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IRO運営(7):華麗なる逆走劇

「いいですか、落ち着いて聞いてください」


「……それって元ネタなんだったっけ?」


「某スニーキングゲームですけど、実はセリフ違ってるらしいですよ」


「へー、そうなんだ。まあ、ネットミームって、元ネタの原形を留めてないことも多いもんねえ」


 ミシャPがうんうんと感心しつつ、プロデューサー室の扉を開ける。

 虹彩認証でアンロックされた扉が、スーッと開き、すぐに部屋の中の照明がついた。


「しっかり休めました?」


「んー、まあまあかな。で、落ち着いて聞かないといけないことって?」


「例の南の島でいろいろあったんですよ」


「え?」


 ショルダーバッグを置いて、コーヒーサーバーへと。

 自分の分とGMチョコの分を淹れて、ローテーブルへと置き、そのままソファーへと座る。


「……ショウ君たちって部活で合宿に行くとか言ってなかった? そのあとは帰省するって話だったと思うけど」


「合宿先からログインしてたとかじゃないですかね。ちなみに、結構な頻度で昼と夜、プレイ時間もたっぷりですね」


「え? え? どういうこと?」


「ゲーム部なのでは?」


「くぁwせdrftgyふじこlp〜〜〜!」


 奇声を発し、天を仰ぐミシャP。

 もし、GMチョコの言うようにゲーム部なら、別にライブを制限する必要もなかったのではと思ったが、


「まあ、例の離島解放運動でしたっけ? あれを避けて、じっくりと南の島を満喫したいとかじゃないかと」


「……で、何が起きたの?」


「まず、教会を見つけました。で、当然、名も無き女神像も見つけました」


「それはまあ、想定内だけど」


 元々、あの南の島からスタートした場合、アームラの林を見つけ、そのまま教会も見つけるという、用意してある流れの通りだ。

 そこから地下室を見つけるのは、すでに存在を知っているショウがいる以上、必然なわけだが……


「で、翡翠の女神像にしたの?」


「名も無き女神像のまま、自分たちの島へ持って行きました」


「はい」


「はいじゃないが」


「ま、まあ、持ってったのはいいや。また翡翠の女神像にして死霊都市に置かれるとかの方がヤバそうだし」


 今のところ、死霊都市は紅緋・翡翠・蒼空の三女神が揃っている。

 翡翠の女神の出力が桁違いという点を除けば、プレイヤー・竜族・魔王国でバランスが取れてると言えなくもない。


「これからプレイヤーがメインになって死霊都市を活性化させるという意味では、紅緋の女神像になって置かれるのが一番でしたけどね」


「それはショウ君には無理でしょ。もう『翡翠の女神の使徒』になっちゃってるし」


 ショウ自身、ミオン以外、翡翠の女神以外がイメージできないと言っていたが、システム的な制約として、特定の女神の使徒になった場合に他の女神像は作れない。

 そうでなければ、全ての女神の使徒になって、メリットを複数獲得できてしまう可能性があるからだ。


「そんなわけで、あそこにあった名も無き女神像はしばらくは表に出てこないと思います」


「オッケー。まあ、それくらいなら全然……」


「で、次に古代遺跡、採掘施設ですね。一気に最上階まで行って、ポリモゴーレムを倒して、魔女ベルが管理者になりました」


「そ、マ?」


 目が点になっているミシャPに頷き、どういうルートでどう攻略したかを事細かに説明するGMチョコ。

 ミシャP的に、現時点でポリモゴーレムを倒すのはほぼ不可能だったはずなのだが……


「ウリシュクの族長、パーン君が魔銀(ミスリル)の鍬っていう、ゴーレム特攻武器を持ってる話はしましたよね?」


「おぅふ……。いや、待って、その手前にマギアイアンゴーレムが3体いたはずなんだけど?」


「だから、一気に最上階に行ったんですって。ショウ君は普通に逆走できるんですから」


「あーあー、聞こえなーい。っていうか、なんで連絡くれなかったの!?」


「サービスが停止するレベルのシステム障害でもないですし、ワールド監視AIもアラートレベルはインフォだったので」


 ミシャPもそう言われるとぐうの音も出ない。

 業務時間外(もちろん休暇中含む)の連絡は非常事態のみ。その場合も連絡に至った理由をあとから詳細に報告しないといけないのが六条グループ。

 状況の変化を通知するインフォ程度の問題で休暇中の社員を呼び出すと、あとで説明がとんでもなく面倒くさいことになる。


「うーん、確かに魔女ベルが採掘施設の管理者になったから何が、って話なのか……」


「一応、そういうことですね。ただ、ワールドクエストを開始していい条件が揃っちゃったってインフォでした」


「は? 次のワールドクエストに関係したっけ?」


 予定していた次のワールドクエストは、9月後半の連休に各国に忍び込んだ悪魔探しをさせる『悪魔が来たりて』という短めのものだ。

 遠く離れた南の島にある古代遺跡の管理者が決まったからといって、それと関係があるわけでもない。


「次じゃないんです。死霊都市が解放されてから、あそこの副制御室を再起動できるサイズの魔晶石が見つかっちゃったので、次の次のワールドクエスト『都市再生』が先に反応しちゃったんですよね」


「えええええ……」


 本来なら、各地にある古代遺跡の下層で、一時的に再起動できる予備の非常用魔晶石を発見したら始まるはずだった。

 それは次の『悪魔が来たりて』で得られる情報もあってこそなのだが……(ショウたち一部プレイヤーが何故か知っている件は無視するものとする)


「ちょっと整理させてね。『都市再生』は開始はしてないんだよね。いや、最終ゴーサインは私が出さないとだから、当然、開始はしてないはず」


「ええ、始まってませんよ。フォーラムのワールドクエストのスレタイが変になったぐらいで、それはうまく誤魔化せてます」


「おけ。じゃ、次の『悪魔が来たりて』を予定通りに始めても問題なし?」


「問題ないですね。ただ、その次の『都市再生』がどう転ぶかが……」


 GMチョコが懸念しているのは、魔女ベルが南の島の採掘施設の非常用魔晶石を持ってきて、それで副制御室を再起動してしまうパターン。

 スタートして即ゴールという可能性もあるわけで……


「うーん……、その場合って、プレイヤー側の勝利は確定なんだよね。その時は延長戦ってことで、他の副制御室のどっちかで決着にしようか。竜族と魔王国の争いの方が盛り上がりそうだし?」


「なるほど。魔女ベルと雷帝レオナが王国と竜族側、氷姫アンシアが共和国と魔王国側なので、いい感じの代理戦争になりそうですね」


「ま、荒れない程度でね」


 プレイヤー間の対立構造は盛り上がるコンテンツだが、同時に荒れがちになる。

 その辺りを十分注意しつつということになった。


「報告はそれで終わり?」


「いえ、そのまま下の階に降りて、魔導機密箱から大型魔導船関連の書類を手に入れました」


「はい」


「大型転送室では、転送先が大型魔導船造船所だということもバレました」


「はい」


「地下11階以降の侵入禁止ギミックは正常に動作して、アプデが入るまでは大アリの無限ポップで押し留められそうですが、虹銀(アイリス)鉱石の話はバレました」


「やめて! プロデューサーのライフはもうゼロよ!」


【更新履歴】

2/10 第466話 やっぱり我が家が一番? 〜 本話まで


おかげさまで、4巻制作決定しました!!

BOOK☆WALKER : https://bookwalker.jp/series/375270/

Amazon : https://www.amazon.co.jp/dp/B0BYK5SFV6


また、改めてですが、感想コメント、ありがとうございます。

返事はできてませんが、全て目を通し、励まされております。m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] パルワールド見たとき、〇〇モン以外にも何かに似てる気がしてたんだけど、この作品だわw
[一言] ここでさらに追い討ちが来るわけかナムさんプロデューサーさん
[良い点] ゲームの寿命考えると良くないんだろうけれど、世界観大事にして変な見えない壁とか絶対倒せない敵とか進行度で急に生える塔とか用意してないのがこの運営のいい所だよな…… その分ヒントなしに見つけ…
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