第463話 プレイ・オブ・カラー
「そろそろかな?」
「はぃ」
大型転送室にて、白竜姫様とお付きのエルさんを待っている。
アズールさんに連絡し、そこから白竜姫様にってなるから、やっぱりディレイができちゃうよな。
もう、エルさんにもギルド入ってもらった方がいいんだろうか……
「クルル〜♪」
「〜〜〜♪」
「もう、スウィーちゃんってば……」
俺がやらかしたブローチ、当然、ミオンにプレゼントして付けてもらったんだけど、ラズとスウィーがそれを「すごいすごい」とか「愛だね〜」ってニュアンスで褒めてくれてて……、ちょっと恥ずかしい。
ちなみに(仮)の名前はカッコ悪いので、ミオンと相談して【純真無垢のブローチ】という名前をつけた。オパールの石言葉の一つなんだとか。
「プレシャスオパールにはクリエイティブな力が宿っていると母に聞きました」
遊色を持つオパールはプレシャスオパールと呼ばれ、さまざまな色に変わるそれは創造力を引き出すパワーを持っているらしい。
芸術家や音楽家に人気の宝石らしく、ミオンにぴったりだなと。
「ぁ……」
「来たっぽいね」
部屋の奥にある、竜の都と繋がっている転移魔法陣が淡く光り、それが収まると2人の姿が現れた。
「おやつ〜♪」
「姫。まずは挨拶を」
「うん。こんにちは!」
ぺこっと頭を下げる白竜姫様と、隣で同じように頭を下げるエルさん。
「突然のお願いで申し訳ない」
「いえいえ。こちらこそ、ギルドの件でお世話になりっぱなしで」
握手をして、2人のパーティをアライアンスに加える。
そんな挨拶を交わしてる間に、白竜姫様はミオンと手を繋ぎ、その肩にいるスウィーと話してるっぽい。
「えっと、一度には行けそうにないんで、俺とルピたちが先に行きます」
「了解した」
というわけで、まずは俺たちが先に。
ちなみにパーンは今日は来ていない。チャガタケやサブマロについて、ギリー・ドゥーと相談するとのこと。
うちの子たちが働き者すぎる……
「よっと。はいはい、動いて動いて」
転移が終わったら、すぐに転移魔法陣上から移動。
白竜姫様とエルさんが来るのを待つ……って、早いな。
「えっと、大丈夫だとは思いますが、最初に来た時は扉の先にゴーレムがいたので」
「了解だ。何かあっても、白竜姫様は私が守るので、気にしないでくれ」
エルさん、普通に強そうだし、問題ないよな。
今も左手で白竜姫様を抱えてるけど、背中には槍を装備してるし。
「じゃ、ミオン」
「はぃ。加護を」
ミオンのキャラレベルも結構上がってるし、ブローチのおかげで神聖魔法も+2してるからか、全員分の加護がしっかりとかかる。
そして、それを得意気にしているスウィーは一体なんなのか……
「開けます」
警戒しつつ扉を開けると……いないよな。うん、知ってた。
あとは、
「ルピ、よろしく」
「ワフン」
これも無いとは思うんだけど、前に下の階へ行く途中で遭遇したでかいアリ、ブラックディガプアントが来てないかも確認を……
「ワフ」
うん、問題なし。気にしすぎだったかな。とはいえ、白竜姫様もいるからなあ。
転移エレベータの扉が開き、みんなで乗り込む。地上1階のボタンをポチっと押して、ほぼ次の瞬間に到着。
「うわっ!」
「あ、ごめん。驚かせちゃった?」
転移エレベータの扉が開くと、その前にアズールさん、ベル部長、セスが待機していた。アズールさんが急かしたっぽいのか、ベル部長もセスも苦笑いしてるし。
「アズール様。姫の要件が先です」
「あー、うん。それなんだけど……」
覚醒してない白竜姫様に古代遺跡の探索は退屈だろうし、二手に分かれるのはどうかという話。
「ぁ、それなら私とスウィーちゃんが」
ミオンとスウィーで白竜姫様とエルさんをアームラの林まで案内し、もてなしてくれるとのこと。で、その間、俺たちは古代遺跡の探索と。
「うーん、それがいいか。じゃあ、シャルも護衛についてくれる?」
「ニャ」
そんな話をしている隣でレダとロイが何やら相談していて、
「バウ」
「ん? レダも護衛についてくれるんだ。ありがとうな」
ロイは俺についてくることになったらしい。微妙に2人の力関係を見たような気がしなくもない……
まあ、今日の探索は最上階から下へだけど、すでに警備のゴーレムは停止してるし、激しい戦闘も起きないか。
「じゃ、ちょっといってくるよ」
「はぃ。いってらっしゃい」
ミオンにはアームラ(マンゴー)とアレケス(ココナッツ)ミルクのソルベを渡してあるし、そっちも大丈夫だよな……
………
……
…
そんなわけで、俺、アズールさん、ベル部長、セス、ルピ、ロイ、ラズで最上階までやってきた。
別にここに来なくても、古代遺跡内ならヒトミさんとは話せるんだけど、転移エレベータですぐだしってことで。
「ヒトミさん。状況を教えてくれるかしら?」
[はい。現在、制御できる範囲内での設備の不具合は見つかっておりません。ですが、非常用魔晶石に蓄えられているマナの残量が少ないため、補充することを推奨します]
「「「え?」」」
マナ残量が少ないって……あれ?
再起動したら、あとは自力でマナを回収して、自分だけでやっていけると思ってたんだけど。
「ふーむ。まずは聞いてみるのが良いのではないか?」
「そうね。えっと、ヒトミさん。非常用魔晶石のマナは再起動すると使わないと思ってたのだけれど、そういうことではないのかしら?」
[はい。本来は動力部によって施設維持に必要なマナを回収しますが、現在、その動力部との疎通が取れていないためです]
「あー……」
断絶した先に動力部があるってこと? だとすると、あのアリを倒すまでは手動でマナを補充しないとか。
「えっと、非常用魔晶石に100%マナを補充すると、どれくらいの間維持できるのかしら?」
[確認中……完了しました。最低限の稼働状態であれば、およそ30日の維持が可能です]
ヒトミさんがいう『最低限』ってどのレベルなんだよって話だけど、彼女(彼?)自身や転移エレベータ、警備ゴーレムの管理運用ぐらいまでを指すらしい。
保全状態とあんまり変わらないけど、警備ゴーレムが襲ってこないメリットがあるから、それで十分な気もする。
「それだと部屋にある設備とかは利用できない?」
[いいえ。各部屋にある非常用魔晶石を利用するか、設備そのものにマナを供給することで利用は可能です]
「ふむ。当面はそれで十分な気がするのう」
セスの言葉にベル部長も頷いているし、アズールさんも管理者がベル部長でいてくれるなら問題なしって立場。
なので、俺が気になってるのは、
「もし、なんらかの理由で非常用魔晶石のマナが空っぽになると、また保全状態に戻って、管理者も初期化されちゃうのか……」
「それは僕としては困るなあ」
「月に一度であれば、なんらか理由をつけて死霊都市に来てもおかしくなかろう」
「そうね。そこについては何かしら理由を考えて、確実に維持できるようにします」