第560話 大事なのは楽しいこと
金曜日
放課後。
さっそく、エメラルディアさんを南の島へ連れて行くことに。
「向こうでは私のそばを離れないでくださいね」
「は〜い♪」「ぁぃ、ぁぃ」
引率はミオンにおまかせで。エルさんもサポートしてくれるし。
俺は俺で、ガジュと会ってじっくり話しておきたい。ベル部長やセスからは悪い話は聞いてないけど、キジムナーからすると不満があるかもしれないし。
「〜〜〜?」「ワフ?」
「おっと、ごめん。じゃ、行こうか」
神樹に妖精の道が開かれたので、いつものようにルピに先頭をお願いする。
今日はシャルとパーンも一緒に来てるので、先に行ってもらって、その次に俺。
ミオン、レダとロイ、白竜姫様、エルさん、エメラルディアさん、スウィーたちと続く。
「よっと。ガジュ、久しぶり」
「ジュ〜♪」
両手でハイタッチのいつもの挨拶。
ミオン、白竜姫様、シャル、パーンとハイタッチしたところで、
「ジュ!?」
「翠竜のエメラルディアさんだよ」
今は人の姿だけど、ドラゴンなことはちゃんとわかってるようで、すごく驚いてるガジュ。
「ジュジュ?」
「うん。うちの島で働いてくれることになったんだ」
「ジュジュ〜♪」
「ぅぅ、かぁぃぃ……」
ガジュのハイタッチに応えるように、膝立ちになって手を合わせるエメラルディアさん。すごく嬉しそうでなにより。
エメラルディアさんは、まずは里にいるキジムナーたちに顔見せに行ってもらう。
里の外、門前町とかでお手伝いしてくれてる子たちには、おいおい説明してもらえばいいかな。
「じゃ、ミオン、あとはよろしく。エルさんもお願いします」
「はぃ」「ああ、任せてくれ」
白竜姫様とエメラルディアさんたちを連れて、里の奥へと向かっていった。
俺とガジュ、パーン、シャルはそれを見送って、神樹の側に腰を下ろす。
「えっと、結構、島に来る人が増えてきたと思うけど、何か困ってることとかない?」
「ジュ〜……」
うーんと考え込むガジュ。
あんまり思いつかないならそれはそれで全然いいんだけど、
「ジュ! ジュジュ〜?」
「あー、お金か」
門前町でお金、硬貨を使ったやりとりをしてるのを見かけて、自分たちもそうするべきなのか、少し悩んでるとのこと。
そんな話をしている隣で、パーンとシャルが何やら話している。というか、シャルたち、ケット・シーにはお金の概念があるらしい。
それをガジュやパーンに説明してくれている。
「リュ〜?」
「ニャーン」
「ジュジュ」
シャルたちは元いた島、今はラムネさんのシトロン王国になってるけど、昔からお金を基準にした売買があるそうだ。
今は本土とつながったし、プレイヤーもかなり行き来してるし、お金のやり取りも増えてるのかも?
「ジュジュ……」
それを聞いて悩むガジュ。
まあ、キジムナーたちなら詐欺にあったりはしないだろうけど……
「今まで使わなくてもよかったんだし、無理に使わなくてもいいよ。どうしても欲しい物があったら、俺に言ってくれれば代わりに買うから」
「ジュジュ?」
「うん。その分、この島でしか取れない果物とか、魚とか、そういうので払ってもらえればいいし」
「リュリュ〜?」
「パーンもシャルもね。普段から畑の手伝いをしてもらってるし、欲しい物があったら遠慮なく言ってね」
「リュ〜」「ニャ〜ン」「ジュジュ〜」
ガジュからの話はそれぐらい。
なので、俺の方から悪魔の話とエメラルディアさんの話を。
サバナさんの島であった出来事から順に説明した。
「ジュジュ!」「ニャ!」
「リュリュ」
その話を聞いて、熱くなるガジュとシャル。
パーンは逆に冷静で、この島やうちの島の防衛をしっかりしないとって話をしてくれる。
「うんうん。それもあって、エメラルディアさんに、しばらくこの島に滞在してもらおうかと思ってて」
「ジュ〜!」
「ニャン」
あ、良かった。
ガジュも喜んでくれてるし、シャルも納得してくれた様子。
しばらくっていうのがどれくらいかは未定だけど、その間、週に一度は様子を見に来ることにしよう。
「リュリュ?」
「あ、うん。スウィーもいいんじゃないって言ってたよ」
パーンはスウィーの意見を尊重することが多いんだよな。
まあ、スウィーはああ見えてフェアリーの女王だからなあ。
「ジュ?」
「うーん、1、2週間ぐらいかな? でも、その後もエメラルディアさんには定期的にこっちに来てもらうつもりだよ」
「ジュジュ〜」
お互いの島でしか取れない物の交換を、もっと定期的にできればって話を。
将来的には他の島とも行き来も考えてるけど、今はまだ話さなくてもいいかな。
***
「あ、戻って来ましたねー」
リアル部室へと戻ってくるとヤタ先生が待っていたっぽい?
「何かありました?」
「ゲームの方でいろいろあって大変だと思いますがー、ミオンさんが島でライブする日は決まりましたかー?」
「あ、えっと、明日の土曜から収録曲の試聴が始まるそうなので、それに合わせてでいいかなと」
最初はリリース当日がいいかなって思ってたんだけど、運営というか六条グループの音楽会社の方から、宣伝のためにもリリース前でお願いしますって話だけど、
「すいません」
「相談しておくべきでした」
「大丈夫ですよー。お二人のことはお二人で決めるのが大事ですからねー」
とヤタ先生。さらにはベル部長からも、
「エメラルディアさんの件もあるし、早いうちに南の島と行き来できることは話しちゃった方がいいと思うのよね。それにはミオンさんが島にいるのが一番でしょ?」
確かにそうだよな。
あれこれ詮索される前に、もうミオンはうちの島に迎えましたって言っちゃうっていう。
「ライブは二人がのんびり楽しくゲームするのがメインなのでー、他にあまり気を使う必要もないと思いますー。誰に迷惑をかけてるわけでもないですしー」
「先生の言うとおりよ。まずは自分たちが楽しくないとね」
そう言ってくれたおかげで、俺もミオンも心を決める。
「じゃ、明日で!」
「はぃ!」










