第478話 白銀の館・南の島ツアー
死霊都市、竜族の区画にある塔に訪れたのは『白銀の館』のコアメンバー。
魔女ベル、ユキ、ゼルド、バッカス、シーズンの5名。ジンベエとディマリアの2人は、アミエラ領で留守番という形になった。
ちなみに、セスは帰省、ゴルドお姉様もリアル多忙のため不在である。
「アズール様。ベル殿一行が来られました」
「お、来たねー。じゃ、さっそく行こうか」
「ええ、お願いします」
相変わらず竜族の威厳はどこに行ったのかというぐらいの緩い対応。
ベルはもう慣れているが、まだ会って間もない他のメンバーは困惑したままだ。
「ゲイラ。あとは頼むよー」
「はっ!」
ここでの竜人族の代表であるゲイラが背筋を伸ばして返事をする。
むしろこれくらい固い方がやりやすいと思う一行だが……
「はいはい、行って行ってー。僕が最後ね」
塔の一室。厳重な警備が敷かれている一室に案内されると、その中央には転移魔法陣が置かれていた。
これが無人島スタートの先駆者ショウから、ピアノ修理の報酬として受け取ったと言われる転移魔法陣……ということになっている。
「じゃ、私、ユキさん、シーズンさんが先に行きますね」
「お、おぅ……」
女性3人が先に転移魔法陣へと乗ると、淡い光に包まれてすぐに消えた。
ゼルド、バッカスの2人がそれを追いかけるように転移魔法陣へと乗って、ほどなくして消える。
「僕、そんな怖がられる存在かな?」
「はは、普通はそうでしょうな」
「ショウ君は全然そういうところないのになあ」
そうぼやくアズールにゲイラも苦笑いでしか答えられない。
ゲイラから見ても、アズールやアージェンタと普通に話せるショウは不思議だ。
それ以上に、彼らが最も敬愛する白竜姫様が彼に懐いてしまっていることの方が不思議なのだが……
………
……
…
「おおお!」
「マジかよ……」
思わず声を上げる男性陣に対し、女性陣は至って冷静。
落ち着いてあたりを見回し、古代遺跡を見上げる。
「なるほどねー」
「これはすごいですね。転移魔法陣が報酬と聞いた時は驚きましたが、この島に繋がっていたと」
「ええ、そうなの」
シーズンの言葉に首肯するベル。
となると、当然の疑問として浮かぶのが、転移魔法陣の以前の持ち主であるショウが、この島の存在を知っていて報酬にしたのかという点だが……
「今日はどうするの?」
「あ、はい。まずは島を軽く案内する予定です」
「おっけー」
アズールの気安い返事を受けて、ベルたち女性陣がコテージの方へと歩き出す。
それを追いかける男性陣と、最後にアズール。
「なあ、ベルさん。ショウ君はこの島を知ってるんだよな?」
「そういうことは聞かない方がいいです」
「私も同意見かな」
バッカスの問いに冷たく答えるシーズンと、それに賛同するユキ。
その様子に困った顔のベルだが、
「そうしてもらえると助かるわ」
「この島は僕が見つけたからね?」
アズールがニコニコ顔で付け加える。
「あ、ああ、了解した。いや、了解しました」
「細かいことは良かろう。それよりも、この島を今後どうするかじゃな」
男性陣も納得した模様。
その様子にアズールがうんうんと頷いている。
「この辺りのコテージはすでにセーフゾーンね」
「ここでログアウトしたらどうなるのかな?」
「試してみたいところですね」
あれやこれやと話し合っている女性陣に対し、ゼルドとバッカスは無言でコテージ自体の強度や間取りなどを確認する。
これから先、ここを拠点とした場合に必要なものを作るための下調べだ。
「行きますよ」
「おう」
ベルがそのままコテージを西へと進み、その端からアームラの林へと入る。
そこにある赤い実を見て、喜色を浮かべるユキとシーズン。
「マンゴーですね」
「ディマリアさんも連れてくれば良かったかなあ」
ショウが関わっているからか、熟した実を前に躊躇している2人だったが、
「とってもいいよー」
最後尾のアズールからそう声がかかり、それぞれが一番美味しそうと思うアームラの実をもいで、インベントリへと入れた。
すぐにでも食べたいところだが、ベルがまだ先へと進むのを見て自重した結果だ。
「この林の北側には教会があるのだけど、そっちは帰りに寄ることにするわ」
「「了解(です)」」
林を南西へと抜けたところでベルが足を止める。
キジムナーたちの集落近くまで続く山道への入り口が見えた。
「ユキさん。この先、コボルトが出るかもなの」
「じゃ、私が先頭かな。ゼルドさん、バッカスさんは、ベルたその前へお願いします」
「「おう」」
ゼルドの手にはハンマーが、バッカスの手には斧が握られる。
このメンバーならコボルト程度は全く問題ないのだが、だからといって油断せず隊列を変更する。
そのまま進むことしばし。土が剥き出しになった広場へと出た。
「ここは?」
「あの砦は一体?」
「あの砦の向こうにはキジムナーっていう妖精が住んでいるの。今から彼らに挨拶に行くわよ」
その言葉には、さすがのユキたちも驚くほかなかった……
◇◇◇
「〜〜〜♪」
「「「〜〜〜♪」」」
ショウとミオンが住む島のお屋敷。
スウィーがキングサイズのベッドにある枕に腰掛けています。
「ニャ」
部屋を訪れたのはシャル。
島の主人であるショウと翡翠の女神のミオンは不在ですが、その間のお目付役ということで、リーダー代理のスウィーとルピに日々の挨拶に来ました。
「ワフ」
「「バウ」」
「〜〜〜?」
「「「〜〜〜♪」」」
散歩に行こうかなというルピたちと、それについて行くつもりのフェアリーズ。であれば、シャルがついて行くのは当然のことですね。
「ニャニャ?」
「ワフ」
「〜〜〜♪」
定番の島の南側をぐるっと一周するコースということで、シャルは部下たちを連れていこうと考えます。
食糧確保はもちろんのこと、ルピたちと合同の狩りは部下たちの訓練にもなるのです。
「ワフワフ」
「〜〜〜♪」
ラズも誘おうとルピ。彼はショウがいない今、仲間のカーバンクルたちと生活していて、ウリシュクの里にある神樹にいます。
途中でパーンたちも誘うつもりなので、その時に聞いてみることになりました。
トゥルーたちセルキーや、クロ、ラケ、アトたちギリー・ドゥーには、後でおみやげを差し入れようということに。
こうして島の住人たちは、彼らの主人がいなくても、楽しくのんびり過ごしているのでした。









