの話をしたら納得してたな」
と笑うナット。
じゃあ、今日のライブはもうその話しちゃって大丈夫そうだな。
あんこを使ったデザートを思いついたし、それをお披露目しよう。
「あ、そうだ。水晶鉱石がまた欲しいんだけど」
「用意はできるけどよ。そんなたくさんいるのか?」
「ステンドグラスで結構つかったし、ガラスの代わりに使えるから、アイスの皿とかにしたいんだよな」
その答えにナットが呆れる。
普通にガラスで作った器の10倍以上の値段になるんじゃないかっていう。
「いや、俺が見たガラスって全部色付きだったから、ちゃんと透明なやつが欲しいんだよな。本土にはあるのか?」
「ねーよ!」
そもそも綺麗な透明のガラスは、古代遺跡関連でないと手に入らないんだとか。
公国の南、魔術士の塔にある窓ガラスなんかは、魔導ガラスっていう割れないガラスらしい。……欲しいなあ。
「お前、またやらかしそうな顔してるぞ……」
「え?」
「色ガラスの件もあるし、なんかわかったら教えろよ?」
そっちは正直お手上げ状態なんだよな。
今日のライブで何かわかるといいんだけど……
………
……
…
「気をつけてくださいね?」
「うん」「ワフ」
まずはルピを抱え上げ、昨日の夜に決めた建設予定地まで転移の魔法で移動。
ルピもずいぶん大きくなったなあと思いつつ、
「<転移:北の森前>」
目を瞑って次の瞬間には昨日いた場所に。
ルピに周りを軽く見てもらって……、問題なしってことで転移魔法陣を置く。
「ミオン。設置できたよ」
『はぃ』
返事と共に、レダとロイ、シャルたちが現れ、次にパーンたちが。
さらにエルさんと白竜姫様、スウィーも来て、最後にミオンとエメラルディアさんが現れた。
「えーっと?」
「すまない」
「アルテナちゃんがどうしても行きたいって」
なんで、エルさんとエメラルディアさんの二人とも連れてきたと。
それは全然いいんだけど、ここ殺風景だからなあ。
「おっけ。じゃ、リゲルも呼ぶよ」
近くを散策するなら、リゲルを召喚しておくのが安心かな。
建設現場近くは別の意味で危ないし、草原の方なら安心だとは思う。
「リゲル、白竜姫様は任せたよ」
「ブルルン」
モンスターが出るとしてホガニーブルだろうし、エルさんとエメラルディアさんがいれば大丈夫だよな。
ミオンと白竜姫様を乗せたリゲルを見送って、
「ワフ?」
「うん。レダとロイを連れて森の入り口あたりを見回ってきて。何かあっても無理しないようにね」
「ワフ」「「バウ!」」
これでよし。次に、
「シャルたちはこの近くの警戒よろしく。パーンたちは俺の手伝いお願い」
「ニャ!」「リュ!」
まずは基礎を掘るところから。
掘削して出た土はパーンたちに集めてもらって、あとで土塀にする予定。
「じゃ、始めよう」
「「「リュ〜」」」
………
……
…
小一時間作業をして、柱を四本建てたところで、ミオンたちが帰ってきた。
「ただいまです」
「おかえり。何かあった?」
「ぃぇ、特には。小島が見えるところまで行ってみましたけど……」
別段変わった様子もなし。
エメラルディアさんが飛んでいってみるって話もあったんだけど、俺の許可無しにはまずいだろうって話で戻ってきたそうで。
「ありがとうございます。北端の塔まで探索終わったらでいいと思うんで」
「了解した」「ぁぃ」
揃ったところで撤収の準備を。
夜にまたこっちにくるので転移魔法陣は置きっぱなしにすることになる。
「ニャ!」
「ん? 残りたいの?」
「ぇ?」
シャルたちがここの警備に残ってたいらしい。
うーん……
「ワフ!」「「バウ!」」「ブルルン」
「ルピたちも残りたいって」
「大丈夫でしょうか……」
戦力的には問題ないと思うし、転移魔法陣で逃げられるから大丈夫だとは思うけど……
「ぁの、私も、残るから」
エメラルディアさんもそう言ってくれたので、それならってことでオッケーする。
なんだか過剰戦力な気がするけど、安全なのに越したことはないよな。










